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薗原ダム(群馬・沼田市)

 
挿絵



華厳の滝で改めて恐怖体験を実感した明るい肝試しのメンバーは次の肝試しを行う群馬県沼田市内にある薗原ダムに向けて車を走らせていた。宿泊先の沼田市内のビジネスホテルに着くまでに、甲州が次回予告を行うために公式のTikTokで次の明るい肝試しを行う心霊スポットをライブ配信で発表した。

「明るい肝試しの公式TikTokをご覧の皆さん、甲州です!本日1月3日の栃木県の心霊スポットで明るい肝試しを行いましたがいかがでしたか?午前中におしらじの滝に伺い、午後は日本三大名瀑の一つである華厳の滝へ向かい、肝試しを実施しました。おっと日本三大名瀑について説明していませんでしたね。日本三大名瀑とはわたしたちが検証した華厳の滝、和歌山の那智の滝、茨城の袋田の滝とあります。話は変わりますが、次回1月4日は群馬県の心霊スポットで明るい肝試しを行います。場所は沼田市内にある薗原ダムで実施します。ライブ配信はいつもと同じ朝の9時から配信したいと思っていますので、また見て頂いたらうれしいなと思います。」

甲州がにこやかな笑顔で宣伝すると、隣にいた斧落もカメラに向かって「見てね!」とにこにことした笑顔で両手を使ってバイバイしたところで配信が終わった。

一同は沼田市内のビジネスホテルに宿泊すると、後藤が持参してきたノートパソコンでライブ配信された動画の編集作業を行っている最中にある異変が生じていることに気付き急遽後藤のいる部屋に全員を呼び出し始めた。

後藤が「休んでいるのに急で申し訳ない。説明のし難い出来事が起きた。編集したものを動画で改めて配信はしたんだけど、編集前のこのシーンを見てほしい。まさに油井が男の呻き声がしたと言ったときに、フェンスの向こう側から俺達は声が聞こえて立ち止まったのは俺達もその場で確認した。だけど霊視はしたのか?」と油井に訊ねると、油井は「いや声を確認しただけで多分その辺にいるんだろうなという感覚ですぐその場で霊視は行わなかった。」といって返事すると、後藤は「油井の背後に顔がぐっちゃりと潰れた男が写っているよ。これはあまりにも生々しすぎて公開できないと思ったが、ライブ配信を見た人は”油井君の後ろ、やばいものが写っている”という声が相次いだというのもあって公開せざるを得なかった。きっと顔面から叩きつけられるように落ちたから損傷が激しかったのだろう。俺が女の呻き声が聞こえたと説明した時でも、そのとき畑の持つカメラが俺を映したんだけど、そのときも右肩辺りに女の顔が覗き込むようにして写り込んでいた。俺と油井、やばいかもしれない。」と解説すると、油井は「やばいって何なんだよ!どういうことだよ!奴らは地縛霊で憑いてくる危険性なんてないんだろ!だったら何も皆を呼び出す必要なんてないはず!大袈裟すぎるんだよ!」と強く抵抗を示すと、後藤は「最後の神社で御参りするところなんだけど、カメラには写ってはいないが霊視をしたら俺達を囲むように自殺者の霊達が取り囲っていた。あのときの呻き声、足跡、威嚇なんかじゃない。俺達を次の自殺者のターゲットとして狙われていたのかもしれない。地縛霊とはいえ、霊達の呪いが憑き纏う危険性だって大いにある。俺と油井は早急に霊能者による御祓いを受けなければいけない。」と答えると、油井は「何それ?藤村操が悪霊と化し世の中に禍を齎しているとでも言いたいのか?」と話すと、後藤は「藤村操があそこで死んだのと俺達に憑き纏う霊は全くの別物のはずだ!藤村の霊は成仏しているはずだ、遺書など残す冷静さがあるのだからね。あそこで彷徨う霊達の大方は衝動的な自殺によりこの世を去った方達なのだろう。藤村の死に影響を受けた、それだけで嫌気がさして死んだ方も中にはいるかもしれないが、藤村の霊自身があの地の霊達のリーダー的な立場ではない。もっと世の中に対して邪心や邪念っていうのか、禍を齎すことを目的とした悪い霊があそこにはいたのかもしれない。だとしたら俺達は自分たちでは対処できないレッドゾーンに足を踏み入れたことになる。」と話すと、二人のやり取りをじっと聞いて居た村田が「仕方がない。心霊スポットで肝試しを行う事、その行為が霊達にとっては安らかな眠りを妨げる行為そのものだからね。霊達にとっては墓場同然なのだから、怒りを買われてもしょうがない。それに御祓いの方法だって何も霊能者のところへ行く必要などない。ネットサーフィンすれば御祓いが出来る方法など検索を擦ればいくらでも出てくる。緊急性を要すなら今すぐその場で御祓いを行おう。」と切り出すと、後藤と油井をベッドの端の真ん中の部分に座らせると、村田と秩父と杉沢村が御祓いのやり方などネットで見た情報を頼りに実施するのだった。

