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ジャッケが奏でる狂想曲 その3

 その日の夕方遅くのことです。

 営業を終えたばかりのコンビニおもてなし本店の中にルービアスの姿がありました。

 コンビニおもてなし5号店西店の店員にして、試食マスターのルービアスです。
 ついでに付け加えておくと、ウルムナギ又歴およそ一年です。

 ルービアスは、腕組みした状態で立っています。
 そんなルービアスの前には、5人のウルムナギ又が正座して頭をさげています。

 えぇ、そうです。
 今日の日中にですね、ジャッケの大群に対しまして、
「「「ウルムナギ又に進化した私達にお任せ!」」」
 とばかりに5人でポーズを決めながらつっこんでいった、あの5人のウルムナギ又娘達です。

 そんな5人を前にして、ルービアスは眉間に深いしわを刻んだ状態で5人を見つめています。
「で? 5人もいながら、全員ジャッケに一発でやられたっていうのですか?」
「め、面目次第も」
「ございません」
「私達では相手」
「に」
「なりませんでした」
 ルービアスの言葉に、相変わらず微妙な場所で言葉を句切り、続けていくウルムナギ又5人娘。
 なんか4人目の女の子って、「に」しか言ってない気がしないでもないんですけど……

 まぁ、それは置いておいて……

 そんな5人の前で、ルービアスは
「とにもかくにも、湖の主として君臨していた私達がこのまま負けっぱなしというのは大問題なのです。明日は私も一緒に出向きますので、ジャッケにリベンジなのですよ!」
 そう言うと、右手を振り上げました。
 そんなルービアスに、正座したままのウルムナギ又5人娘は、
「わかりました!」
「ルービアス様とともに」
「明日こそ絶対」
「に」
「勝利を我らの手に!」
 そう気合いを入れていた次第です、はい。

◇◇

 で、翌日になったわけですが……

「おっきなジャッケです!」
「パラナミオお姉ちゃん、後ろにもいるよ!」
「リョータ様、それはアルカが仕留めるアル」
「では、アルトはこちらを」
「ムツキはこっちを任されたにゃしぃ!」
 川では、パラナミオを中心にした我が家の子供達がわいわい楽しそうに声を上げながら、遡上してきたジャッケを捕縛し続けていました。

 もうちょっとしたら、クマンコさんの子供達も来てくれるはずです。

 ……で

「うきゅう……」
 パラナミオ達を見つめている僕の足下には、目を回しているルービアスの姿がありました。
 その周囲には、ウルムナギ又5人娘が、ルービアスと同じように目を回して気絶しています。

 ……はい、一発でした。

 遡上してきたジャッケの一群に対しまして、
「いいわね、いくわよ!」
 気合い満々の様子で声をあげたルービアスが駆け出していきました。
 その後方に、ウルムナギ又5人娘が続いていったのですが……

 パラリラパラリラ
 パラリラパラリラ
 パラリラパラリラ
 パラリラパラリラ

 そんなルービアス達を即座に敵認定したジャッケの集団は、超音波パラリラパラリラ音をルービアス達に向かって発していきまして、
「ぐはぁ!」
 その直撃をくらったルービアスがまず吹き飛ばされまして、次いで
「や、やっぱり」
「ジャッケの」
「このパラリラパラリラ」
「に」
「は、敵わない~」
 ウルムナギ又5人娘が全員一発で吹き飛ばされた次第だったわけです、はい。

 念のために、スアやパラナミオ達にスタンバイしてもらっておいてよかった、と……
 僕は、気絶しているルービアス達6人を見下ろしながら、そんなことを思っていた次第です。
「……しかし、スア製の耳栓をしてるんだし……気絶するはずはないんだけどなぁ」
 僕はとりあえず6人を介抱していったのでした。

