バナー画像 お気に入り登録 応援する

文字の大きさ

コンビニおもてなし 5号店の2 その7

 マクローコの美容室は、建物の引き渡しを受けたその日から営業を開始しました。

「常連さんをお待たせしちゃまずいし、みたいな!」
 マクローコはそう言いながら僕に向かっていつもの、舌出しダブル横ピースをしていました。

 すると、その後方では、

「ミュカンさん、あのポーズはこれでよろしいのかしら?」
「そうですねキョルンお姉様。それでよろしいかと私も思いますわ」
 そう言いながら、ゴージャスサポートメンバー改めゴージャス店員となったキョルンさんとミュカンさんが2人してマクローコの舌出しダブル横ピースを真似ていたのです。

「あ、あの……キョルンさんもミュカンさんも無理に真似をしなくても」
「あら、郷に入り手は郷に従えと言うではありませんか、ねぇミュカンさん」
「えぇ、キョルンお姉様。私もそう思いますわ」
 僕の言葉に、お2人は優雅な仕草で顔を見合わせた後、再び2人揃っての舌出しダブル横ピースを披露してくださった次第です。

 このお2人って、オルモーリのおばちゃまの親友でして、王都の社交界でも知らない人がいない程の有名人らしいって聞いた事があります。
 ですが、このお2人はそれを自慢したり鼻にかけることはまずありません。
 強いて言えば、役職名の前に『ゴージャス』をつけることを要求なさるくらいですね。
 話題も豊富だし、話術も巧みなので客商売にはホントに向いていると、僕は思っています。

 ……ただですね、2人はあのオルモーリのおばちゃまの親友なわけです。

 ヤルメキスの旦那さん、パラランサくんのおばあさんにあたりますオルモーリのおばちゃまです。
 その親友ってことは……お2人ってば、実年齢はいったいいくつなんでしょうね。
 僕はそんなことを考えながらお2人を横目で見つめていたのですが、そんな僕の視線に気が付いたらしいお2人は、
「あらあら、店長さんってば、私達の美しさに釘付けのようですわね。ねぇ、ミュカンさん」
「そうですねキョルンお姉様。私もそう思いますわ」
 そう言いながら、優雅に舌出しダブル横ピースを決められたのでした。

◇◇

 新装開店いたしましたマクローコの美容室は、早速大盛況になっていました。

 予約客だけですでに満員状態だったのですが、そこに新装開店を聞きつけた常連の方々が
「店長ちゃんおめ~」
「ホント良かった、みたいなぁ」
 口々にそう言いながらお花などのお祝いの品を届けに来てくださいまして、そのついでに髪のセットをお願いされるケースが頻発していました。

 以前でしたら、こういった突発的なお客さんに対処出来るだけの人員もスペースもなかったマクローコ美容室ですが、新装開店したからにはそんなことはございません。
「じゃ、こっちでやっちゃうし!」
 そう言うマクローコに案内されて、お客さんがどんどん椅子に座っていく次第です。
 そんなお客さん達の髪のセットやカット、お化粧の対応やお肌相談にまでのっているマクローコ達。
 マクローコ・キョルンさん・ミュカンさんの3人を中心にして手際よく作業・応対し続けていたのです。

 その見事な手際を前にして、感心しきりだった僕です、はい。

◇◇

 そんなマクローコ美容室の開店に会わせて、同じ建物の二階にございますコンビニおもてなし5号店東店も開店することにいたしました。
 
 通常コンビニおもてなしは、朝7時頃から開店しまして夕方に閉店いたします。
 ですが、このコンビニおもてなし5号店東店はそうはいきません。
 何しろ、一番の顧客になりますマクローコの美容室をご利用なさっているお客様が来店なさるのは、コンビニおもてなしが閉店してる夕方から深夜にかけてですからね。

 と、いうわけで

 このコンビニおもてなし5号店東店は、朝から深夜まで営業することにしています。
 店長のスシスは木人形ですので、眠ったり休憩したりする必要がありません。
 それでも、適当なところで休憩を挟むように言ってあります。
 これは、
「コンビニおもてなしはあの店員を何時間働かせてるんだ?」
 といった風にお客様に思われないようにするためなんですよね。
 そんなブラックな噂が広まってしまうと、下手をしたらお客さん離れを招きかねませんから。

 で、他の店員、エルフ4人組のみなさんには、2人1組になってもらいまして、

 1組は朝から夕方まで
 1組は夕方から深夜まで

 それぞれお店の対応をしてもらうことにしています。

 ナカンコンベは大都市ですし、3人体制で大丈夫かな、と思った僕なんですけど、
「アタシ達モ手伝ウ」
 そう言ってくれたのは、マクローコ美容室のゴブリンとゴーレムの女の子達でした。
 2人は交代でコンビニおもてなしのサポートに入ってくれるとのことでした。
 
 お店が落ち着くまでの間は、コンビニおもてなし3号店から木人形をサポートメンバーとして派遣してもらうようにエレにもお願いしてあります。

 とりあえず、これくらい手を打っておけばどうにかなるでしょう。

 そんなわけで、マクローコ美容室の開店に遅れること1時間少々で、コンビニおもてなし5号店東店も新装開店いたしました。
 まぁ、新装開店といいましても、以前は24時間営業しているコンビニおもてなし3号店へ転移ドアを使って移動してもらっていたわけですので、実質新規オープンと変わりないわけです。
 そんなコンビニおもてなし3号店には、開店と同時に結構な数のお客様がご来店くださいました。

 このお客様のほとんど全てがマクローコ美容室の順番待ちのお客さんなわけです。

 このお客さん達がコンビニおもてなし5号店東店の中で時間を潰しておられます間に、マクローコ美容室の方の順番が来た際には
『エルフの●●様、順番がまいりましたのでマクローコ美容室まで来て欲しい、みたいな?』
 そんな放送がコンビニおもてなし店内に響く仕組みになっています。
 お店の中に魔法拡声器を設置してありまして、一階のマクローコ美容室にありますマイクに向かってしゃべった内容が魔法拡声器を通してコンビニおもてなし内へと放送されていくわけです。
 このサービスはかなり好評でして、マクローコ美容室の順番待ちのお客様の大半がコンビニおもてなしで時間を潰すようになられた次第です。

 そんなお客様を見越しまして、このコンビニおもてなし5号店東店内には新施設を導入してあります。

 いわゆるイートインコーナーです。
 レジ横に広めの区画を設けまして、その中に椅子とテーブルを並べてあるんです。
 店内で購入した商品をここで食べてもらえるようにしてあるわけです。
 
 順番待ちのお客様の多くが、店内で購入した食べ物や飲み物をこのイートインコーナーで口になさりながら時間を潰されていました。
 おかげさまで、このコーナーを目当てになさったお客様がコンビニおもてなし店内へどんどん集まってこられた次第です。

 念のために、サポートとして接客にあたっていた僕は、
「どうやら順調な滑り出しみたいだな」
 そう呟きながら小さく頷きました。

しおり