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 ライラはそっと、ノートを閉じた。今夜はここまでにしておこうと思った。思いついたことに思考を持っていかれて、ここまで考えてきた以上に良いものが浮かぶ気はしなかったのだ。
 閉じたノートをそっと抱く。
 リゲルのくれたもの。預けてくれた詩だけでなく、ライラに大きなことを思いつかせてくれた、きっかけ。きっとそれは、リゲルの想いがたくさん詰まった詩だからこそできたこと。
 ノートを持ち上げて、目の前に掲げて見つめて。
 そして顔を近付けて、軽くくちびるを触れさせた。
 ノートの表紙のはしっこ。星座の描かれている部分へ。
 触れた部分は勿論、リゲルの示してくれたオレンジ色の点のひとつ。
 一等星の、星の『リゲル』。
 軽くキスをしたあと、ちょっと、照れ笑いをしてしまう。間接的にリゲルに触れたような想いを抱いてしまって。こんなふうに間接的ではなく、直接触れたいと思ってしまって。
 今ならそれが叶ってしまうのだけど。
 まだ彼と交際する前。今は鏡台に眠っている、リゲルが直してくれたネックレスのオレンジ色の石にキスをしたことを思い出す。
 そのときよりずっと、ずっと彼に近付けた歓(よろこ)び。
 その夜は、ノートを枕元に置いて眠った。
 まるで彼が傍に居てくれるかのように、よく眠れた。


 そして翌日ライラが学校でしたこと。
 それは進路指導室にいくことだった。
 そこで本を探した。自分のしたいこと、それを叶えるための道が載った本を。

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