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飯盛山(福島・会津若松市)

 
挿絵



2026年2月22日 朝10時になったと同時に目覚ましのアラームで起床した侑斗は慌しく服に着替えチェックアウトをするための準備を終えたところで、待ち合わせ場所に指定されたホテルの玄関で向かうと既に侑斗以外のメンバーが待っていた状態で侑斗は「すみません。僕だけが遅れてしまいました。」と謝罪の言葉を伝えてから、綾羽が「昨日は23時までに終わらせる予定だったが、25時を回ってしまったからね。内の倉ダム以外にも心霊検証の必要があるなというのは実際に現地に行って見てわかったことだから、あとは編集の際にどんな映像が撮れているかどうかだよね。でも御祓いをしても良かったんじゃないかってのもあるんだけど、それはどうかな。」と切り出すと、侑斗は「御祓いは出来ました。でも緊急性を要すほどのものではないと判断しました。理由としては、我々が見る限りでは危険な御霊ではないという事です。音を出すことにより我々の反応を示すと思われるかもしれませんが、”これ以上触れてほしくない、関与してほしくない”というサインなんです。得に自殺者の御霊に至っては、今でこそ自殺防止のためにあちこちで防犯カメラが見受けられましたが、逆にこういった場所で自死を選ぶ人ほど、言葉には言い尽くしがたいほどの嫌なことがあって相談できるような捌け口もなく衝動的にこの場所で身投げをしたのだろうと推測されます。だから死んだ後でも、助けを求めるのではなく、そっとしてほしいということを何より求めているんです。我々は御霊達の心情を察して、心の傷が癒えることを誰よりも願うしかありません。」と答えると、飯塚は「果たして本当にそれでいいのか。危険ではないと分かっていても除霊をしても良かったんじゃないのか?自然に成仏してくれるのが理想的だって言っちゃえば、最初に行った七眼堂吊橋でもそうだったけど、見ている人からしたら”どうして”と思うことは幾らでもあったのに、そんなことを言ってしまえば除霊が出来ない場所が増えてしまうことになる。」と指摘すると、侑斗に代わり藤村が「確かに、除霊をしなければいけないのはごもっともな意見ですが、心霊スポットとされるような場所ほど、放っておいたほうが無難な場所は幾らでもあります。それはどうしてか、我々は御経や言霊の力を使うなどを駆使して説得を行いながら除霊を行うのですが、そのときに我々の言葉を聞かされた御霊にとっては”必ずやってくれる”と思い込み、我々が皆さんの前で祓い切りましたといっても、我々に対して憑いてくる傾向が強いためです。そのときに”約束が違う”となると怒りを買うことになる、それが良く言われる”祟り返し”というものですが、御霊というのは生きている人間と同様で非常に身勝手な考えで、自分の良いような解釈しか持たないわけなんですよ。生きている我々だからこそお願いしたい欲求が強すぎるからが理由でもあるんですけど、御霊達の訴えの一つ一つを聞いてしまえばとんでもない膨大な御霊達と我々は日頃から説得を繰り返し成仏をさせなければいけない。我々も人間ですしやることには限度があります。我々は全ての御霊達と接触することは出来ても全ての御霊達の心の痛みにまで寄り添うことは神にしか出来ないことです。」と話すと、政井は「ヒーリング効果を用いて除霊を行うことも出来ますが、それも必ず心に痛みを抱える御霊達に効果が絶大とは言い切れません。抵抗を示す可能性もありやはり今の我々に出来ることは時間の流れと共に御霊達の心が和らいでくれるのを心から祈り続けるしかないんです。それは自殺の名所じゃなくとも、戦場跡であっても心霊廃墟だろうがどこでも一緒です。」と返事をすると、綾羽は頷きながら「わかった。そうゆっくりしているわけにもいかないので、最初の目的地の飯森山へと向かうことにしよう。」と切り出すと、一同はフロントの前に停車した車に乗り出すと、会津若松市へと向けて11時過ぎに出発した。