手順通りに御祓いが終わったところで、油井は「さっきのやり方で果たして御祓いが無事成功って言えるものなのか?抜けたとも何とも感じなかったけどな。」と話すと杉沢村が「一応ね、簡易的な御祓いは出来た。明日の薗原ダムも無事終わると思う。だから今日のところは解散して明日に向けて問題なく明るい時間帯の肝試しも行えるだろう。」と二人に対して説明を行ったところで、その場で解散することにした。

一夜が明け、1月4日(日)の朝を迎えた。

朝の9時からの生配信を行うために慌しくバタバタと朝食を取り終え、8時過ぎにはホテルをチェックアウトをすると薗原ダムへと向けて出発した。向かう道中に、”明るい肝試し”の動画に寄せられているコメントの中で匿名希望のユーザーによる書き込みを見た油井が「何これ!?ああ!?」と声を荒げて苦言を呈すと、後藤が思わず「どうかした?何かあった?」と心配になって声をかけると、油井ははっと我に返って「俺達の投稿した動画にこんな書き込みがあった。

”匿名希望ですが一応霊能者をしています。今の霊感の強いあなた達の行動はその場にいる霊達にとっては格好の餌食になることは間違いないでしょう。とりわけ邪念や邪心を持った邪霊というもの、悪い心を持ち生者に禍を齎そうとする悪霊は、霊的エネルギーの強いあなたたちを間違いなくターゲットにしてくると思います。いまのあなたたちにはそんな御霊達に対して対抗できる術を持たないと闇の世界に引き摺り込まれることは大いに予想されると思います。それがもし出来ないようならば、今のメンバーで肝試しなど行わないほうが良いと断言できます。これは霊能力者として忠告します。いまのあなた達が行っている行為は、火の海に自ら飛び込むのと同じ行為です。御祓いできる能力を早急に持つべきです。S・A”

油井が読み上げた内容に村田が「あ~はいはい。霊能力者としての忠告な。んなもんは起こり得るかもしれませんって忠告しているだけに過ぎないわけで、絶対に禍がもたらす可能性があるとは言い切れいないからな。そんな指摘は無視しておけ。」と油井に対して話すと、イニシャルを聞いた斧落が「油井君、村田君。まさかと思うけどさ、わたしたちが今までの動画で批判してきたあの饗庭兄弟がわたしたちの動画を見てわたしたちが饗庭兄弟の活動について批難したから指摘した可能性があるよ。今は景観としての仕事が忙しいから頻繁に霊能者として活動していないけど、お兄さんのほうってイニシャル的に考えたらS・Aだと思うよ、セイヤ・アイバ。」と話すと、油井が斧落を見ながら「んなもん仮にもし兄の星弥のほうなら堂々と名乗るだろ。何も最後の最後でイニシャルを使うようなことをするとは思えんけどな。」と話すと、斧落の言葉を聞いた甲州は「わたしも何だかそんな予感がしてきた。名乗らず、あえて”誰か分かるだろ”と勘づかせるためにもそういう書きこみをしてきたのかもしれないよ。」と話すと、油井は「投稿したのが侑斗だろうが星弥だろうが、あんな地方公務員の霊能者兄弟なんかよりも俺達のほうが御祓いできる力はなくとも身近で頼れる存在だろ!あんな饗庭兄弟なんて地方公務員で暇つぶしに霊能者としての活動をやってるに過ぎない、金稼ぎにならないならないといっているけど絶対あいつらはがっつりとお金を稼いでいるに決まっている。俺はそんな隠れ富裕層の霊能者に負けたくないし、指摘を受けたとしても俺は絶対に聞き入れたりしない!皆、もしこのような書き込みがあったとしても絶対無視するんだぞ!監督も俺がいまさっき説明をしたことに理解できるよね!?な!?」と話すと杉沢村は「相手は警察官と市役所職員なんだぞ。敵に回して良いのと悪いのがあると思うんだけどな、あんまり饗庭兄弟だとしても刺激し過ぎずにアドバイスをもらう関係ぐらいは築いたほうが良いんじゃないのかな。」と自分なりの意見を語ると、油井は納得できなかったのか「何で!?あいつらの弟子にでもなれというのか!?俺は絶対ならないからな!」と反論すると、秩父が「饗庭兄弟のほうが俺達よりもキャリアはあるんだし、言う事は筋が通っている。仮にそうなら従うしかないんじゃないのか。俺達も何だかんだ饗庭兄弟のやり方について文句を言っていたけど、でも俺達の指摘が彼らの耳に入った可能性だってあるわけだし、彼らだって俺達が言い放った悪口に対して文句も言わず心配をしてくれているのならこれ以上何も言うことが出来ない。」と説得するように話すと、一同の乗る車は薗原ダム駐車場に到着すると車を駐車させ堰堤がある方向へと徒歩で移動し目的地にたどり着いたと同時に時刻が8時55分になったのを確認してからYouTubeとニコニコ動画で”明るい肝試し”のライブ配信を始めた。

