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食事

ぐるるるる
少女のお腹から大きな音が鳴った。

「えへへ」

ルーチャが申し訳なさそうに頭をかく。

「ご飯にしましょうか!」

マドリーが手をパンとたたき、皆は再び家へ入っていった。



皆が家に入り、テーブルにつく。ルーチャが手伝おうとするが、

「いいのよ~お客さんなんだから」
と返される。
料理が作られている間、料理を待つ3人は話をしていた。
バーディがふと聞いた。
 
「ここの植物は見たことないって言ってたけど、二人のいたところってどんな植物があったんですか?」
 「うーん、エガバーの葉だったり、カメロンの実って聞いたことあるか?」
 「いや、ないですね。どんなものなんですか?」
 「そうだな。エガバーの葉は薄緑色で何枚もの葉が層状になっててな。人の顔ぐらいの大きさがあるから、一つ収穫するだけでも十分な量あるからよく育てられてたんだ。オレの島では野菜を嫌う子供が多いんだが、あれだけはどの子もみんなむしゃむしゃ食ってたよ。」
「カメロンの実は知ってるよ!」
「ああ、ルーチャはよく食べてたもんな」
「失礼だよ!女性に対して大喰らいみたいに言って…」
「でも島に生えてた実、結構減ってていつも食べてるやつらが困ってたぞ」
「ぼ、ボクじゃない!きっと島の誰かが…」
「そういうことにしとこうか。だけどな」
ギリーはニヤリと笑う。ルーチャはそれを見てたじろいだ。
「な、なんだい?!あれはおいしいからみんなつまみ食いの一つや二つ…」
「癖が強いってことで食うやつは指で数えられるぐらいしかいないぞ」
「ウッ!!」
「はははは」
そうして3人は話に花を咲かせていたのだった。

「出来たわよ~」
料理が運ばれてくる。さっき見た野菜たちが様々な姿に変わって姿を現す。さっき見ていた拳大ほどのテホの実は4つ切りにされ赤々としたその実は宝石のよう。橙色のナオザの根は輪切りにされたものや千切りにされたものが見られ、サラダを彩っていた。
マドリーは食器盆にサラダが盛り付けられた小さな皿やパンの置いた皿を置き、部屋を出ていった。

「あれって?」
「父さんの分です」

階段を上がる、トン、トンという音が聞こえる。
ルーチャはバーディに尋ねた。

「父さん?」
「体が弱くて、ずっと寝たきりなんです」
「そっか…元気になるといいね」

 バーディは静かに笑った。

マドリーが2階から降り、食卓に全員が揃う。その日は賑やかな食卓となった。

食事が終わり、皆が眠気に襲われる。寝床につこうとする親子に、ギリーはもう少し外にいたいと申し出た。ルーチャもついていく。ここでは景色が変わらないため、皆各々好きな時間に眠るようだ。
外に出た二人は中央の噴水や花壇ではなく、隅の何も置かれていない空き地に歩いていく。二人は芝生に腰を下ろし、寝転がった。
膨れた腹を叩きながら、ルーチャが言った。

「ご飯、美味しかったね~」
「ああ、本当に。随分と食べてたな」
「おいしいものをいっぱい食べられるのは極上の幸せだからね」
「それは間違いないな」

ルーチャは幸せを噛みしめるように強く目を瞑る。



ギリーは目の前に広がる灰色の景色を見ながら、口を開く。

「ルーチャ」
「ん?」
「ここはどこだと思う?」
「うーん、分からないな」
「そうか」
「でもね」

彼女は続ける。

「『異世界』なんじゃないかな、ってボクは思ってる」
「異世界?」
「そう。あの島とは全くの別世界」
「そんなことはあり得るのか?!」

ギリーは勢いよく上体を起こし、問う。



「きっと。だって、ボクがこの体験をするのは、3回目だ」
 青年は驚き、二人の間には沈黙が走った。

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