車で古森と鳥井が購入してきたコンビニのパンを片手に侑斗が「飯森山、これって何が怖いのか。神社もあってしっかりと祀られているし、心霊というよりパワースポット的な場所なんじゃないのか?まあ白虎隊って調べたらあるけど、そもそも白虎隊って何?何のために結成されたの?」とケロッとした表情で切り出すと、鳥井が呆れた口調で「饗庭さん、日本史が疎いのは十分わかりましたけど、これから行く飯森山は白虎隊で有名なところなんですよ!一応予定としては嚴島神社から白虎隊士十九士の墓から、戸ノ口堰洞穴、戸ノ口堰水神社と行った後に最後に白虎隊自刃の地で検証し終えたら16時頃には収録を終える予定でしたよね。綾羽さん?」と間違ったことを説明していないか確認のために綾羽に切り出すと、綾羽は「そうだよ。そのつもりなんだけどね。でも誰かひとり侑斗君に白虎隊について説明してやったほうが良い。サーカスのトラのチームだと思われたくないからね。」とブフッと笑いながら話すと、侑斗はぎゃふんとした口調で「何ですか!?馬鹿にしないでくださいよ!僕だって答えられますからね!白虎隊と言えば、白い虎柄の着物を着た武士の人たち!違いますか!?」と自信たっぷりに答えると、政井は「そんな大阪のおばちゃんが喜びそうな衣装を着た人たちじゃないよ。」と苦笑いしながら説明するのだった。

★白虎隊(びゃっこたい)とは★
戊辰(ぼしん)戦争期における会津藩の少年正規軍のことを指す。1868年(慶応4年)正月の鳥羽・伏見の戦いに敗れた旧京都守護職の会津藩主松平容保は維新政府への抗戦を主張し、徳川慶喜が恭順の態度を示すも、帰藩して軍事力の強化を行った。同年の3月には軍政を洋式に改め、部隊を年齢別に編成した。16歳~17歳の少年で結成されたのが白虎隊、18歳~35歳を朱雀隊、36歳~49歳を青龍隊、50歳以上を玄武隊とした。白虎隊は身分によって上級藩士の士中、中級藩士の寄合、下級藩士の足軽に分かれ、計6中隊とし、フランス式訓練を施された。兵員数は300余名だったが、主力は朱雀、青龍の2部隊で白虎と玄武は予備軍であったが、新政府軍の進入で会津藩が危機に陥ったため、白虎隊も越後口戦争や戸ノ口原の戦に参戦したが、戸ノ口原の戦に敗れそのうちの20名が飯盛山まで後退したが、城の方角に火炎が上がるのを望見して全員自刃したが、そのうち一名は蘇生した。

政井の説明を一通り聞いた侑斗は苦笑いの表情を浮かべながら「なるほど。全くもって知らなかった。でも鳥井さんの話で最後に自刃の地に行くって仰っていたから、きっとそこが出るとされているのかな?」と思ったことを話すと、藤村は「戸ノ口堰洞穴に行くって話をしていただろ?戸ノ口堰洞穴は猪苗代湖の水を会津地方に引くために掘られた洞窟で、猪苗代湖畔の戸ノ口原の戦に敗れた白虎隊士20名が鶴ヶ城を目指す為長さ150mの洞窟を潜って進むことにした。鶴ヶ城の安否を確認したい、その一心で冷たい水が容赦なく流れる洞窟の中を身を屈め足を取られながらも飯盛山の中腹にやっと辿り着くと、城下は黒煙に包まれていた。だからこそ今でも白虎隊の無念が残留思念となって残っているという話があるんだ。」と説明を行うと、侑斗は「何だろう。あまりよく分かっていないからいまいちピンとこないんだけど、お国のためにって若い少年兵で構成されて出撃させた神風特攻隊にも似ているような気がするけどそんなもんかな?」と質問すると、藤村は「まあそうだね。未来ある若い命がこのような形で失うのは哀しいほか言いようがない。だから”出てくる”と言われる怪談話の所以の一つになっているのかもしれないね。」といって答えると、政井は「戦争は人が人でなくなる、人が正常心でいられなくなってしまう、だからしてはいけない。昔もそして平和だと思っていた今も、政治家の考え方が間違った方向に進めば進むほど誤った道に進んでしまう。残念ながら、窮地に追い込まれなければ人は学習しないってのは人である以上、学ばないものなのね。」と言い切ると、侑斗と藤村は黙って政井の話を聞いてその後何も言う言葉が出てこなかった。

そして12時40分頃に市営飯盛山観光客専用駐車場に駐車をすると、徒歩で飯盛山の入り口を目指して移動することにした。最初の目的地である嚴島神社に到着すると、福島での心霊ロケの収録を祈願して参拝をしたところで、白虎隊士十九士の墓を目指し山頂へと続く階段を上り始めた。

