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69章 治療

 サクラの母親のいる部屋についた。

 顔色は蒼ざめており、額からは汗がにじみ出ていた。危篤とまではいかないものの、状態はかなり悪いといっていい。宿泊費をタダにした穴埋めをするために、無理をしたと思われる。時給800ゴールドくらいの街で、500万ゴールドを稼ぐのは大変だ。

 アカネは回復魔法をかける。いつも以上に助かってほしい思いが強かった。

 治癒魔法がきいたのか、身体がかすかに動いた。その後、ゆっくりと目を開ける。

「アカネさん・・・・・・」

「身体はだいじょうぶですか?」

「はい、おかげさまで元気になりました」

「宿泊費を無料にするから、身体を壊してしまうんです」

 アカネは無料になっていた、宿泊費を取り出す。

「あのときの宿泊代です。サクラちゃんのためにも、きっちりと受け取ってください」

 前回は断ったものの、今回は素直に受け取っていた。

「ありがとうございます。アカネさんのおかげで、一週間くらいは休みを取れそうです」

「少しくらいは休んだ方がいいですよ。働いてばかりでは、身体を壊してしまいます」

「私たちは給料が少ないので、無理をしなければ生活できないんです」

 最低時給でこきつかわれている、非正規社員よりも待遇が悪い。奴隷制度の下で働いているかのようだ。

 充分な休みを取ってもらうためには、充分なお金が必要となる。アカネは1000万ゴールドを渡
そうかなと思った。住民にとっては大金であっても、アカネに子供のお駄賃だった。

「サクラちゃんのためにも、しっかりと生きてくださいね」

 サクラの母親は、1000万ゴールドを大切に抱きしめていた。

「ありがとうございます」

 サクラの母親は眠っていたため、昇給の話を知らないと思われる。アカネはその話を伝えることにした。

「マツリさんから聞きましたけど、全住民が昇給するみたいです。これまでのように無理をする必要はないですよ」

 アカネが仕事を続けることによって、1500ゴールドくらいは増えるのではなかろうか。最低時給で働いていたとしても、2000ゴールドは受け取れることになる。

「アカネさんが一人いるだけで、セカンドライフの街の住民は救われます。本当にありがとうございます」

 ミライ、発掘屋の女性、サクラの母を見ていて、このままではいけないと思った。アカネは地雷報酬の一部を、住民のために寄付することに決めた。

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