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 第19話  【エリスの目的】

 世界最強の兵器はここに!?19


 著者:pirafu doria
 作画:pirafu doria


 第19話
 【エリスの目的】




「なんだよ? あのぼろっちー馬車を壊したことを起こってんのか?」



「ブハッー! それなら謝るぜ。姫様とあの動物どもを引き離すためにやったんだからな」



 二人の盗賊はオルガの肩を叩き、そのまま通り過ぎようとする。しかし、オルガは鎌を取り出しそれを止めた。



「だから今、お前たちに仕返しをする」



「ブハッー! 俺たちは忙しいんだよ! 後にしやがれ!」



「そうはいかないんだよ。今だ!」



 オルガはそう言うと、ベアトリスを後ろに下がらせた。



「姫様を守ろうってのか? あのジジイがやられるのを見てただろ? 素人にゃ〜分からねーかもだが、あのジジイはそれなりに強いんだ。それを倒した俺たちにてめーが何ができる?」



 オルガは鎌をくるくると回した後、2人の盗賊に刃を向ける。



「なら、お前らが分かってないことを教えてやろうか。お前らよりも俺の方が何倍も強い」



「ブハッー! 何言ってんだ! 俺たちの方が強いに決まってんだろ!」



 盗賊のアプーとミニバンは標的をオルガに変える。そして手にした魔法の短剣をオルガに向けた。



 その間にベアトリスはふらつくパルムスに肩を貸そうとするが、パルムスはそれを首を振って拒否する。そしてパルムスは持っていた剣をベアトリスに渡し、囚われた動物たちを解放するように促す。



 ベアトリスは剣を手に動物を包む縄を切りにいく。



「ブハッー! おい、動物が解放されちまうぞ!」



「そうだな。パルムスも厄介だが、あいつらも厄介と聞く。急いでコイツを片付けるぞ!」



「ブハッー! 了解!!」



 アプーとミニバンは左右に分かれ、オルガを挟むような態勢になる。



「ブハッー! 俺たちに抵抗してこと、後悔させてやるぜ!」



 最初にアプーが切り込んでくる。それに続くようにミニバンもオルガを挟み込む。
 オルガは空中にいくつか結界を作ると、その上に飛び乗り、階段のようにして空へと逃げる。



「なに!?」



「どういうことだ? なんだあの魔法は!?」



 オルガはそのまま空中を跳び回った後、鎌を回しながら、二人を適当に攻撃する。



 オルガは鎌を大振りに回し、二人の様子を見るような簡単なな攻撃をしているが、それでもアプーとミニバンは苦戦しているようだ。



「おいおい、この程度か?」



「う、うるせー!」



「ブハッー! なめんじゃねーよ!」



 アプーとミニバンはそう言うと、鎌のリーチ的にオルガに攻撃を当てることができないと思ったようで行動を変えた。
 狙い始めたのはオルガの持つ鎌。しかしそれは釜を破壊するなどが目的ではない。単に鎌を探検とぶつけようとしてくるのだ。