◇◇

 とまぁ、一部でトラブルも生じてはおりますものの……

 今年もこうしてジャッケの季節がやってきたわけです、はい。
 パラナミオ達我が家の子供達や、コンビニおもてなし4号店の店員クマンコさん家の子供達、それにフク集落の子供達やブラコンベのガラス工房ペリクドさんの子供達などにも協力してもらって、遡上してくるジャッケを捕獲している僕達です。スアの耳栓でしっかり防御した子供達は、一列になって遡上してくるジャッケを楽しそうに捕縛してくれています。
「子供達も楽しそうだなぁ」
 クマンコさんは笑顔でその光景を見つめておいでです。
「そうね、悪くないんじゃないかしら」
 フクの村の子供達を引率してきてくれているコンビニおもてなし商会ナカンコンベ店のファラさんも満足そうに頷いておいでです。
「あぁ、ウチのガキ達も楽しそうで何よりだ」
 ペリクドさんも、嬉しそうに笑っておられます。
 
 まだ数日しか経っていませんが、かなり減っていたジャッケの在庫がどんどん増えているもんですから、僕としましてもかなりほくほくなわけです、はい。
 ジャッケ弁当やジャッケのおにぎりは、コンビニおもてなしの人気商品ですからね。
 それに、加工して魔法袋に詰めておけばいつまでも新鮮な状態で保存出来ますから、取り過ぎて困るということはないわけです、はい。

 ちなみに……

 子供達がいない時間帯には、スア製の木人形が設置されています。

 今年、この川に設置されている木人形は、スアがジャッケを捕縛するために改良した木人形になっています。
 具体的に、去年の木人形と何が違っているのかといいますと……
「……ん~……」
 川で、ジャッケを一網打尽にしている木人形達ですが……僕が見たところでは、去年の木人形と比べて、あまり差が無いといいますか……
 そんな事を呟いていると、そんな僕にスアがいいました。
「……今年は10体いる、の」
「あ、あぁ……数ね」
 スアの言葉に、僕はようやく合点がいった次第です、はい。

◇◇

 と、まぁ、そんなわけで……

 ジャッケの豊漁を受けまして、コンビニおもてなしでは、
「取れたてジャッケフェア」
 を新たに開始いたしました。

 フェアといいましても、取れたてのジャッケを使用した弁当とおにぎりを提供するだけなんですけどね。
 あ、あと、ホットデリカコーナーにあります、スープバーの中に、
「石狩鍋風味噌汁」
 も、フェア期間限定ってことで準備している次第です。

 本支店ならびに出張所すべてで一斉に開始したこの「取れたてジャッケフェア」ですが、どの店舗でも大盛況になっています。
 どの店でもジャッケ関連商品が真っ先に売り切れてしまっている状態でして、僕と魔王ビナスさんが交代交代で追加分を作成している次第です。

「ったくもう。急に呼び出される方の身にもなってよね」
 出来上がった追加商品を、ハニワ馬のヴィヴィランテスが各店舗へと運んでくれるわけです。
 相変わらずブツブツ言ってはいるのですが、
「ほら、輸送は仕方なくやってあげるから、あんたは商品作成と接客がんばんなさい」
 そんな優しい言葉を、あえて素っ気なく口にしてくれるヴィヴィランテスなわけです、はい。

 そんな中……

「さぁさぁ、ジャッケフェアですよ! 試食いかがですか!」
 弁当コーナーでは、ルービアスが満面の笑顔でジャッケ弁当の試食を配布しているところでした。

 本店ではルービアスですが、他のウルムナギ又5人娘達も、各地のコンビニおもてなしの支店で試食配布をしているんですよね。

 ジャッケにはまったく敵わなかったルービアス達ですが……試食配布に関しましては全員なかなかな貢献をしてくれている次第です。
 ジャッケにはまったく敵わなかったルービアス達ですが、これにはホントに助かっている次第です。
 ジャッケにはまったく敵わなかったルービアス達なんですけどね。

「ふっふっふ、出来ることからこつこつと、が、私達ウルムナギ又のモットーなのですよ」
 僕の前で、ルービアスはそう言いながら試食の配布を行っていた次第です。

 うん、そうだね。
 無理にジャッケに立ち向かわなくても、むしろ試食で頑張ってくれら方が、コンビニおもてなし的にも助かるというか……

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