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秋の収穫祭 その4

 タクパッドを利用した秋の収穫祭の予約販売は、予想以上に好調です。

 宿泊に加えて食事の予約まで取ることにしたものですから、ララコンベとオザリーナ温泉郷の温泉宿からも
「仕入れの目処がたって、本当に助かります」
 そうお礼まで言われていた次第なんですよね。

 この食事の予約は、ついで程度に思いついてスアに使いしてもらった物だったんですけど……結果オーライとはいえ、皆さんのためになったみたいで、僕もなんだか嬉しくなった次第です。

 定期魔道船の予約も順調に入っていまして、秋の収穫祭の期間に運行される定期魔道船の席がどんどん埋まっています。
 
 この定期魔道船は、基本的に辺境都市を結ぶ形で運行しています。
 具体的には、

 ガタコンベを出発地にして、
 ブラコンベ
 ララコンベ
 魔法使い集落
 テトテ集落
 ナカンコンベ

 この順に運行していきまして、最後ガタコンベに戻ってきて、そこから再び出発していくわけです。

 この航路を、定期魔道船はおよそ1時間で回っています。
 これ、さらっと言ってますけど、すごいことなんですよね。

 何しろ、ナカンコンベからガタコンベまでの間はですね、荷馬車で片道半月はかかってしまう程の距離があるんです。
 他の都市と都市の間の距離でも、荷馬車で片道1~2日かかる距離がありますからね。

 以前であれば、今回のようにララコンベでお祭があるからといって、ナカンコンベからわざわざお客さんを迎えることなんて出来るはずがありませんでした。

 確かに盛況で大規模なお祭ではありますけど、往復1ヶ月もかけてやって来てもらうほどの価値があるのか? と聞かれてしまいますと、さすがに即答は出来かねますからね。

 それが、この定期魔道船のおかげで大幅に時間を短縮することが出来ているわけです。
 片道1時間程度であれば、
「ぜひお越しください」
 と、お誘いする側としましてもお誘いしやすいですし、興味をもってくださったお客さんも、気軽にお出かけ出来るわけです、はい。

 今も、近隣の都市から
「定期魔道船をうちの都市にも就航させてほしい」
 といった申し出を結構受けていたりします。
 
 ですが、コンビニおもてなしが所有している魔導船は今のところ1台しかありません。
 その状態で、更に航路を延長してしまいますと、片道1時間のところが2時間3時間とどんどん伸びてしまう事態になってしまいかねません。
 それでも、荷馬車で移動するよりは相当早いわけですけど、そうやってズルズルいってしまうのもあれなので、これ以上の停泊地の追加は、スアが新たな魔導船の作成に成功したら考えることにしようと思っています。

 背伸びをし過ぎるとろくなことがありませんからね。
 その事は、僕が元いた世界でコンビニおもてなしを経営していた際にいやという程思い知らされていますので……

◇◇

 今回の秋の収穫祭。
 当然、コンビニおもてなしも出店を出す予定にしているわけです。
 
 予定としては、

 ララコンベに1店と、オザリーナ温泉郷に1店の合計2店の出店を予定しています。

 担当は、
 ララコンベの出店は、ララコンベに店を構えているしているコンビニおもてなし4号店
 オザリーナ温泉郷の出店は、オザリーナ温泉郷に店を構えているコンビニおもてなし6号店
 
 それぞれの街に店を構えている店に勤務していて、それぞれの街の様子に精通している店員に主担当をお願いしながら、その補佐を他店からの助っ人スタッフにお願いしようと思っています。

 先日、店長回覧で、補佐としての参加希望者を各店ごとに募ってもらっていたのですが、その結果が集まりました。

 それを元にして、僕はシフト表を修正していきました。

 基本的に、各店に所属している店員によって運営されているコンビニおもてなしですが、常に1,2人ずつ交代で休暇をとれるようにシフトを組んでいます。
 個人的な用事で急に休暇を取る人が出ることもありますけど、そういう時は所属している店員が比較的多いコンビニおもてなし2号店から助っ人に回ってもらったりしています。

 で

 そういったシフトの編成や助っ人の派遣申請は、今はすべて僕が行っています。

 以前は、各店の店長にシフト編成をお願いしていた時期もあったんですけど、助っ人をお願いする仕組みがちょっと上手く機能しなかったんですよね。
 なんか、みんなお互いに遠慮してしまったといいますか、
「わざわざ来てもらうのは申し訳ない」
 各店の店長が揃ってそんな風に思ってしまったもんですから……

 なので、この業務は、今は僕が一手に引き受けています。
 そうして、総合的に各店のシフトをチェックして、必要に応じて助っ人の依頼もさせてもらっています。

 ……と、まぁ、こう言うとすごくかっこよく聞こえるのですが……

 偉そうに言っている僕もまた、助っ人を依頼するのを躊躇しちゃう人なもんですから、気が付くと助っ人として僕自身があちこちの店に出向く羽目になっていたりするわけでして……

 幸い、本店にはひとりでなんでもこなせてしまうスーパー店員の魔王ビナスさんがいますので、それでもどうにかお店を回すことが出来ているのですが……そんな魔王ビナスさんに頼り切ったシフト運用というのも問題ですからね。
 この秋の収穫祭のシフト編成を機に、改めていきたいと思っている次第です。

 そういえば、先日、パラナミオが学校から持ってかえってきた作文の中に、
「私の将来の夢」
 について書かれた物があったんですけど、そこには

「私は大きくなったらパパのコンビニおもてなしの店員になって、パパのために働きます」
 
 そう書いてあったんです。

 それを見た僕は、なんかもう胸がいっぱいになってしまったと言いますか……

 僕が元いた世界で運営していたコンビニおもてなしは、あまりにも経営状態がひどすぎて、経営している僕自身が「こんな店で働きたくない」って思ったこともあったんです。

 そんなお店が、こうして娘に
「将来コンビニおもてなしで働きたい」
 そう思ってもらえるまでになっていたんですからね。
 パラナミオの場合『パパ大好き補正』が過分にかかっているとは思いますけど、それでもやっぱり嬉しいわけです。

「……パラナミオやみんなのためにも頑張らないとな」
 僕は、そのことを思い出しながら、シフト編成表を気合いをいれて修正していきました。

 気が付けば、秋の収穫祭の開催日がすぐそこまで近づいています。
 シフトの編成が済んだら、今度は出店で販売する商品のチェックもしておかないといけません。
 それに、コンビニおもてなしで現在展開している秋の味覚フェアの状況もチェックしないといけませんし、来月以降の新しいフェアも考えないと……

 そんな感じで気ぜわしくあれこれ頑張っていた僕だったわけです、はい。

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