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天狗の子孫1

 2016年の熊本地震。それは多くの被災者と、甚大な被害をもたらした大災害だった。
 その中でも、国指定重要文化財の阿蘇神社は、境内の|社殿《しゃでん》がほぼ全て倒壊し、修復するのに5年もの時間を要した。
 何でこんな話になっているのかと言うと、阿蘇神社の|権禰宜《ごんねぎ》が、わたしに話しかけてきたからだ。

「勝手に写真撮影してすみません」
「ああ、写真はよろしいですよ。むしろ建て直した本殿をたくさん撮ってもらって、多くの人に見ていただけるとありがたいです」
「……そうですか。でも、本当に大変だったんですね」
「ええ、まだまだこれからです。お客さん、おっと、参拝者の方々がたくさん来られるように、私たちも一生懸命ですから」

 そう言って軽口を叩く権禰宜だが、元々の建材を使って修復しなければ、国指定重要文化財の登録が抹消されてしまうそうで、それを回避するために、色々と手を尽くしたのだという。
 主にお金の面で。
 その後も権禰宜の話は続き、この神社は2000年以上も歴史があるなど、長々と講釈が始まったので、わたしはここから退散することにした。

「では、そろそろこの辺で」
「ああっ、すみませんお嬢さん。あっ、でも、他に写真撮影をされるなら、僕が案内しましょうか? この日差しですし、日焼けはしないように本殿の中にでも――」
「いえいえ、平気です。他にも行くところがあるので」
「そうですか、……それは残念です」

 少し強引に引き止めてくる権禰宜だが、とりあえず目処は付いた。
 そんな思いを胸に、わたしはその場を早々に立ち去った。

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 駐車場に停めている車に乗り込み、髪の毛を結びながら思い返す。先日舞い込んだ依頼を。
 それは、阿蘇神社で行方不明になった、|小津《おづ》|心春《こはる》という女の子の捜索だった。
 もちろん警察も捜索をしているが、……いや、していた、と言った方が正しいか。
 というのも、わたしが探しているのは、5年前の熊本地震で行方不明になった女の子で、警察の捜査はすでに打ち切られているからだ。
 だから依頼主からは、生きているのか、そうでないのか、それだけでも分かればいいと言われている。

「というか、せっかく円満退職できたのに、全然休めん。皮肉にも程があるやろが」

 いや、愚痴を言ってもしょうがない。
 福岡県警を退職し、わたしの写真道楽を経費で落とすために始めた探偵事務所。そんな不誠実な会社は思惑に反し、大繁盛となったのだから。
 まあ、わたし1人だから忙しいとも言う。

 しかし、あの権禰宜。
 |袍《ほう》は白、|袴《はかま》は|浅葱《あさぎ》色の|浄衣《じょうえ》だった。つまり、位は高くない。
 しかし、熊本県警の知り合いからスマホに送ってもらった画像データを見ると、あの権禰宜は、少なくとも50年前から年を取っていないことになる。

「あいつ、何かのあやかしやけど、阿蘇神社に忍び込んだ下っ端やろね。まあ、阿蘇神社の神様が滅してくれるけん、ほっとこ」

 というか、白黒をカラーにする技術って凄いな。

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 |阿蘇《あそ》|内牧《うちのまき》温泉にある、|蘇山郷《そざんきょう》。
 ここが今日の宿屋だが、入り口にあった「与謝野鉄幹、晶子ゆかりの宿」という立札がよく分からないくらいで、部屋の雰囲気、食事、サービス、どれを取っても超最高。それに加え、源泉かけ流し温泉は最上級の入り心地だった。
 チェックインして、わたしはそれらを一気にこなし、調査に出掛けようとしていた。