村田が畑の持つカメラを前に意気揚々とリポートを開始する。

「明るい肝試しをご覧の皆さん!おはようございます!!リポーターを務める怪談蒐集家の村田岩熊と、企画兼リポーターの油井活魚の二人で、群馬県を代表すると言っても過言ではない薗原ダムへとやってきました!僕の隣にいる油井は早速ビビっているのか、さっきからじっと黙り込んでいる~!何か喋れよ~油井~!!」

村田の問いかけに油井は笑いながら「おい!おい!俺はそんなことではビビらないぞ~!心霊スポットにおいては百戦錬磨を誇る油井活魚に敵など存在しない!」と言い切ると、それを聞いた村田は「大型トラックのドライバーだった時、確か運行指示書の約束事項に綴られてあったよね、”自分の体重より重たいものは持ちません”って。それと比較したら、荷物より幽霊のほうが百戦錬磨ってこと!?」と語ると、それを聞いた油井は「”自分の体重より重たいものは持ちません”じゃなくて”過積載になるようなことはしません”だよ!女子が言いそうな弱音みたいなこと、指示書の約束事項に書いているわけねえじゃん!」と話すと、村田は「わかっている、わかっている。笑いをとったところで薗原ダムに纏わる怖い話をしよう。」と切り出したところで村田が薗原ダムの怪談話をし始めた。

「群馬を代表すると言っても過言ではない薗原ダムは心霊スポットとして選ばれる要素が全て揃っている、北関東においては最恐を誇るダムの一つです。まずはダム工事の際に11名の方が殉職されたそうだが、その亡くなられた方を弔うための慰霊碑を写真撮影するとなぜか女性の霊が写り込む、そしてこれから僕達が向かおうとしている大庭隧道では”こんな霊を見た”という目撃情報こそはないものの不気味な雰囲気を醸し出していると言われている。さらに大庭隧道を見終えた後に、我々は歩いて薗原橋というところにも足を運ぼうと思っている。ここも多くのオカルト番組で取り上げられる有名な心霊スポットで、かつてはもっと谷の下にありアスファルトで舗装された今の吊り橋とは全く異なり、揺れが激しかったために通行する人や家畜が落ちて亡くなったという話があるように人の霊のみならず、動物霊すら目撃されている。今回我々はトンネルに霊がいるのかいないのかの検証から始まり、慰霊碑、薗原橋と霊感の強い俺達ならではの肝試しを実施したいと思っている。それでは長時間のお付き合いになるが、皆さんどうか見飽きず最後まで俺達のライブ実況を見て頂けたら嬉しいので、そこんところ宜しくね~!」

村田が笑顔で手を振りながら話すと油井も「最後まで見てね~!」と笑顔で手を振ったところで二人は大庭隧道の入り口へと向けて歩き始めた。

大庭隧道の前に二人が辿り着いたところで、油井が村田に対して「何だかこの中、凄くひんやりとした空気を感じるが、何かいる。そんな気はしないか?」と聞き始めると、村田も油井と同じことを感じ取ったのか「俺も何かいるような気がすると思ったんだ。何かあるのかもしれない。まずは出口を目指して歩こうか。」と切り出したところで二人は大庭隧道の中へと入っていく。

歩きながら油井は「心霊スポットの割にはトンネル内の落書きが少ない。ここは新しくリニューアルされたばかりなのだろうか?それにしても異様な寒気が走ってきた。この道幅じゃ車が一台通れるぐらいだろうし、離合は出来ないだろうな。それに一方通行にする必要性があるにもかかわらず信号機で交通整理している様子すらない。」と語ると、村田は「ここは今も車が通るトンネルのようだけど、何かが彷徨っていることは間違いない。ここで事故死された方なのだろうか。微弱ながら霊の存在をキャッチすることは出来た。」と油井に対して話すと後ろを歩く斧落と甲州と杉沢村に対して気になったポイントを撮影するようにお願いしたところで写真を撮り始めた。トンネルの出口にまで出ると再度トンネル内で変化は起こらないかも確認のために再度トンネルの中に入り、入ってきた入り口のところにまで戻ってきた。