藤村が「階段の段数が183段もあるのか。これだけでもいい運動になるな。スロープコンベアもあるけど、それは一切使わずに俺達は階段を上るってことだな。」と項垂れるように話すと、綾羽は「仕方ないだろ。他の観光客もいるんだし、ここは辛抱して階段を上るしかない。」と語ると、一同は合間合間に休憩を挟みながら階段を登り切り山頂に到着すると目前に現れた白虎隊士十九士の墓を前に政井が「やっとたどり着いたね。」と話すと、白虎隊士十九士の墓の近くにまでやってくる。そこで改めて綾羽から飯盛山で伝わる心霊現象について説明がされた。

「飯盛山で伝わる心霊現象としては、誰かの視線を感じる、御経のような声が聞こえるのほかは、無数の足音がする、血が付いた顔で充血した目で手の平ではなく手の甲で拍手をする、先程語ったことに遭遇すると帰りに事故に遇う、また猪苗代湖畔から生き残った20名が鶴ヶ城の様子を確認すべく通ったとされる戸ノ口堰洞穴や慰霊碑の前では心霊写真が撮れるらしい。遭遇したからって帰り道に事故に遇うかどうかというのはあくまでも都市伝説の噂話に過ぎないので信憑性は低いと思うが、士中二番隊が戸ノ口原の戦いで敗れた際に負傷者を抱えながら戸ノ口堰洞穴を使って飯盛山へと逃れた際に、鶴ヶ城の落城と思い込んだ白虎隊は自分達のせいでという自責の念にも駆られたのかもしれない、鶴ヶ城周辺の武家屋敷が燃えているのを見ただけで”落城”と錯覚を起こして自刃を決意したのだからね。白虎隊の中には志願して生年月日を改めて15歳で出陣した者もいるし、幼少組としては13歳の少年も参加していたという。時代が変わってもなお、自分たちの過ちのために城が落城したと思い込み今もなお悔やんでも悔やみきれない心情を抱えていてもおかしくない。」

綾羽の説明を聞いた侑斗、藤村、政井の三人が改めて墓前の前で購入してきた菊の花をお供えすると同時にライターで線香に火をつけると改めてメンバー全員が両手を合わせ拝んだところで、本題の白虎隊の少年兵の御霊は果たして今もなおこの世を彷徨っているのかどうかを確かめるために、その場で霊視検証を行い始めた。

すると墓前の背後のほうで人影のようなものがササっと動いたことに侑斗が「墓の後ろで何かが動いた!動物の可能性もあるかもしれないから確認してくる!」と言って気配を感じた墓の裏側へと近付いてみるが、タヌキやイタチのような動物などはいなかった。侑斗は藤村に近づくと「先程の走り去るような影は、一瞬過ぎて追いついていけなかったがひょっとすると白虎隊の御霊もかもしれない。」と報告すると、藤村は「俺もさっきの走り去る影は見た。二本足で駆け抜けているようにも見えたからあれは動物ではない。白虎隊の少年兵の御霊で間違いないが、一瞬過ぎてどこへ行ってしまったのか。西から東、方角から見ても、ひょっとすると戸ノ口堰洞穴から出てきてこの山頂で鶴ヶ城の様子を確認するために訪れたがよく見えなかった為に自刃の地まで足を運びそこで改めて惨状を目の当たりにし自害を決意したのかもしれない。」と気が付き始めると、侑斗はハッとした表情で「その可能性が高い!影の正体が分かったから、戸ノ口堰洞穴へと向かい心霊検証を行おう。」と意気揚々に切り出すと、一同は白虎隊士十九士の墓を後にすることにした。

183段の階段を下りて、戸ノ口堰洞穴まで辿り着いた際に、政井が「あの小さな穴から水の流れも激しかっただろうに負傷者も抱えた状態で10代の少年達がここまで辿り着いたというのも色々と考えさせられてしまうところがある。」と語った後に、侑斗と藤村に対して「あの木々の陰から少年がちらっと見ていたね。白虎隊の少年兵にしては見た感じ16歳にも達していないと思う。見た感じ中学生ぐらいだね。」と話すと、政井の話を聞いた侑斗は「そうだな。あの見た目だとまだ声変わりもしていなさそうな、13歳のあどけない少年だね。大人の俺達を見て興味津々になって様子を見ているあたりからも自分たちの死を理解していないというよりもやはり懺悔の念というのが強いからかこうして俺達が参拝に来てくれていることに対して申し訳ない思いがあるのかもしれない。それが彼らの心情ならば、自刃の地でより正確な答えと出くわすことになるかもしれないね。」と話した後に、気配を感じた方向へと念のために写真撮影をし終えてから、戸ノ口堰水神社で御参りを済ませ最終目的地の白虎隊自刃の地へと移動することにした。

