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3-4

「クラブ活動は今日はここまで。だれか残ってやっていきたいやつはいるか?」

 午後のちょうどおやつ時。
汗をぐっしょりかきながら集合したクラブメンバーたちは、ネアの言葉に首を振る。

「ならみんなで片付けをして解散。メグは少し残ってくれ」

 ネアの号令に、みんなそれぞれ、室内に散らばっていく。
その場には私とネアだけが残される。

「クラブの一日を今日は体験してもらったわけだが。どうだった?」
「すごく楽しかった。盗賊(シーフ)って、あんなに軽く動けるんだね」
「……そうか」

 ふ、と微笑まれながら頭を撫でられる。
少しだけ乱暴な手つきは温かく、姉の友人と知ってるからか、不思議と嫌な感じはしなかった。

「それで、入会はどうする?」

 ネアが躊躇いがちに聞いてくる。
私はもちろん。と頷いて。

「入会したいんだけど、入会費とかある?」

 ネアは嬉しそうに目を輝かせ、彼のカバンから一枚の紙を取り出した。

「入会規約が書かれているものだ。目を通してくれ」
「入会費年会費特になし、資格は盗賊(シーフ)であること、盗賊協会に属する探索者であることだけだね」
「ああ。盗賊協会ならこの建物に併設されているから、行って登録してくるといい。探索者証明書は持っているか?」
「持ってきてるよ。ついこの間届いたんだ」

 私は財布からそのカードを出す。
私の名前とジョブが書かれたプラスチック製のカードは、銀行のキャッシュカードとも似ている。

「協会に登録すると、その下にある空白に、所属協会の名前も印字されるからな」
「そういう仕組みになっているんだ。……あれ? 私、盗賊だから当たり前に盗賊協会だって思ってたけど、後から印字されるってことは、他の協会にも属せるってことなの?」

 ネアは言い辛そうに視線を彷徨わせる。
言い辛い、というよりも、どこから話していいのか困っている顔をしている。

「基本、盗賊は盗賊協会、それとそこから派生した協会にのみ属せるんだが、例外はあってな。ジョブは盗賊なのに、自身が覚えている技は魔法使いのものだった、とか」
「え?! そういうことってあるの?」
「稀にあるらしい。そういう場合は、入会試験を特別枠で設けてもらい、それに合格すれば、例えばジョブが盗賊でも魔法使い協会に所属することが可能になるって聞く」

 それから、協会には年会費を払えるのなら、複数登録することもできるのだとか。
盗賊が派生した協会なども複数存在するため、それに掛け持ちで所属している人もいるそうだ。

「あいつ、シシやミコトも複数所属しているぞ。シシはここの他に忍者協会に、ミコトはここと、忍者協会と、罠師協会に属している」
「忙しそう……」
「とはいえ、複数所属すれば受けられる依頼の数も増えていくから、年会費さえ払えるのなら複数所属は奨励されている」

 それだけ協会に所属する自由が認められているのなら、後付け印字も納得できる。
私は、そういえば、とネアに問う。

「私、まだ高校生だからダンジョンに入るのに、先輩探索者の引率が必要なの。ネア、どうやって募集すればいいと思う?」
「高校生……?」

 ネアは首を傾げ、思い出したように「そういえば、そう言っていたな」なんて呟く。

「シシさんが?」
「あ、ああ。そう、シシが。入会希望者が高校生だって言ってた」
「そうなんだ」

 個人情報駄々洩れ、なんて冗談交じりに言えば、クラブの中だけだ、なんて返って来る。

「引率者の募集だったよな?」
「そう」
「それなら……。メグがもしよければ」

 ネアからの提案に、私は目を見開く。

「いいの?」
「ああ、これも縁だ。構わない」

 構わないと首を振る彼が出した提案は非常に私にとってはありがたい。
けれど、ネアの負担も考えてしまい、素直に喜ぶことができない。

「ネアが先輩探索者として引率してくれるのは嬉しいけど、ネアだって行きたいところあるでしょ? 私、行けるダンジョンも階層も、制限あるんだよ?」
「もちろん、俺が行きたいところがあるときは、申し訳ないが引率はできない。ただ、それ以外だったら引率はできる。気にしないでくれ」

 ネアが引率者。
申し訳ないという気持ちが残るが、ありがたくその提案を受けた。

「よろしくお願いします」
「ああ。また、追って連絡する」

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