一同が堰堤を歩きながらトンネル内で写真撮影を行った箇所が気になり、早速ポラロイドカメラとチェキで撮影した写真を斧落と甲州が恐る恐る確認をし始めると、写真では決して映し出されないある異変が生じていることに気付くと油井と村田に対して早速検証を行うべきだと主張した。

「油井君、村田君。見てほしい。トンネルの中腹部を撮影したものだけど、白い靄のようなものは何?トンネル内には霧なんて発生はしていなかった。ましてやカメラのフラッシュによる反射にしてもこんな煙のような写り方はしない。」

斧落が油井と村田に対して説明すると、先頭を歩く油井は斧落に対して淡々とした口調で「それだけ多くの幽霊が彷徨っているという証拠だよ。調べてみると、自殺の名所としても知られているみたいだしね。この十数年、判明しているだけでも20名近くの方が自らの命を絶っているのだからね。そういった霊達が最後に訪れたこの地で現れても何ら不思議ではない。まあ今回は薗原橋から大庭隧道の間のハイキングコースのような道も検証はしたかったところだけど、住民がいるのも含め潜入することも出来ない。かたやかつてツーリングイン沼田という心霊廃墟も話題になったが、今はすっかり建物は取り壊されソーラーパネルに生まれ変わっているのだから今回は慰霊碑と薗原橋を見て検証を行うぐらいのことしか出来ない。そう話しているうちに慰霊碑らしきものが見えてきたな。これが噂される女性の霊が写り込むとされる慰霊碑じゃないのかな。3台のカメラを用意して早速写真撮影しようぜ。」と話すと甲州は「何ら問題はなくとも、少なくとも華厳の滝のときからわたしたち何かおかしいよ。」と不安げに語りだすと、村田は「大丈夫だって。何かあれば俺達がググってでも御祓いを実施してあげる。それに俺達ずっとこうして明るい時間帯に肝試しを行うって活動を6年間も続けてきたじゃないか。怯えることなんてもう今更ないはずだろ。あの饗庭が投稿したかもしれないコメントが気がかりならもうそのことは忘れたほうが良いだろう。俺達は自殺の名所であり、また同時に工事中の殉職者を出した場所に訪れているのだから、気を強くしっかりと保たないとこの地に渦巻く闇に飲み込まれてしまうだけだ。不安要素は払拭するべきだ。」と説得すると、甲州は吹っ切れたのか納得のいかぬ表情ではあったが「わかった。気持ち切り替えて慰霊碑の写真を行う。」と話すと斧落、杉沢村の3人で慰霊碑の写真撮影を行った。

写真に異変が生じていないかすぐその場で確認をしたが、やはりここでもポラロイドカメラとチェキに女性の顔のようなものが写り込む写真が撮れたことに、村田は杉沢村に対して「デジタル一眼レフカメラはどうだった?変化は起きていないのか?」と聞き始めると、杉沢村は「いや。こっちは何も変化が起きていない。トンネル内もこんな感じ。若干フラッシュが眩しすぎて靄のようにも見える、それぐらいの変化しか起きていないし、慰霊碑を写したときだって何ら変化は起きていない。たださっきからおかしなことが起きている。」と語ると、油井は「おかしなことって何?」と単刀直入に聞き始めると、杉沢村は「慰霊碑には人なんていないはずなんだ。ところが顔認証のセンサーが反応を示すんだ。」と話すと、一同に対して見せびらかすようにカメラが誰もいない場所なのに顔認証が反応する様子を見せると、言葉にならぬ思いでただただ立ち尽くすばかりだった。

暫くの間ずっと沈黙になっていくと、このままではまずいと勘づいた油井は杉沢村に「霊がいるのは間違いない。ただ確信をもって、こんな霊が出ますよってことは今のところまだ断言が出来ない。殉職された方の霊の可能性だって捨てきれないのだからね。一先ず薗原橋まで行ってそこでも検証を行わないと、なぜここで頻繁に心霊現象が起こっているのか、YouTubeとニコニコ動画を見て下さっている人たちに対して説明のしようがない。結局俺達も心霊現象を体験しましたでは、見ている人が納得しない。俺達には霊感が強いメンバーで構成されているのだから、俺達は俺達で思うことを正式に発表したい。まずはここから離れよう。ここから薗原橋は歩くには距離があるから車で付近の薗原湖多目的広場の駐車場に駐車をしてからそこから徒歩で薗原橋を歩いて検証しよう。」と切り出すと、杉沢村は斧落と甲州のことが心配になったのか「むっちゃんとメイサちゃんは大丈夫か。無理だったらリタイアをしても構わないよ。」と話すと、斧落は甲州の表情をみて「わたしたちは大丈夫。最後まで一緒についていく。」と明言し、甲州も黙ってうなずいた。一同は慰霊碑を前に手を合わせ拝むと、その場を後にすることにした。

