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乾いた発砲音

真夜の冷たい言葉が真耶を刺す「真夜……」真夜は真耶を無視して続けた「それに、まひるを探すなら私たちだけじゃ無理。私たちには仲間が必要なの」
「……わかった」真夜の言葉を聞いて真耶が立ち上がる「……ありがとう」真耶が部屋を出ていく。
真夜が真也に話しかける「……シンヤ、行こう」
(続く)
「うん」真夜が先に部屋を出る。真矢と真也がそれに続く。真夜は部屋のドアノブに手をかけると立ち止まり振り返り、真矢と真也に語りかけた。「……シンヤ、お姉ちゃんはシンヤの味方だからね」真夜は微笑んでそう言い残すと扉の向こうへと消えた。
廊下に出ると、そこにはレイラがいた。レイラは3人の方を見ると、無表情のまま近づいてきた「……おはようございます」レイラは3人に挨拶をすると、真夜の方を向いて頭を下げた。「昨日は、失礼しました」
「いいの、気にしないで」真夜は微笑んで応えた。真夜はレイラに近づき、彼女の頭を撫でた。「……わ、わたしは子供ではありません」レイラは頬を赤く染めながら抗議の声を上げる「ふふ、ごめんなさい。あなたが可愛かったからつい」
「……もう、やめてください」レイラはさらに頬を膨らませる。その様子は年相応の少女にしか見えなかったが、レイラの手には銃が握られていた。パン、と乾いた発砲音がして真夜の頭が砕け散った。鮮血がほとばしり、真夜の首から上が無くなっていた。ドサッと首なし死体が転がる。「ちょっと、レイラ何をしているの?」真耶が悲鳴をあげる。レイラは返り血を浴びて立ち尽くしていた。「真夜が悪いのよ。私を不快にさせたから。近づかないで」レイラは震えながらも銃を真也たちに向ける。「おいっ。よくも真夜を殺したな!真耶、警察に通報しろ」真也がレイラの気をひきつける。今度は真矢の頭が撃ちぬかれた。「……なんで……こんなことをするの?」真耶が泣き崩れる。「うるさい」レイラが真耶の頭に銃弾を撃ちこむ。
「……レイラ」真也は静かに立ち上がった。「……次は、あなたの番ね」
「……来ないで」レイラが後ずさりする。
「……レイラ」
「……来ないでって言ってるでしょう!!」
レイラが叫び声を上げ、真也に向けて引き金を引く。弾丸は真也に当たることはなかった。
「……どうして、当たらない」
「俺がオーバードーズだからだ」「オーバードーズは死に至る病……オーバードースの発動には大量のエネルギーが必要……」
「俺はオーバードーズの発動に必要なエネルギーを全て吸収することができる。だからオーバードーズでも死ぬことはない」
「……それじゃあ、オーバードーズが使えるってこと?……それはありえない。オーバードースは一度使えば脳が破壊される。オーバードースを何度も使うことはできないはず」
「ああ、確かにオーバードースを使えば、オーバードースの発動には大量のエネルギーが必要になる。だが、オーバードースを発動させなければ、オーバードライブは使えない。つまり、オーバードースを使わずにオーバードライブだけを使うことができるんだ」
「……まさか」
真也はレイラを食い殺した。「……うそ」
「オーバードースを使ったオーバードースによるオーバードースのためのオーバードース」
真也は笑みを浮かべた。
「……オーバードースをオーバードースするための……オーバードース」
「そう、それが『オーバードース・ハイ』。これが、オーバードーズを極めた者だけがたどり着く境地……『オーバードーズ・オーバー』」
真也はレイラに銃口を向けた。
「……オーバードーズ・オーバー……『オーバードース』」
「……オーバードーズ」
レイラの体が崩れ落ちる。
「オーバードーズ……オーバードーズ……」
真也はまひるを殺すために走り出した。真也がまひるに向かって飛びかかる。まひるが気が付くと真也は目の前にいた。「……うっ」まひるは真也に蹴り飛ばされる。真也は倒れたまひるに馬乗りになり、まひるの首を締め上げる。
「うっ……うっ……うっ」まひるは必死に抵抗したが、真也の力は強く、まひるの息は苦しくなる一方だった。「……シンヤ」まひるの口からかすれた声で名前が漏れた。「……まひる」
真也の手に力がこもる。まひるの体が痙攣を始める。「シンヤ……助けてよぉ」まひるの目からは涙がこぼれた。「まひる……」
「シンヤぁ……」まひるは涙を流しながら微笑んだ。
そしてまひるは動かなくなった。
真夜がまひるの死体を抱きかかえる。真夜の霊は真也に向かって叫んだ「どうして、まひるを殺しちゃったの!?」「ごめん……」真也はそう言うと、まひるの死体を抱きしめた。
「……ごめんね……」
それから真也は、真夜の部屋に向かった。真也はその部屋にあったパソコンを立ち上げた。画面に映し出されたのは、巨大な水槽とその中で泳ぐ小さな生き物たちだった。画面に字幕が表示されている。「オーバードーズ生命体『真也』タイプの幼生」
真也はむせび泣く。「今まで黙っててごめん。俺は試作タイプの生き残りなんだよ。まひるタイプもレイラタイプも俺のライバルとして開発された。そして、俺がバトルロイヤルの覇者になった。俺はオーバードーズ生命体『真也』だったんだ!みんな滅ぼしてごめん。でも世界から争いを無くすためにはこれしかなかったんだ」
真也が言い放つと、背後に無数の真也がうごめいていた。世界は真也で満たされた。真也の真也による真也だけの世界。
平和だ。
おわり。

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