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95 できる大人たちと、サーヤの石ちゃん

その頃、サーヤの変化に気づいた者たちがいた。できる大人、アルコン様、ギン様、精霊樹の精様の三人だ。三人は互いに目配せをしてそれぞれ行動に移っていた。

アルコン様、精霊樹の精様は薄い結界を張り、サーヤの様子を周りの集中している子達に悟られないようにする。驚いて魔力を暴走させないためだ。

一方、ギン様は子供たちをアルコン様たちに託し、ひとり静かに泉の中へ。ジーニ様が仰っていた空の魔石を集める為だ。
『あっ森の主様だ』
『本当だ~』
『『『『主様、こんにちは~』』』』
『どうしたの~?』
『何かご用~?』
ギン様に気づいて寄ってきてくれた水の妖精たちにも協力を頼み、空の魔石を集めてもらった。そしてギン様は少し大きめの空の魔石を重点的に探していた。それに気づいた妖精が
『大きいのがこっちにあるよ』
と、教えてくれた。
『こっちこっち』
と、案内され魔石の元へ連れていってもらうと、確かに今までのものより大きい物があった。大人の拳大だろうか…
ひとつ頂いて戻ろうとした時、妖精が
『サーヤに守り石にも魔力を流して欲しいって伝えて欲しいの』
と言ってきた。どうも先日、息子とサーヤが世話になった妖精らしい。
『そうか。君たちが先日、ハクとサーヤが世話になった妖精たちだったのだな。ありがとう。君たちが集めてくれた花はとても貴重な花だそうだな。おかげで伏せってらした女神様がお目覚めになられたそうだ。改めて礼を言う。どうもありがとう』
ハクたちが世話になったこと、女神シア様がお目覚めになられた礼を言うと

『そうなの?良かった~』
『ぼくたちも楽しかったよ』
『うん。役にたてて嬉しいよ』
『お花集めただけなのに、そんなふうに言われると照れちゃう』
『『『ね~』』』
妖精たちは照れながらも嬉しそうにしてくれている。
『いや。本当にありがとう』
何度言っても礼は足りないだろう。

『それより、サーヤにあげた守石のことなんだけど~』

『あの美しい青い石の事だな?』
サーヤがとても喜んでいた花の形をした青い石。
『『『『そう!』』』』
詳しいことを聞くと、どうもあの守石は成長するらしい。

『サーヤが身につけてくれてるだけでも』
『少しずつ成長するはずなの』
『でも、意識して魔力を注いであげると』
『石が喜んで成長するよ。だって』
『『サーヤの魔力は』』
『『とっても美味しいから!』』
身につけているだけでもいいが、少しずつでも意識して魔力を注いでくれると守石が喜び成長も速いそうだ。
『分かった。必ずサーヤに伝えよう。サーヤも君たちにまた助けられたと知ったら喜ぶだろう。近い内にサーヤとハクも一緒に礼に伺うよ』

『ほんとう?』
『やったー!』
『約束だよ!』
『また来てね!』
必ず守石のことも伝えると約束し、水の妖精たちに別れを告げ、サーヤたちの元へと戻る。

ジーニ様の元へ泉から戻ったギン様が近づく。
その様子に気づいたアルコン様と精霊樹の精様が一度みんなの練習を止める。

『みんなぁ、ゆっくり自分の中から外へ意識を向けてぇ、ゆっくり目を開けてぇ……』
『ゆっくりゆっくり静かにな……』
二人の静かな声に従って、みんなの目がゆっくりと開く。

『どう?みんな。気分が悪い子いるかしらぁ?』
みんな首を振っている

ぴゅい『だいじょうぶ~』
きゅい『きもちいい?』
『うん。なんか始める前より体が楽かも~?』
他のみんなも頷いている。どうやら皆、大丈夫なようだ。

『そう。良かったわぁ。でも初めてのことだから気持ちは疲れてるはずよぉ。少し休みましょう』
『そうだな。みんなよく頑張ったな』
『お疲れ様ぁ』
『みんな偉いぞ』
みんな疲れてるはずだから今はゆっくり休みなさいと、勧めるが…

ぴゅきゅ『『サーヤは~?』』
サーヤが気になるようだ。
『サーヤは今ジーニ様が見ている。ギンが今ある物を持って行ったから様子を見よう』
『みんなぁ、気になるかもしれないけど今は静かにねぇ。でもしっかり見ていてねぇ。あなた達もあとで同じことをするはずだからぁ』
みんなアルコン様たちの言葉に真剣に頷いていた。