一方黙りつつ霊視検証を行う藤村に対し侑斗は「藤村さん、さっきからどうした?まさか取り憑かれたとでも言わないよね?」と切り出すと、藤村は「何言っているんだよ。仮にもし自刃の地で白虎隊の少年兵の霊達と遭遇した際に、侑斗はどうやって対峙しようと思っているんだ?」と切り出すと侑斗は思わず「え?それが悩み?いや俺達せめてここなら除霊をしてあげたほうが絶対いいと思う。ちゃんと正しい情報を白虎隊の少年兵たちに伝えるべきだ。」と話すと、藤村は「いや。改めて真実を伝えなければいけない気持ちも芽生えてはきたんだけど、果たして今もなお故郷が攻め落とされたと思い込み懺悔の気持ちで自刃した白虎隊に、いや~燃えていたのは鶴ヶ城ではなく武家屋敷だよ!”なんて言っても、他の少年兵たちがどう反応するか。”いやあれは鶴ヶ城が燃え上がっていたに違いない!”なんて誰かひとりがそのことを指摘すると他の少年兵の御霊達も同調するようにして、自分たちの罪深さを吐露するのかもしれない。果たして霊能者としてどこまで踏み入れるべきなのか。真実を伝えることは大事だが、彼らが受けた心の傷が癒える程のものではないかもしれない。」と話すと、政井は「一か八か、今もこの世を彷徨い続けている彼らに真実を伝えたい。わたしたちの伝えた内容に戸惑いを隠せられないのは致し方がない。白虎隊の少年兵たちを統率する大人が一人でもいたらまた結果は違っていた。だからこそ伝える必要がある。安心して成仏をして貰わないと、彼らが抱える心の闇は晴れない。侑斗君だって藤村君だって、このまま彼らが真相を知らずしてずっと敗戦の責任を引きずったまま今も彷徨い続けているのを見ていたら、自分が10代のころに同じようなことを体験していたらどうなっていたか?少しでも抱えている悩みを解消してあげるのがわたしたちの仕事じゃないかな。たとえ、わたしたちが必死になって説得を行っても、自責の念に駆られてしまうようならそれはわたしたち霊能者として出来る限界でもあるけど、でもやってみないとわからないことだってある。やってみよう。」と強い口調で語ると、侑斗は政井の言葉に理解を示したのか「政井さんの言っている通りだ。いつまでも飯盛山を”心霊スポット”であるという看板を外してあげたい。少しでも俺達の除霊で昇天するためのお手伝いをしてあげたい。ダメもとでも、彼らが理解しててくれることを信じて、説得をしてみよう。なあ、そうだろ藤村。俺は政井と一緒に白虎隊の少年兵の御霊達に真実を伝え、少しでも今の今まで彼らが抱え続けている心の闇と対峙したい。安心して昇天するためのお手伝いがしたい。」と同調するように話すと、藤村は「わかった。俺も霊能者として来ている以上、今の現状を見過ごすわけにはいかない。出来る限り説得を行い、彼らの心の痛みに寄り添えることが出来るかどうか。やってみよう。」と答え、生き残った白虎隊の一員である飯沼貞雄「貞吉」墓所の前(自刃をしようと唯一喉を突いた飯沼貞吉のみが一命を取り留めた。)で御参りを済ませてから、自刃の地にやっとの思いで到着した。