再び車に乗り込み、多目的広場の駐車場に到着して車を駐車させてから薗原橋のある方向へと向け歩き始めると、ついに薗原橋と掲げられたプレートのある吊橋の前までやってきた。午前中の明るい時間帯であるにも関わらず”いかにも出てきそうな”雰囲気を醸し出しているのを見た村田は油井に対して「ここは間違いなく出る。気配を強く感じるんだ。」と話すと、油井も「俺も感じた。」と一言いい残すと、油井のほうから先に薗原橋を渡り始めると村田も後を追うようについてゆく。

吊橋の真ん中に近づいたときに、改めて橋の下が気になり油井はじっと眺めてみることにした。その様子を村田が「どうした?何かあった?」と訊ねると、油井は「いやこれといって特に。ただこの下は何もないはずなのに、俺達以外の気配を強く感じてならないんだ。何かあるはずなんだ。」と話すと、油井は大きな声で叫び始めた。

「いるんだろ!?そこにいるのはわかっている!隠れていないで出てこい!!」

油井がまるで挑発のような発言をした直後だった。

秩父がただならぬ気配を感じ取ったのか、隣にいる後藤に対して「怒らせたかもしれない。続行は不可能だ。中止しなければいけないだろう。」と言い始めた途端に、その場にいた”明るい肝試し”のメンバーの誰一人も発していない言葉が聞こえ始めた。

「で・・・て・・・い・・・け・・・」

それは今にも声を出すのが必死なような口調で助けを求めているようにも感じ取れた。無論その声は油井と村田の耳にも聞こえたが、不審な声が聞こえただけでは中止の理由にならないと判断したのか二人はさらに橋の奥へと歩き進んでゆく。

その一方、先程の謎の声が気がかりだった畑が油井と村田に対して「さっきの声なんだけどさ、やっぱりもう辞めたほうが良いんじゃないのか?」と強く説得すると村田は「油井に同情するわけではないが、先程聞こえたあの声の主が何なのかを突き止める必要がある。薗原橋を往復して検証する必要性はあるだろ。少なくともあの先までは行かない。検証を行えば午後から検証を行うはねたき橋での検証が出来なくなるだろ。もう時間だって11時を回っているんだし、12時には終わらせよう。」と提案すると、再び謎の声が聞こえ始めるのだった。

「あああ・・・ああああ・・・・あああああ・・・・」

その声はまるで女性の呻き声のようにも聞こえたが、叫び声のようにも感じ取れた。

異変はそれだけに収まらず、今度は動物などその場に何もいないはずなのに、家畜小屋にいるような獣臭い臭いが明るい肝試しメンバーを包むかのように、臭いだけが漂い始めた。更には甲州の足元を誰も掴んでなどいないのに甲州の足元をギュッと掴み始め、甲州が思わず大きな声で悲鳴を上げた後にその場にいる一同に対して「足を掴まれた、橋の下から足を掴まれた!ドライアイスのような、とても冷たかった、生きている人間なんかじゃない。」と大きな声を上げた。これ以上いては危険だと察知した杉沢村は油井と村田に「橋の出口まで来たんだから、調査はここまでにしよう。説明が出来ないことが続けて起きているだけでも視聴者はゾッとすること間違いないからね。よってもうこれ以上の薗原ダムでの肝試し撮影は中止だ。次の肝試しスポットへと移動しよう。」と呼びかけると、油井も「そうだな。腑に落ちない点はあるが、何か良からぬものを感じた。」と話すと、その言葉を聞いた村田は「あまり歓迎されていないってことだろ。少なくとも出て行けって言われたときに俺達は退散するべきだったんだろうな。」と納得したところで一同は薗原橋を後にし、車を駐車させた駐車場へと戻ったところでライブ配信を終了させた。

甲州は恐怖のあまりに震えが止まらぬ状態で、たまらず杉沢村がスマホのワード検索で誰にでもできる御祓い方法を見ながら行ったところで甲州は安心したのかすっと車に戻ったところで、次の目的地があるみどり市へと向けて車を走らせる。

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