ギン様が静かにジーニ様に声をかける。

『ジーニ様これを』

ギン様は水の妖精と共に集めた空の魔石をジーニ様に渡す。ほとんどが小さい物だが、いくつか大きめなものがあった。
ジーニ様はその中から水の妖精の案内で見つけた一番大きな物を選んだ。

『ジーニ様、その魔石に案内してくれた妖精が教えてくれました。サーヤに渡した守石は魔力を注ぐと成長するそうです。そちらにも意識して魔力を注いで欲しいそうです。石が喜ぶからと』
水の妖精のことばを伝えると

〖分かったわ。ありがとうギン。みんなの所に戻って結界をもう少し強めてもらえる?念の為に〗
『かしこまりました。サーヤをお願い致します』
〖ええ。任せて〗

ギンはサーヤをジーニ様に任せ、一礼してから静かにみんなのところに戻った。


ギンから空の魔石を託された魔神は、みんなのところに戻るギンを確認してからサーヤの意識をゆっくり起こす…

〖サーヤ、そのままゆっくり目を開けて。ゆっくりね〗

静かに語りかけると、サーヤはまつ毛をぴくぴくさせて目をゆっくりと開いた。

〖サーヤ、これを持って〗
サーヤの両手をとって空の魔石をそっと握らせる

「あい」
サーヤは素直に従う。

〖これを自分の手の一部だと思って、これに魔力を注いでくれる?少しずつね〗
「あい」

石にだんだん光が集まる。サーヤの体から溢れ出ていた光も少し落ち着いたように見える。

〖そう、その調子よ。石から何かを感じるかしら?〗
「ん~?まじゃ、へいきじゃよ~ ゆってりゅ」

魔神は驚く。反発を感じるかと聞いたつもりだったのだが、サーヤは石とも会話しているのだろうか?

〖まだ平気って声が聞こえるの?〗
「あい。いみゃは、あちょ ちゅこちぃ ゆっちぇりゅ」

あと少し?魔神は本気で驚く
〖そう。また声が聞こえたら教えてくれる?〗
「あい」
サーヤが石に魔力を送り、しばらく経つと
「しょりょしょりょだよ~っちぇ」
〖そろそろなのね。じゃあ、少しずつ流す魔力を細くしていって。いつでも止められるように、ゆっくりね〗
「あい。も~い~よ~♪っちぇ」
〖じゃあ、止めてあげてね〗
「あい。ごちしょうしゃま~ゆっちぇりゅ」
サーヤはまだ何か聞いてるようだ。

「おしょまちゅしゃまでちた」
話し終わったのかスッキリした顔をしている。

「あちょは、まいにち。ねんねにょ みゃえに ちょっちょ ちょーらいっちぇ」
〖そう。じゃあ毎日寝る前にご飯あげないとね〗
「あい!」
サーヤは石と仲良く出来たことにご機嫌だ。

〖じゃあ石を見せてくれる?〗
「あい!どうじょ!」
〖ありがとう〗

石を見て更に驚く。満タンではないが力を使うには充分な量が既に入っている。あとは少しずつ毎日入れれば、確かに満タン近い状態をキープできるだろう。しかし、会話できるとはこの石が特別だったのだろうか?
魔神は別の小さい石をサーヤに渡してみる。

〖サーヤ、これは何か言ってる?〗
「ん~。こえは きこえにゃい けじょ サーニャはいりぇちゃ めっ きがしゅりゅ。ちいちゃい?」
〖そう。声は聞こえないけれど、小さいからダメな気がするのね?〗
「あい」
それじゃあ、やはりあの石が特別だったのかしら。それから

〖じゃあ、サーヤ。水の妖精さんからもらった守石は何か言ってない?〗
「うにゅ?」
サーヤが服の中から引っ張り出して守石を握ると
「ちゃいへん!はやく、ごはんちょうらい ゆっちぇりゅ!!」
と足をバタバタして慌てている。
〖落ち着いて、大丈夫よ。さっきみたいにできる?息を整えて、ゆっくりね〗
「あい!」

サーヤはさっきのようにまた目を閉じて魔力を送り出した。すると、守石にゆっくり光が灯ってきた。サーヤがしばらくして
「ごちしょうしゃまゆっちゃ」と告げてきた。
見せてもらうとやはり満タンの一歩手前で止まっている感じだ。
〖サーヤ、水の妖精さんから伝言よ。毎日少しずつ、守り石にも力を上げてって。喜ぶからって〗
「わかっちゃ~ がんばりゅにぇ~」
〖そうね。頑張ってね〗
「あい!」
やれやれ…どうやらサーヤに関わると、石も普通じゃなくなるらしい。はぁ~あ。魔神はサーヤに気づかれないようにため息をついた。

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