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砂漠を往く

「さて、これからの目的についてだけど…」

 三人は改めて確認を取る。ルーチャが主として話している。

「ひとまず現状の目的はゼードの大森林を目指すってことでいいんだよね」
「ああ」
「そうだな」
「で、もし予想だにせず異世界に行った場合は…」

 傍から見れば突拍子の無い話だが、以前の世界での出来事がある。異世界への移動の原理を理解し、制御できているとは到底言えない現状ではそうした際の方向性も定めておくべきだ。ギリーが答える。

「その世界で問題が起きていたら出来る限りで解決する。問題が片付いたり、そもそもなかった場合は異世界へのことについて考えて対策を打ってみる、だな」

 全員が頷く。続いて現状分かっていることの整理だ。ギリーがレストリーに聞く。

「レストリーがこの世界について知ってることを教えてくれるか?」
「悪い。正直外の状況ってのは俺も分からない。見てきたのは地図で内情まで把握しているわけじゃない、行って確認するしかないってのが本音だ」

 レストリー自身もあまり外の世界を知っているわけではない。
あの村において外の状況を確認しようとするのであれば、レストリーの持っていた本に記載がないのなら村人に尋ねるぐらいしか方法がない。レストリーに村人が素直に教えてくれるような状態ではなかったし、男二人で洞窟に入っていた際、ルーチャがしれっと村人に情報を聞きに行っていたらしいが、その際にも大した収穫は得られなかったそうだ。

「そうか。まあ、行ってみて確かめよう。しかし、随分なことをしたよな…」

 レストリーを見ながら、ギリーは言った。

「ライガストによって伸長した根があの村の土中に張り巡らされてるのであれば、それが枯れることで地盤が緩む。村ではいつか地盤沈下が起こるだろうな」
「どのくらいの規模で起こるのかは分からない。家が傾くだけで済むかもしれないし、そうじゃないかもしれない。奴らの日ごろの行い次第だな」

けらけらと笑う少年。なかなかに恐ろしい仕返しをするものだ。

 そうして食事を終えた一行は眠ることとなった。村とは違う、周囲に部屋がない、人の住む気配のない場所でありながらもレストリーはすんなりと眠りについていた。

 

 翌日、目が覚めると…
やや薄汚れた布が視界に入る。目をこすりながら入口の布をめくるとまぶしい光が差し込む。目の前には砂、砂、砂…
砂漠のど真ん中。昨日休息を取った場所だ。着こんでいた衣服を脱ぎ、日中用に枚数を調節する。夜と昼では気温が異なるため、衣服の着こむ枚数によって寒暖差に対応している。
外で体を伸ばしていると、さっきいたテントからレストリーが出てくる。隣に立っているひときわ小さいのがルーチャのものであるはずだが、既に片付けられていた。すでに起きていた少女はレストリーの持ってきていた本に目を通しているのだった。

「おはよう。食べるかい?」
「いや。大丈夫だ」
「なるべく節約していくぞ」

魔法を使って水を出すことは出来るが、食べ物を出すようなことは出来ない。そのため、食料は村からとってきた魚の内臓を抜いて処理したものを袋に入れて持ってきている。持って二日から四日程度しか持たないため、そこからは水だけでしのいでいく形となる。少しでも生き延びていける可能性を考慮し、食料は考えて食べていかなければならない。
食料、水を入れる石筒はレストリーが持っている。これはもしギリーとルーチャだけが転移してしまった場合に備えてのことだ。

また、道中でも休憩の合間に魔法を使う練習をしたりしているが、依然としてレストリーが魔法を使えるようにはならない。火の魔法も水の魔法も使うことが出来ず、二人は何度も首をかしげていた。ルーチャもギリーも使えたため、人間でも使えるものだと思っていたが、そういうわけではないようだ。
 
 このようなことになるとは思ってもみなかったため、バーディやマドリーにもっと魔法の話について聞いておけばよかったと思う二人だった。

 二日目も難なく歩いていくことが出来た。皆元気にしており、レストリーの学んでいた知識の話や、ギリー・ルーチャの以前いた異世界の話をしながらと余裕のある道中だった。日が沈み、そこそこに時間がたってから昨日と同じく準備をして寝る。

三人の旅路は長くも期待に満ちたものであった。

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