白虎隊の少年兵をモチーフにしたであろう、鶴ヶ城を眺めている様子を侑斗が真似をしようと同じようなポーズを取ったところ、「あの方角に鶴ヶ城、あの都会の真ん中で鬱蒼とした木々が生い茂っているところかな。」と気付き始めると、「当時はどんな思いでここから眺める景色を見ていたのだろうか。たとえ燃え上がっているのが城じゃなくて武家屋敷だと分かっていたとしてもこの距離からだと、きっと当時は白そのものが燃え上がっているとも、敗戦したショックを引きずりながら故郷に対し申し訳ないという思いで帰ってきた彼らにとってこの光景は残酷そのものだったのかもしれない。若い彼らにとっては言葉には言い尽くしがたい地獄絵図だったのだろう。」と自分なりの見解を語った後、藤村が政井、侑斗を呼び出し、「あの階段の木のところを見てほしい。白虎隊の少年兵の御霊かもしれない。俺達の気配を感じてやって来てくれたのかもしれない。接触してみよう。」と切り出すと三人は藤村が見た木の下に佇む少年兵の御霊の近くにまで駆け寄ると、まず最初に政井が少年兵の御霊に近づくと「わたしたちは霊能者。悩めるあなたの心の氷を溶かしに来た。あなたが最後に見たあの光景は鶴ヶ城が燃え上がっているのではなく、城下の武家屋敷が燃え上がっていた。だから”落城”をしたわけではない。それに敗戦の責任は若いあなたたちのせいではない。だからどうか安心して心休める場所で休んでほしい。」と切り出すと、それを聞いた少年兵の御霊は政井が何を言っているのかに理解を示せずただただ戸惑いの表情を見せるばかりだった。政井が次に何を話そうかと悩み始めたときにその様子を見た藤村が「政井の話す内容に理解をしていないようだ。落城をしているしていないは別だろう。もっと彼らの心の痛みに対して寄り添えることを言わないといけない。」と政井にアドバイスをすると、藤村が変わって説得に乗り出した。

「こうやって僕達の前に現れたあなた以外にも少年兵はいますよね。僕には見えているんですよ。あなたのほかに木々の後ろから2名ほどの少年兵らしき方と、そして僕の背後にある高台の慰霊碑の付近に3名の少年兵を確認することが出来た。あなたたちは参戦した戸ノ口原の戦いで敗戦した責任にかられ、生き残ったとしてもそのうちに待ち受ける仕打ちが怖かった。それならいっそのごと、敗戦の責任を負って自刃したほうが良いと決断に至ったのだろう。鶴ヶ城が燃え上がっていたから落城は自分たちの責任だと自責の念に駆られた末にというわけではなかった。それが答えだったんですね。たとえ生き残ったとしてもこれから先に待ち受ける試練を考えたら、自分たちの犯した過ちの大きさにただただ負けた責任をより痛感させられ、燃え上がっている光景だけを見て、より堪え切れない感情になってしまったのだろう。あなたたちは今もそんな思いでこの世を彷徨っているのなら、我々はあなたたちが天国に行けるようにお手伝いをしてあげたい。敗戦の責任はあなたたちだけじゃない。だからどうか追い詰めないで、最後まで諦めず戦って生きてここに帰ってこれただけでも誇らしく思ってほしい。あなたたちが犯したと思っている罪は決して過ちではない。」

藤村が優しい口調で政井の呼びかけに対して何事かと集まりだした少年兵の御霊達に語り掛けると、続けて侑斗が自分なりの思いを語ることにした。

「会津藩の看板を背負って戦った以上、最期まで勝つことを諦めずに勝つことを目標にしたかった無念の思いはとても理解が出来ます。しかしもうあなたたちはもう何もすることはありません。一生懸命身を尽くして戦ったあなたたちは、最後まで鶴ヶ城のことを心配になって戻ってきてくれた。負けたと分かって、飯盛山まで戻ってくるのも本当は辛かった筈だろう、それなのにあなたたちは意を覚悟して鶴ヶ城の安否のことだけを考えて帰ることを決断した。僕はあなたたちの決断もそして飯盛山まで戻って来れたことも、あんな狭い水流の激しい狭い洞窟の中を必死になって戻ってきてくれたのだと思うと、僕は改めて君達がしたことは素晴らしいの他言いようがない。決して恥ずかしいとか、会津の人たちに申し訳ないことをしたとか、敗戦の自責の念にいつまでも駆られないで欲しい。それだけが僕達の願いです。」