「お出かけですか? そろそろ暗くなりますし、最上階にバーがありますよ?」
「ああっと。ええ、あとで行ってみます。あ、それとこの時間から阿蘇山に登れますか?」

 わたしがそう言うと、受付の女性は驚いた顔で説明を始めた。
 阿蘇山と言っても、一つの山があるのではなく、|五岳《ごがく》、つまり五つの山があり、わたしが行こうとしていたのは、その中の一つで、|根子岳《ねこだけ》と言う山だった。
 しかもそこは、素人のわたしが登れるような山ではなく、プロのロッククライマーがアタックするような場所だったのだ。

「う~ん、困ったな。わたしの調査不足にも程がある」
「なんの調査ですか?」
「ああ、いえいえ、こちらの話です」

 受付の女性が少し訝しんでいるので、すぐわたしは引き下がり、その日は宿屋で過ごすことにした。

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

「熊本地震で、道路が寸断されてたんですか?」
「そうですね。国道が土砂崩れで通れなくなって、それが熊本、阿蘇、大分を繋ぐ大動脈だったんですよ」
「ふむ? わたしは、えらくきれいな道路を通ってきましたけど、あそこが復旧したんですか?」
「ああ、あれは新しく開通した国道57号線で、寸断された方では無いです」

 なるほど……。わたしは方向音痴なうえ、他県のことにまでアンテナを張っていなかったので、色々と勉強不足だったようだ。次からは、もっと下調べをせねば。
 だけど、阿蘇神社だけではなく、大災害からから立ち直ろうとする人の力って凄いな。

 そうそう、わたしは今、|蘇山郷《そざんきょう》の最上階にあるバーでお酒を飲んでおり、バーテンダーの女の子と話しているのだ。
 このバーに来るには、下のフロアから細い階段を上がってこなければならず、大きなホテルのバーと言うより、街中のこぢんまりとしたバーという感じだ。

 しかし、わたしが根子岳に登るのは難しそうだけど、それで諦めるわけにもいかないのだ。
 どうしてかというと、捜査対象の女の子が、根子岳付近で目撃されたという情報があるからだ。

「それにしても……、お客さん、少ないですね」

 ここにはわたしとバーテンダーしか居ない。
 しかし、とても心地のいい空間だと感じる。
 それはたぶん、真夏の夜だけど、大きな窓から入ってくる山風が、まるで秋風のように爽やかで涼しいからだと思う。
 わたしは、そのおいしい空気を目いっぱい吸い込み、窓から空を見上げ、都会では見られない、きらびやかな天の川をその目に焼き付けた。

「お盆にならないと、人は増えませんね。夏場はやっぱり、海に行く人が多いので、わざわざ山の中の温泉に来る人は少ないんです」

 温泉と季節に関係はない気がするけど、そうなのかな?

「お客さん?」
「ん?」
「お知り合いの方ですか?」

 阿蘇に知り合いなんて居ないけど? そう思いながら階段の方を見ると、阿蘇神社にいた権禰宜がそこに立っていた。
 ただし、服装はデニムにティーシャツというラフな格好だ。

「ああ、ストップ、ストップ! そのまま、そ、の、ま、ま、で、居て下さい。というか話に来ただけです」

 ふむ……。権禰宜の姿だけど、こいつは阿蘇神社に居た、下っ端あやかしだ。
 だからわたしは、ボトルを投げようとしたのに、先に制されてしまった。

「お名前を聞いてませんでしたね?」
「……」
「いいでしょう、警戒されるのは分かりますが、あなたは何用で阿蘇に来られたのですか?」
「……」
「……おや? どうしました?」

 白々しいな、この野郎。
 わたしは今、ボトルを振り上げたまま動けない。それを分かった上で言ってやがる。
 何故そうなっているのかというと、この権禰宜が発する覇気に当てられているからだ。
 こいつ……、下っ端のあやかしかと思っていたけど、とんでもない大物だったようだ。

「|健磐《たけいわ》|龍命《たつのみこと》様、お客様が困ってらっしゃいます」
「お? そうかそうか、こりゃ済まない」

 ほう、……バーテンダーの女の子、あんたも、あやかしの一味だったのか!
 というか、こいつら何者なんだ?
 と、そんなことを考えていると、身体が突然動いた。
 おっしゃ、チャンス!

