バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

オーバードの殻獣の卵

彼の言葉はもっともであった。それは真也自身、理解していたことである。真也は震えながらもゆっくりと拳銃を構え…… だが……だがその銃口の先は誰を向けば良いというのだ。彼は周りにいる男を睨みつける。だが……
「な、何を言ってんだよ、俺達は友達……ダチじゃないか」
抵抗する伊織の頭を撃ちぬいた。伊織の頭が割れて中身が見えるが血が噴き出すことはなくただの赤い霧となった 次は真也自身の頭に標準を合わせた瞬間 真那が叫ぶ「真ちゃん!!だめぇ!!」
真那が走りながら手を伸ばしたその時。
真矢の手が真弥を止める。彼女は首を横に振ると悲しそうな笑顔を浮かべた 真弥が撃ったはずの弾丸はそのまま真也の元へ返ってくると、そのまま真也に弾かれてしまう それを確認すると真也は膝をついて泣き叫んだ。
「どうして、こんなことに……。俺は……みんなを守りたかっただけなのに……。なんで、俺は……。『プリメイラ』のキャラクターに、なったんだよ……俺は……。俺は……俺の人生を取り戻したかっただけなのに……うぅ……」
真也の感情にリンクするかのように『オーバードの殻獣の卵』は輝き、真弥はその場に倒れ伏した 真弥が再び目を覚ました時。そこは暗闇の中だった。辺りを見渡せばそこに居たのは……あの日、真姫を助けに行った時に遭遇した、あの白い化け物だった そして真姫を『捕食した』あの怪物が真弥を覗き込んでいるのだった
(まさか……。また俺は捕まってしまったのか?)と絶望しながら起き上がろうとすると……彼の目の前に光が現れ そこから真矢が現れた
(ここは夢の中なのか?)と疑問を持った直後。まひるに抱きかかえられた。
「真也、真也、気が付いたのね。女の子の身体になってしまったけど真也は真也だから」
ぎゅうっと抱きしめられると何だか違和感を覚えてしまう。まひるを異性として認識できない。「ちょっと、あなたねえ」
真也は無意識に女言葉でまひるを突き放すようにしてしまった。
「あれ……?」「え?」
お互い見合って固まる。「どうしたの真也、その声」「……あ?」「ん?」
(なんだこれ、おかしいぞ……俺は今真矢を庇って、銃弾を受け、それから)
混乱した思考のまま、真也は手を見た。
(あれ?手が細くない。むしろゴツい)
胸板に手を当てれば……硬い筋肉と膨らみのある胸筋。喉元を見ればあるはずの無いものが付いているのが見えた。「……え?」
声が高い 。髪に触れてみると長い金髪。これはまるで女性のようだ 慌てて真矢を見ると彼女は真矢のはずだ。だがどう見ても女性にしか見えない 真矢の手を引いて、部屋にあった鏡台に座らせると
「ほわぁああ……」真矢の顔は真也のものとなっており真也の髪の毛は長く美しいものになっていた 真矢も自分の顔をみて驚いている
『間宮さん。私……男の子に戻ったよ!』「うん、俺も同じこと考えてた……」
二人きりの空間で二人はしばらく顔を見合わせた 二人の視界に入ってきたのは……『美少女化したレオノワとシンヤ。そしてそれに抱かれる美女の姿に変身している』真矢と真也は、レオノワに抱かれている美智留の姿をじっと見つめる。
二人はレオノワの服を脱がせその胸に顔を埋めながら寝息を立てる。
真矢がレオノワをそっと引き離すと「あう」という小さな声と共に彼女の目は開いた だが……
「お姉さま、私は、お兄様ではなくてお兄ちゃんが良いな……」
「え、ええ……」
その発言は……レオノワにとっては予想外のものだった。
真姫とソフィアは、この『オーバード』の世界の真実を知った だがそれを全て伝えるのには少しばかり時間が足りず、彼女はこの『オーバード化の条件』について話す事にした。
ソフィアはこの世界に来た当初に見た、自分がオーバードースをした際に発した言葉を改めて説明していくと。真姫の顔色がどんどんと悪くなっていく。……
「これがこの世界での私の話です。信じてくれますか?」
「…………」
黙りこくる真姫に対して、今度はソフィアの方から語りかける。その声色は決して悪いものでは無かった。
「私がこの世界に呼ばれたのは、『私達の敵を倒すため』である事は既にお伝えしましたね」
だがそれでも彼女は顔を上げる事はできなかった。「……もしその『敵』を倒して、元の世界に戻れるようになったとしても……もう、誰も……真矢はいないんですよ……ね。お父様やお母様に、真奈、伊織、美咲先輩、透子も……レオノワお姉ちゃんも、……もちろんお兄ちゃんも、もう、どこにもいない……!そんな世界に、意味なんてあるんですか!?」
涙ながらの叫びに、その場は静まり返ってしまう。真矢がゆっくりとその唇を開く。
「私と、まひると真也が、その敵を倒せば。皆が生き返って、平和になる。そんな世界を想像したことはある」
彼女は真衣の頭に手を乗っけて、自分の胸に真衣の頭を押し付けるようにして抱きしめる。真衣は真也ではないからか、あまり反応しなかった。
真姫も真也の頭を撫でる。「大丈夫だ、あいつらは……絶対に死なせない」
真那はその会話を聞きながらも、必死になって、自分の『オーバード』の力の使い道を探っていた。
(そうだ……!お兄ちゃんの力が、私の力でもあるのなら。『オーバードの力について』にある『異性を好きになり、性交渉を行い続ける。』……これを続けていけば……もしかしたら……でも、この世界じゃあ……。いや……待てよ?)
真那は考え込むと、一つの可能性を見出した
「ねぇねぇ……ところで、みんな。その『敵』ってどんなの?例えばさー……あそこで、私たちのこと見てる『アレ』とかだったりしないのかなー?」
真奈美が天井付近を指さしながら、全員に声をかけると全員の目線がそこへ向かう。すると無数の単眼が睨み返した。眼球のサイズはそれぞれゴルフボールほど。そいつらが一斉に眼光を浴びせてきた。たちまちそこらじゅうが穴だらけになる。伊織と透子が即座に真姫を守るがその表情には驚愕と絶望が入り交じる。
真依だけは冷静だったが……真那の一言が彼女に動揺をもたらしていた。(なんだろう。なんか変だ)
真姫とソフィアを庇いながら、透子は拳銃を構え真耶を呼ぶ
「ま……まさかとは思うが……。お前はあの化け物を仲間だと思っているんじゃないだろうな?」
透子の震えた問いかけに真也の顔をした彼女は答える
「だってぇ……こっちからしたら、あれらも全部……人間だし。『オーバードースで殻獣になっただけの人間』だよぉ?」「世界には二種類の人間しかいない。敵と味方だ」レオノワは『彼女』の発言を否定すると『少女』に向かって拳銃を構える
「ま、真矢。もうやめて、あなたにこれ以上人を殺して欲しくはないの」真矢を庇うようにして立ったレオノワの目に『真矢が撃ったはずの殻獣の卵』が入る。「ま……さか」
真矢は卵を撃ち抜いた瞬間に気を失った。レオノワが真矢を抱きかかえると……そこには先程までいた美少女の容姿の真也は消え失せて代わりに中性的な少年の『まひる』が横たわっている。

しおり