藤村と侑斗の問いかけに、現れた白虎隊の少年兵達は戸惑いの表情を見せながらも、訴えた内容が伝わったのかスッとその場を消え去るのだった。

その様子を見届けた政井は天を見上げると、「天国であなたたちの到着を心待ちにしている人達が大勢待っている!どうか恥じないで、堂々と自信をもって旅立ってほしい!」と大きな声をかけると、侑斗は「昇天してくれたらと思う。でも今思うのが白虎隊の少年兵が自刃をした様子も、青森の八甲田山の第五歩兵聯隊も共通しているところがある。これは何をしてもループになりそうな予感がする。自刃の地で透視を行った、燃え上がっている様子を見て涙にくれ”自分たちのせいだ”と思い込み会津藩の一員として、又一人の侍として責任を取らなければいけない一心で自害をしてしまったのだと思うと、八甲田山で遭難しながらもそれでも救助を求めて前進し続けた第五聯隊の御霊達も、結局は正常な考えを保つことが出来ぬ状態でこの世を旅立った。大切に祀られていたとしても、彼らの負った心の傷のケアをすることが出来るのは俺達が御参りをした、唯一の生存者である飯沼貞吉(貞雄)の御霊しかいない。生前に思い入れのあるこの地を自分の墓として選んだのも、仲間の一員であるという自覚があったからかもしれない。」と話すと、隣で聞いた藤村は「神でも仏でもなく、まさかの飯沼貞吉の御霊が仲間の心の傷に寄り添い癒してくれるというのか。それは違うと思うけどな。」と馬鹿にするような口調で言い返すと、侑斗は「八甲田山の後藤伍長の像で見た、心霊スポットの検索サイトには伍長の像の表情が変わるとか果たして本当にそうなのか、後藤伍長の像とは二度拝見したことがあるが、後藤伍長の魂はあそこにしっかりといらっしゃる。銅像の霊視を行った際に後藤伍長の御霊があの地に戻ってきていることが分かった。そしれ伍長の御霊はこう俺に伝えてくれた。”今もここに残る歩兵第五聯隊の御霊達の説得をしている。”とね。俺や藤村さんには経験したことがないから分からないことだが、人間次から次へと一緒にいた仲間達が命尽きる中、自分自身も生きるか死ぬか瀬戸際になって救助されたときに”俺だけが生き残り申し訳ない”という気持ちでいっぱいになると思う。飯沼貞吉も、後藤伍長も、心情は同じだ。今もいらっしゃるかもしれないと思って飯沼貞吉の墓前の前でも確認のために霊視を行ったが、心残りがあるのか今も現れた観光客に対して見えぬようにひっそりと気配を隠していたのが印象的だった。でもあれはきっと表向きの顔で、本当は呼び掛けているんだ。”敗戦は決して恥ずかしい事ではない、俺と一緒にこの世への未練を断ち切り天国に旅立たないか。”ってね。決して死んだ場所が違ったとしても、生き残った彼らも受けた心の傷は同じだからね。そりゃ勿論神や仏は死者の心の痛みに寄り添い煩悩を払拭させる力はあったとしても、それだけで死ぬ間際に味わったことは決して消え去ることはできないと思う。」と答えると、藤村はそれを聞くと頷きながら「そうかもしれない。ただ今の俺達に出来ることは、どうか安らかに眠って欲しいと念じ続けることしか出来ない。」と語ると、政井は「命あるわたしたちに出来ることにはそれしかない。昇天されることを祈り願い続ける。」と話し終えると三人のやり取りをじっと見守った綾羽が「除霊完了なのか!?これは心霊界において大スクープだ!話題になること間違いない!」と自信満々に語ると、藤村は「前もって言いましたが、ここに眠る御霊達の説得は容易なことではない。僕達は出来る限りのことはしましたが完全に除霊したとはお約束できません。その点は理解していただけませんか。なので僕達も自信を持って除霊をしましたとは言いません。」と話すと綾羽はがっかりとした表情で「何だ。除霊失敗ってこと!?」と問い詰めると、侑斗は「除霊失敗も何も、僕達は説得を試みました。僕達の訴えが白虎隊の少年兵の御霊達に届いてくれたら、それしか言いようがありません。永代的に供養された土地ではあるが、彼らの死ぬ間際に負った心の傷は相当根深いんです。なので僕達としてはこれからもこの先もずっとずっと彼らの御霊を供養し続けることしか、出来ないことだと思います。」と語ると、綾羽は「わかった。一連の御祓いの様子が撮影できただけでも見ごたえのある内容になるだろうし、成功したかどうかは次に来るだろう心霊系のYouTuberにでもお任せしようか。」といって返事した後に飯盛山での心霊ロケを終了した。スマホの時計は17時を回っていた。

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