「うおっと! 危ないなあ」

 振りかぶった状態だったので、権禰宜に全力でボトルを投げ付けたが、軽く躱されてしまった。
 ただ、わたしはそこで抵抗することをやめた。何故なら、そのボトルは空中で停止し、誰の手も借りず滑るように動いて、テーブルの上に鎮座したからだ。

「まっ、落ち着いて」
「落ち着けるか、このクソ権禰宜あやかしが!」

 口撃するという、最後の抵抗はそこまでとなった。

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

「んで? わたしが探している女の子、本当に知っとーと?」
「知ってますよ~?」

 捜査対象の女の子が行方不明になったのは、阿蘇神社であり、その日時は熊本地震の前日だった。
 それで阿蘇神社に行ったのだが、そこに居たのは、横で酒を飲んでいる、あやかし権禰宜だった。
 そして今、わたしはあのとき、下位のあやかしだと決め付けず、もっと探ればよかったと後悔中なのだ。
 そうすれば、|小津《おづ》|心春《こはる》の件に、こいつが何か関係していると分かっていたかもしれない。

「私が言ってるのは、安否確認で、そのどちらであれ、居場所が知りたいんだけど? あ~もう、なんか腹立つ! 言わないでのらりくらりするのやめて欲しいっちゃけど! お姉さんもう一杯ちょうだい! つか、あんたもあやかし一味やったね!! 妙な名前でこいつ呼んどったし!!」
「あははは~、少し薄めにしますね~」
「水割りはいらん! ロックでちょうだいっ!」

 そんな感じで、わたしがわたし自身に腹を立てていると、権禰宜あやかしが話し始めた。

「あなたは誰に依頼を受けてきました?」
「そりゃその子の親に決まっとろうが」
「親ですか。……その親から、神々しい気を感じませんでしたか? その名の通り神の気配というやつです」
「あ~もう! このクソ権禰宜あやかしが! 妙な気は感じたけど、神の気配なんか知らんばい!」
「ふむ……あなたは自覚のない法師のようですね。これまで誰かに師事したことはありますか? いや、その年齢でその腕なら、誰にも師事せず独学? いやいや、マジでないわ~。それでそんなに雑な使い方を……、ぷぷっ、もしかして、その幼い力で仕事してたん?」
「おいおい、クソ権禰宜あやかし! 口調、口調! 地が出とーよ!!」

 わたしはそう言いながら、「自覚のない法師」以外の部分が、見事に的中していることに慄いていた。
 と言うのも、わたしは幼少の頃より、人の気が形として見え、自身の気を操ることが出来たからだ。
 しかし、それを両親に伝えると、「その特技は、誰にも言っちゃダメ」と言い聞かせられ、その力の使い方を教わることはなかった。
 その後、両親と同じ警察官になったのだが、わたしはその特技を生かし、事件を次々と解決に導いた。
 その頃のわたしは、この力は他の人には無い特別なもの、と感じるようになり、図に乗っていた時期でもある。
 まあ、おかげさまで全国トップの検挙率で、何度も表彰された。しかしそのせいで悪目立ちをし、すったもんだのあげく退職する羽目になったのだけど。

 あと、このクソ権禰宜あやかしは、わたしのことを独学と言ってディスっているけど、法師なんて一寸法師くらいしか知らないし。

「そもそもあなたが来ることは、熊本県警から聞いていましたし。そして、探している女の子は……」
「うん? 熊本県警もグルなのは置いといて、……さっさとその先を言え、ボケが!」
「それは……」
「あ~っ!! マジむかつく! はよ言えっ!!」

「私ですよっ!」
「へっ? ――――へっ?」
「私が|小津《おず》|心春《こはる》ですっ!」

 権禰宜の視線は、バーテンダーの女の子に固定されたまま、妙に引っぱると思っていたら、わたしが探していた|小津《おず》|心春《こはる》は、どうやらこのバーテンダーの女の子だったようだ。
 ということは、……よしっ、依頼完了!

