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大運動会後のあれやこれや

 ナカンコンベ大運動会も無事終了しました。

 最後のリレーで精根尽き果て、挙げ句の果てにぎっくり腰まで発症した僕ですが、スアの治癒魔法と魔法薬のおかげで、翌日の今ではすっかり元気になっています。

 ちなみに、運動会の翌日であります今日からコンビニおもてなしの薬品コーナーで
『筋肉痛治療薬』
 なるものを大量に販売いたしました。

 これは、運動会で久々に運動したことにより、翌日ひどい筋肉痛に悩まされているであろう、ナカンコンベの皆様のことを見越したわけですが……


 ……そのもくろみは、見事に当たりました。

 最初は
「な、なんでもコンビニおもてなしに、筋肉痛がたちどころに治る魔法薬があるらしい」
 といった口コミで情報が伝播していったのですが、その情報は瞬く間にナカンコンベ中に広まっていきましてですね、午後には、この筋肉痛治療薬を求めるお客さんが、コンビニおもてなし5号店西店お呼び東店に殺到していたんですよね。

 ちなみに、そんなお客さんの中には、
「て、店長殿、そ、そ、そ、その筋肉痛治療薬を私にも売ってほしいのですよねぇ」
 と、まるで生まれたての子鹿のように両足をぷるぷるさせながら来店したドンタコスゥコの姿もあったりしました。

 運動会では桁違いの足の速さを披露し、最後のリレーでも僕をぶっちぎったドンタコスゥコなんですけど、
「や、や、や、やはりですね、運動会で使用する筋肉は別物だったようなんですよねぇ」
 ドンタコスゥコは、そう言いながら筋肉痛治療薬を一気飲みしていきました。

◇◇

 ちなみに、コンビニおもてなしチームの中で一番筋肉痛がひどかったのは僕……ではなくてですね……

「あうう……体が……体があちこち痛いのですぅ……」
 コンビニおもてなし5号店東店の2階にあります、コンビニおもてなしナカンコンベ寮の自室の中でうめき声をあげていたのはルービアスでした。
 ルービアスは、先日ウルムナギ又として尻尾が割れて人型に変化することが出来るようになった5人のウルムナギ又達と一緒にこの寮の大部屋に住んでいるのですが、そのベッドの上で体をピクピクさせていた次第です。

 競技としましては、ルービアスがリレーに参加しただけで、他の5人は競技に参加していないのですが……
 この6人は、1日中、コンビニおもてなしの旗を振りまくって、競技に参加している選手を応援してくれていたもんですから、その結果全員重度の筋肉痛に陥っていたわけです、はい。

 この6人は、スアの筋肉痛治療薬を飲んでもなかなか回復しなかったんです。
「……魚類だからかしら、根本的に筋肉痛の発症の仕組みが違うみたい、ね」
 話を聞いて、部屋に直行したスアは、ルービアスの体に右手をあてがいながらそう言いました。

 その手の先には魔法陣が展開していまして、その魔法陣からあれこれとルービアスの体の情報を収集していたみたいです。
 で、この場には、おもてなし診療所を担当しているテリブルアも同席していたのですが、
「へぇ、そんなこともあるんですねぇ、こりゃ勉強になる」
 そう言いながら、ルービアスを見つめていたのですが……

 いつの間にかスアとテリブルアは、両手をワキワキさせながらルービアスへその手を伸ばしていたのです。
「へ? あの? お2人? ちょ、なんですかそのお顔は!? まるで私の体を実験台にする気みたいじゃないですか、ちょ、あの、す、スタッフー! スタッフー! 助けに来て~」
 ルービアスってば、そんな言葉を発しながら必死にベッドの上から逃げだそうとしていたものの、筋肉痛がひどすぎてピクリとも動けなくなっていたわけです。

 で

「……大丈夫」
「あぁ、すぐ気持ちよくしてやっから」
 笑顔でそう言うスアとテリブルア。
 そんな2人を前にして、ルービアスは声にならない悲鳴をあげていた次第です。

 このあと、2人のモルモットにされまくっていったルービアスと5人のウルムナギ又達ですが、2時間後には、みんなすっかり筋肉痛が癒えていたので、この2時間のことは犬にかまれたとでも思ってもらえたら……

「き、筋肉痛が治ったのはいいのですが」
「あ、あんな格好や」
「こんな格好までさせられて……もうお嫁」
「に」
「いけません……」
 そんなことを言いながらも、筋肉痛が治ったことを喜んでいたウルムナギ又5人娘だった次第です、はい。

◇◇

 どうにか早期に筋肉痛から解放され、仕事に復帰できたルービアスとウルムナギ又5人娘。
 そのおかげで、コンビニおもてなし5号店は、東西両店ともに問題なく営業することが出来ました。

 その両店で販売した筋肉痛治療薬のおかげで、街の人々の大半も筋肉痛から解放されまして、こうしてナカンコンベ大運動会は本当の意味で幕を閉じた次第でございます。

 ただ1人

「……何事においてもパルマ一のこの俺が、クスリに頼るわけにはいかないんだ」
 黒い帽子に黒いジャケット、黒いズボンの男性が、そんな事を言いながら、白いギターを杖代わりにしてよたよたと街道を歩いていたのが、例外と言えば例外といいますか……
 このクスリを飲めばズバッと解決するというのに……なかなか難儀な方です、はい。

◇◇

 ドンタコスゥコ商会チームが優勝した今回のナカンコンベ大運動会ですが……

 2位は、僕達コンビニおもてなしチームでした。

 他にも、
 4位にルア工房チーム
 10位にエラネラさん率いる風俗街チーム

 そんな方々が入賞していた次第です。

 大小あわせて50近いチームが参加して盛大に行われたこの大会ですけど、選手として参加したパラナミオなんかは、
「来年はもっといっぱい出場して、もっとたくさん一等賞をとりますよ!」
 そう言いながら、リョータやアルト、ムツキ、アルカちゃん達と一緒に早速かけっこの特訓をしていました。

 さすがに子供達は筋肉痛知らずといいますか、元気満々な様子だったわけです。

 そんな子供達が着ている服も、サラマンダーのために体内温度が高いパラナミオは例外として、他のみんなは揃って長袖長ズボンをはいています。
 そろそろ肌寒くなってきているんですよね。

 コンビニおもてなしでも、冬に向けたキャンペーンや新商品の準備を始めないといけないな……

 コンビニおもてなし本店の裏にあります、巨木の家の前を元気に走っている子供達を見つめながら、僕はそんなことを考えていた次第です。

 ……あ、そういえば……もうひとつ対応を考えないといけないことが出来ていたのでした。
 
 運動会が終わった後、ヤルメキスが恥ずかしそうに言ってきたのですが、
「あ、あ、あ、あのですね店長様……そ、そ、その……わ、私ヤルメキス……ど、ど、ど、どうやら赤ちゃんを身籠もったようでごじゃりまして……」

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