 二人はオルガの攻撃に押されながらも、地道に釜に短剣をぶつけていく。そしてある程度それが繰り返されている最中。パルムスがオルガに叫んだ。



「だめだ! その武器に触れてはいかん!」



 しかし、それを聞いたアプーとミニバンは笑う。



「もう遅い!」



「ブハッー! そう! これだけ魔力を吸い取れば、動くことはできないだろ!」



 二人は自信満々にオルガを睨む。しかし、オルガは平然と立っていた。



「魔力? そんなものは一欠片も吸われちゃいない」



 それを聞いた二人は驚きの顔を浮かべ、そして自身の見る短剣を見る。
 しかし、その短剣にはオルガに攻撃を仕掛ける前と同じ程度の魔力しかなかった。




「な、なぜだ!!」



「そんなものネタは分かっていた。だから防御させてもらったぜ」



 オルガは手のひらに小さな結界魔法を作り出す。



「そ、そんなものがなんだって言うんだ?」



 アプーとミニバンは理解できていないようだ。しかし、戦いを見ていたパルムスはふと気づく。



「そうか。結界魔法でガードしていたと言うことか!」




「そう。その魔法の武器。それは魔力を吸い取るんだろ。だが、魔力を吸い取るためには条件がある、それは……」




 オルガは二人に鎌を向ける。



「吸い取る対象に触れること。それは対象自身じゃなくても構わない。衣服、武器からでも可能となる」



 それを聞いていたアプーとミニバンは不満そうな顔をする。



「ブハッー! そうさ。そしてテメーはカマで俺たちの攻撃を防いだ! なのになぜ魔力を吸われねー!」



 そんな二人にオルガは結界を見せるが、二人は首を傾げる。その様子を見ていたパルムスが口を開く。



「結界魔法で防いだということか」



「そう言うことだ」



 オルガは鎌と剣がぶつかる瞬間、その一瞬だけその場に小さな結界魔法を作り、それで直接武器がぶつかり合うことを防いでいたのだ。



「だが、それができるとしたら、かなりの魔法計算力か、固有魔法のみ……お主は一体……」



 パルムスはオルガに疑問の眼差しを送る。しかし、オルガはそれに応えることはない。



「こ、これはヤバいか?」



「ブハッー! まだだ! まだこっちにはパルムスから吸った魔力がある。そいつを使えば、このヤローもやれるはずだ!!」



 そう言い二人は剣を構え、パルムスから吸った魔力を剣に集中させる。



「ブハッー!」



「くらえやー!」



 二人は魔力の満ちた短剣でオルガに剣を振り下ろす。しかし、オルガはそれを悠々と躱し続ける。オルガは鎌でガードすることも、結界で防ぐこともしない。それなのに二人の攻撃は全くオルガに当たる気配がない。



「な、なぜだ。なぜ、当たらない!」



「どれだけ強力な武器を持とうと、持ち主がそれに見合った実力がなければ、その武器は本当の価値を発揮できない」



 そして躱し続けていたオルガは鎌で軽く二人の頭を叩く。



「痛い!」



「ブハッーっ!?」



 二人は頭を抱えその場に蹲る。



「お前らは殺す価値もない。さっさと帰な」



 オルガはそう言うと、ひっそりのパルムス達には見えないように、仮面を外してアプーとミニバンにのみ骸骨の顔を見せた。



 それを見た二人の顔は青くなり、武器を持つとそそくさと逃げていく。




「こ、こいつは敵わねー!」



「ブハッー! 逃げろ!!」



 背を向けて逃げる二人。そんな二人の前に一人の少女と動物たちが立ち塞がった。



「待ちなさい! あなた達!!」



 阻まれた二人は足を止める。



「今回は勘弁してやる!」



「ブハッー! そうだ! 次こそは……」



 そう言いかけた時、ベアトリスの顔を見て二人は固まった。



「次……そう。そんなこと私が許すと思う……」



 ベアトリスの前に動物達が牙や爪を輝かして立ち塞がる。



「この可愛らしい私を誘拐したくなる気持ちは分かるわ。でもね。私の大事なこの子達にまた手をあげると言うのならば、そうしたいと思わないくらい。ボコボコになりなさい!!」



 動物たちが一斉に二人に襲いかかる。



 そんな様子をオルガは何もできずに見守る。



 二人の抵抗はしているが、あの動物達に手も足も出ないようだ。しかし、それが少しオルガにとっては不思議でもあった。



 魔力が少し回復したのか、パルムスがオルガの横へと歩いてきた。



「あの動物達。彼らは小さい時群れを追い出された動物なんじゃ」



 多くのモンスターの蔓延るこの世界。この世界で野生の動物が生き抜くためには群れというのものがとても重要視される。
 群れを成し、危険をさせ、生き残る。それがより強力な力を持ったモンスターから身を守る術。



 動物もまた人間と同じで魔力を持って生まれてくる。
 しかし、時折その中でも飛び切り高い魔力を持ったものが生まれることがある。
 だが、その個体はよく群れから外される。その理由はより多くの魔力の使える動物は、多くの魔素を放つからだ。モンスターは魔素を好み襲ってくる。そのためそのような個体は群れから追い出されてしまうのだ。



