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強烈な嫌悪感を与え

「はい!お美しいですね! さぁお次はエントリーNo.2番、中国支部の春美さんの登場です!皆さま盛大な拍手をお願いしまぁす!」
今度は真也と全く同じ身長の女が姿を現す 肩ほどまでかかる黒い髪、真也同様黒ぶち眼鏡をかけていたその人物は……
「私は……田中春美」その口調はとても男性的であったが…… その見た目は……胸を詰めすぎた、チャイナドレスを着た真也のような姿であり……その姿は真也に強烈な嫌悪感を与え……それと同時に、自分だけがこうなっているのではないという事実が、この世界に来てからの不安に拍車をかけた そしてその服装に真也だけでなく会場全ての男が釘付けとなり…… だが、そんな中。ただ一人、伊織だけは、苦虫を噛み潰したような表情で彼女を睨みつけていた。
真也とレオナは困惑しお互いの状況を確認し合うとまず真也が「俺たちの体はどうなってしまったのか」ということを尋ねた。だがそれに対しレオノワが首を傾げる どうやら彼女もこの世界がゲームの中だった、などという話は初めて聞くようで……そもそも自分が『オーバードの力』によって『作られた人間』などと言われれば驚くに決まっていた。真也自身もその『作り替えられた』という説明が真実かどうかは分からない。だが、その『作られた肉体』『記憶』を持つのが今現在自分達だけだとすれば……。それはもう、信じるしかなかった。
真也はその言葉を聞いてふと、あることを思い出した
『プリメイラ』の登場人物には『シンヤ』という名の登場人物が確かいたのだ。
真也は慌てて『キャラクターシート作成用データファイル:『オーバードの力について』参照
『シンヤ』の名前』と検索する……とそこには確かにその項目が存在していた。
その名前に目を通すとそこには「シンヤ=間宮まひるの義理兄であり…… そして真也の妹の義理の兄の義兄。そして……その実の兄である」とあり、そしてその下には彼の経歴が記されており。そのプロフィールに『彼は真姫が連れ去られた後、その妹を庇うようにして行方不明となった』と記載され、更には彼が『死んだ』事になっており……。彼の妹であるまひるの心に影を落としているという旨が記載されていて……彼はその文章を読んだ瞬間に胃がキュッと締まる様な気分に襲われた。
真也はこの世界にきてから今までの事を思い返し始める 先週金曜日に、いつも通り帰宅しようとしていたところを突如拉致されて、その後5年間の過酷な体験を強制的にさせられる事となった。最初は何が起こったのかもわからず混乱するばかりで……真也にとっては、それが今となっても『地獄であったか』の一言で表せた それからしばらく経ったある日のこと。急に自分の意識だけ覚醒した時があった その時真也が最初に感じたのは『空腹』だ。とにかくおなかが空き、その衝動に突き動かされるがままに目の前にあった『ハンバーガーショップ』に入り。……そして『プリメイラ4のキャラクター』になった 真也は改めて自分の手を見つめた。そこには『男の手』はなく……今は小さく細い女性の手が握られている。
(俺には……女の子としての、日々の日常があって。それをずっと楽しんでいたはずだ。……なのに。この体の、『田中真弥』の人生は一体なんだったんだ……?)
真也は怒りと共に拳を強く握り締める。……その手に、誰かの大きな、暖かな手に包まれる。その暖かい方へ視線を上げるとレオノワがいた。「大丈夫……?」
レオノワはそう呟き、その綺麗な琥珀色の瞳が心配そうに見上げているのだった。
(そうだ。今ここにいる俺は、あの地獄の中に囚われた間宮真也じゃない。今の俺の名は……)
彼女はそんな真也を見て、何かを感じたのだろうか、真也の手の上にさらに自身のそれを重ねると真矢の方を向き口を開く
「でも……私たちに今起こっている事が何であっても、きっと、前へ進むためにやるべき事は変わらない。だから……」
真矢の目を見ながらレオノワがそう伝えると真也の耳元で真姫が小さく「そうだよぉ」と相槌を入れる。その様子は姉妹にしか見えないだろう。……しかし、二人は真也とレオノワ。二人のことをよく知るものたちからすれば驚くべき光景でもあった レオノワが「だから……」と口にした後。彼女は顔を真っ赤にして口をモゴつかせていたが そんな彼女に対して会場がどっと笑いと野次で沸く。その様子に、彼女の言おうとしていた台詞も忘れてしまったかのように、彼女は下を向いて俯いてしまう。そんな彼女の代わりにレオノワが続ける。
「……今やるべき事をやる」彼女はそういうと真也をちらりと見上げた後……恥ずかしさから目を伏せながら続けた。「それが、どんな状況だったとしても。……私が……真也と、出会って、こうして、一緒になりたいと、願った、気持ちは。変わることは無い……!例え……真也が……その、私より先に目覚めていても」
彼女は言いながら、その顔はトマトのように紅潮していくのが見て取れるほどになり、ついには何も言わなくなってしまった だがレオノワの発言を受けてか周囲の男たちからは「キャー!お二人ってば!」だの「もう、熱い!」などの声が聞こえてくる レオノワが言ったその言葉がどういう意図であるのか。真也は理解していた。だからこそ……その言葉を嬉しく思う反面、真矢との約束を違えている罪悪感に襲われる その表情を読み取ったのか真也の顔を見るなり真矢は大きくため息をつき……そして優しく微笑む 真那も「そうそう。真也ぁ〜はやく戻ってあげなきゃね〜」と微笑むと真也の頭をポンっと叩く その行動の意味するところに気が付いた周りの男達からも「え!?お前……そうならそうと早くいえよォ!なぁ?!」とブーイングが上がる。
彼らは皆、どうあっても『そういう方向』に持って行きたいようだった そんな彼らに対して「うっさいうっさーい!このスケベどもめ!このこの!えいっ」と彼らの頬に軽く人差し指を刺し込む真衣だったが…… だがそんな彼女を他所に会場はヒートアップしており、「あっちぃぜ」とか「最高」という叫びと、男達の「いいからさっさと進めろ!」という大音声でかき消されてしまう。だがそんな中、一人の男の発した一言が全員の耳に届く。
「はい。じゃあその前に一つだけ。皆さんご存知かもしれませんが一応、ルールを説明します。
この『オーバードの力について』に記載されている『オーバード化条件の一つ。その2
オーバードへの進化方法 1:異性(特に同性の異型者に対し強い性欲を掻き立てられる存在。つまり同性愛者であると望ましい)が、自分の体を弄り回して踊りをし続ける。その回数によってオーバードとなる確率が変化。
なおオーバードへと変化する際には激痛とともに体が変形しだす』はい、ここからですね!さっき説明してた内容とはまた別の。

「こんな狂った世界はもう嫌だ」真也がどこからともなく銃を取り出した。彼は突然の出来事に驚いた。なぜ、自分の手元には、いつの間に、『拳銃』があるのか。それは……その銃を誰が握っているかも、分かっていた。真也はその人物を見上げるが……彼はその視線を無視して……真也に告げる
「この世界で生き残る為に……そしてこの世界の真相を知るために……必要なんだ」

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