「じゃねえわ!! なんでこの子が、わたしが探してる女の子なんだよっ!! まだ12歳だと、こんなちっちゃい、……いや、そりゃ5年前の話で、今はもう17歳。それならこんなに大人っぽくもなるか」
「やっと気づいたか……」
「気づいたか、ふっ……。じゃねえだろっ!! なんで未成年がバーテンやってんだよ!!」
「お客さん、お客さん」
「おん!! ぶはっ!?」

 カウンター越しに立っている|小津《おず》|心春《こはる》は、いつの間にか歩きにくそうな|天狗下駄《てんぐげた》をはき、|羽団扇《はうちわ》を持ち、そしてポンポンが付いた|山伏装束《やまぶししょうぞく》を着ており、まるで天狗のような姿になっていた。
 まあでも、顔はかわいいままで、天狗のお面のような、赤い顔に長い鼻ではないので、若干コスプレのように見える。

「……かっ」
「か?」
「かわいいなっ!!」
「やめてくださいよ~もうっ!」
「ぶほぉっ!?」

 その姿に見とれてしまい、思わず口にした「かわいいな」のタイミングで、小津心春が羽団扇を振ったその瞬間、顔面に突風を受け、わたしは仰け反ったまま、椅子から転げ落ちてしまった。

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

「落ち着きました?」
「ええ、もうバッチリですが?」
「いちいち突っかかってこないで下さい」
「しょうがないやろ。あんたが正体不明のあやかしだと判ったからには、いつか滅ぼそうと思ってるんだし」

 座り直したわたしは、権禰宜あやかしとバチバチの状態だ。
 主にこちらから仕掛けているのだけど。
 天狗の服を着ていた小津心春は、いつの間にか元の姿に戻っているし、こちらはもういっぱいいっぱいの状態なのだ。

「探偵さん、あなたの名前を聞かせてくれませんか?」

 そんな精神状態のわたしに、権禰宜あやかしがズケズケと話しかけてくる。

「はぁ? 熊本県警から連絡があったのなら、わたしの名前も知ってるんでしょ?」
「ええ、ですからこれは確認ですよ」
「……|加茂《かも》|桜子《さくらこ》」
「……加茂姓で間違いないですね?」
「当たり前やろがっ!」
「それと、あなたは福岡県警察を、1年でクビになってますよね?」
「ああん!? クビじゃないし、こっちから辞めてやったの!」
「ははっ、まあそういうことにしておきましょう。それでは少し話しを聞いてもらえますか? あ、そうそう、昼間のように逃げ出さないで下さいね」

 返事を待たず、権禰宜は話し始め、わたしはおとなしくせざるを得なかった。というのも、またこいつが強大な覇気を発し始めたからだ。

「加茂さん……。あなたは阿蘇の天狗伝承をご存じですか?」
「天狗と言えば、鞍馬山なんじゃ?」
「有名どころとなると、そこですね。しかし、阿蘇の山には古くから山岳信仰があり、天狗が守護者として祀られているのはご存じではなかったようですね」
「……知らん」

 この野郎、言葉を発するのもつらいくらいの覇気を放ってやがるのに、話しかけてくんな!