「そんな動物達をベアトリス様は看病し、連れてくる。もしかしたら、自分と重ねているのかもしれない」



 パルムスはそう言うと、剣を握り彼らの元へと行く。



「さぁ、お前たち!! もう二度と来るなよ! また来たらこの程度では済まないからな!」



 パルムスの言葉にアプーとミニバンは背筋を伸ばして怯える。



「はい!!」



「ほら行け!」



 パルムスが二人の盗賊を追い出す。とはいえ、あのまま動物たちにやられ続けていたら、あの盗賊たちが死んでいたかもしれない。そのため助けたとも言える。
 それだけ強い動物たちなのだ。そしてそれと仲良く接するベアトリスも特別な存在なのかもしれない。



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 騒ぎも収まり、オルガは壊れた馬車と荷物の下へと行く。
 盗賊たちがベアトリスと動物を引き剥がすために荷物は燃やされた。このことをどうパトに説明したら良いだろうか。そのように悩んでいると、ベアトリスがいつの間にかオルガの隣に立っており、喋りかけてきた。



「まぁ、これくらい。弁償してあげても良いわよ」



「え?」



「王族の私からすればあの程度の魔道具なんて安いものなのよ。……それにあなたのおかげで助けられたことだし……」



 ベアトリスはそう言うと、オルガに馬車に積んでいた荷物を聞いてくる。しかし、オルガにとってそれ以上に気になることがあった。




「そういえば今? 王族って言った?」



「あなた前でしょ。私はオーボエ王国第二皇女ベアトリス・フェリスなのよ」



「……」






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 久しぶりの王立魔法学園。シーヴに連行され学校に来ることになってしまったエリスであった。



「さぁ! エリス先輩、授業を受けましょう!!」



「受ける必要なんてないよ。私全部分かってるし……」



「いや、でも出席日数が!!」



「それも問題ない。校外学習ってことにしてもらってるから」



「…………」



 エリスが淡々と断っていくと、だんだんシーヴの視線が下へ向いていく。



 シーヴはエリスにとって一つ下の後輩。学年が違うため受ける授業が重なることはほぼないのだが、出会う度に寄ってくる。
 入学の際に色々あったし、その時に好かれてしまったのだろうか。



 エリスが一緒に授業を受けてくれないと知ったシーヴは明らかに落ち込む。流石にその様子を見て罪悪感に駆られたエリスは、一つだけ授業を一緒に受けても良いと伝える。すると、シーヴは飛び上がるように喜ぶ。



 シーヴもエリスと同じ特待生の生徒だ。真面目で堅物。勉強が友達のような人間だ。
 そんな彼が子供のようにはしゃいでいるんだ。少しは真面目に受けてやろうと思うエリスであった。



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 授業を受けていると、周りからの目線が気になる。
 隣に成績優秀なイケメン後輩のシーヴごいるのが一つの原因かもしれないが、それ以上に私がいるのが問題なのだろう。



 エリスは周りをキョロキョロと見渡す。それを見たシーヴがエリスの耳元で話す。



「どうしたんですか?」



「ん、視線がね」



「まぁ、エリス先輩がいること自体、珍しいですからね……」



 まぁ、なんとなく知ってはいた。
 自分で言うのもどうかと思うが、天才魔法使いと言われる人間と一緒に授業を受けているのだ。それは気にならないはずはないよね。



 エリスはまわりに注目されていることになんだか嬉しく感じる。
 自分の力が認められてる。そう感じるからだろうか。





 授業を終えた後、エリスはシーヴと別れある教室へと向かっていた。
 本来ならもう少し経ってたら来る予定だったが、少し早くなってしまった。しかし、それでも……。



 扉を開けると、ドーナツ状のテーブルに先生たちが集まって座っていた。



「え、エリスくん……早かったね」



 エリスがやってきたことに気づき、先生たちの顔色が一気に変わった。



「そうですね。アスパル先生」



「さ、さぁ、こちらの椅子にどうぞ」



 扉に一番近い席に座っていたアスパル先生が立ち上がり、エリスに席を譲る。



「ありがとうございます」



 エリスは譲られた椅子に遠慮なく座る。そして腕を組み先生たちを睨みつける。



「それで例の件はうまく進んでいますか?」



 エリスのその言葉に先生たちは肩を震わせる。そして怯えたアスパル先生が答える。



「そ、それがまだ……」



「そう、なら早くしてちょうだい。私がこの学校にどれだけ貢献してる思ってるの?」



 先生たちの額からは多くの汗が流れ落ちる。



「私は真実が知りたいの。そのためにも…………」







しおり