「そうですか……。では加茂さん、あなたは、あなた自身が天狗だと知らなかった。そうですね?」

 は?
 ……は?
 なに言ってんのこいつ。

「あなたに、小津心春の捜索依頼を出したのは私です。博多の事務所でお話ししましたよね?」

 そんな事を言い放った権禰宜。
 そちらを向くと、わたしの首から、まるで油の切れたブリキ人形のような、ギギギという音が聞こえてきた。
 そうなったのは、そこに座っていたのが、わたしに依頼をしてきた初老の紳士だったからだ。

「ただ、この子が5年前事故に巻き込まれたのは、本当の話です」

 そう言った権禰宜は、じっと話を聞いている、小津心春に視線を移した。

「まあ、たった1年とはいえ、警察に勤めた方ですし、完全に嘘話だと、あなたがここに来ないと思ったんですよ」

 そして、あの時のわたしは、精神が不安定だった。それを放っておけば、わたしの力が暴走し、よくないことが起こっていたのだという。

「どうして暴走なんてするのか? そんな顔ですね。……それは半年前に亡くなった、あなたのご両親の話になりますが、いいですね? ――彼らはあなたの神通力が暴走して死なないよう、生まれたときからずっと抑えつけていたのです」

 しかし、わたしの両親は事故で亡くなってしまった。
 もうその件は、わたしの中で、心の整理が出来ていると思っていたが、いや、それでも心のざわめきは治まっていなかった……。
 となると、やっぱりそのせいだったのか。

 両親の死後、わたしは以前にも増して、人の気がよく見えるようになっていたのだ。
 ただ、そうなるとこの権禰宜は、どうして超プライベートな、それも、わたしが知らなかった情報まで持っているのか、という疑問が出てくる。

「まっ、あまり考えてもどうにもなりませんし、おとなしく私に師事して神通力の使い方を学びなさい」
「ふ、ふんっ! そりゃ別にいいけど、あんたマジで何者なん?」
「はぁ~、これだから最近の若い者は」
「そのセリフ、若者に嫌われるセリフ、トップスリーに入るって知ってて使っとるやろ?」
「いえいえ、知りませんでした。それと加茂さん、あなたは日本書紀に記載された、山の神の名前を知っていますか?」
「山の神?」
「そうそう、山の神です」
「……知らん」
「ええっ!? ほら、さっきこの子が言っていた、|健磐《たけいわ》|何某《なにがし》という」

 権禰宜はそう言いながら、小津心春を見る。
 そうかそうか、こいつは、自らが火山の神、|健磐《たけいわ》|龍命《たつのみこと》だと、わたしに言わせたいのか。
 言わんけど!
 でも正直、わけの分からないことだらけだし、わたしはこれに師事して、色々と情報を聞き出そうと思う。
 わたしは計算高いからな!!

「そんな事より、ちゃんと小津心春を見つけたんだから、報酬よろしく」
「えっ?」
「はよ」
「ええっ!?」

 24歳の夏の日。
 こうしてわたしは、納得できないまま、天狗人生を歩み始める事となった。

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 1週間後。

「三日坊主とは、本当に情けないですねぇ~」
「あぁん!? 福岡から阿蘇に行くのに2時間以上かかるし、交通費も時間も無いし、んなもん中止に決まっとろーがっ、このボケ、タコ、イカ、ナスビッ!!」

 そんな訳で、わたしは今、博多にある事務所に居るのだが、権禰宜が毎日稽古をしようと言ってくるのだ。
 だから「阿蘇神社に居なくていいのか」と聞くと「他の者に任せておる」などと尊大な物言いをしてくるし、強引だし、手に負えない。

「それなら、いつもの〝博多の森〟で稽古しましょう」
「あ~、はいはい、分かりましたよっ!!」

「あ、それならもう定時ですし、事務所の鍵は私が閉めておきますね~」
「おぉん? |小津《おづ》っ、おめぇも行くんだよっ!!」
「ひゃ、ひゃいっ!!」

 あの日、バーにいた3人は、博多にあるわたしの事務所に、何故か全員集合している。
 というか、この2人は事務所に住み着いている。
 まあ、それでもわたしは。天狗として生きていく事を受け入れられたし、ひとりぽっちの事務所も賑やかになったし、……まいっか。

 =完=

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