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 けやき坂通りに出ると、神社の宮司が着るような白装束たちが三十名ほどいた。
 そいつらは、このビルの屋上付近のアトモスフィアスライムへ攻撃をしており、まだこちらに気づいていない。

「やっぱりあれは、倒そうという攻撃じゃ無いな……」
「怒らせて誘き寄せているように見えるわね。夏哉くんどうするの?」

(今度は、名前呼びか。訂正したいところだが、ここで、もたついている暇は無い)

「あの射程の長い魔法。ずいぶん時間かかってんな」

 ファイアボールを使っている白装束の中に、二人だけ深紫色の装束を着ており、そいつらは両手を組んで、祈りを捧げるようにしていた。

「おい、マーガレット」
「なあに?」
「俺の護衛を頼む」
「えっ? どういう事?」

 上空を見上げると、ビルの高さは、すでに七百メートルもないと分かる。
 ずいぶん食い散らかされたものだ。

 俺は空を見上げ、集中をする。
 アトモスフィアは、大気なので、それを散らすのは、巨大な竜巻と、それを強める炎の熱。

 俺のイメージが魔法となり、巨大な竜巻が発生し、上空へ伸びていく。
 集中を切らさないように、炎を混ぜ込むと、巨大な火柱がうねりながら空へ伸びていった。

 そんな事をしていると、さすがに白装束に見つかってしまい、数名がこちらへ来ていたが、マーガレットが殴り飛ばしている。

 アトモスフィアスライムはその熱を嫌がったのか、上空から風を送り、熱を散らそうとしている。
 いや、様子がおかしい。
 炎の渦で空気が熱せられ、ここから見るアトモスフィアスライムは、シュリーレン現象でゆらゆらと見えていたが、それが消えた。

 次の瞬間、一際大きなシュリーレン現象が発生し、ビルの上に透明で巨大な炎が噴き上がったように見えた。

「マーガレット、屋内に避難しろっ!!」

 おそらく爆裂魔法に匹敵する何かが来るはず。
 そう思って、俺もそばにある店の中へ駆け込もうとした。

【|気圏《きけん》魔法を確認しました】
「ぐっ……」

 急激な気圧の低下が起こり、鼓膜が膨らみ、肺から空気が逃げ、意識が遠のく。
 一気に気温が下がり、近くの自販機では、中の商品が破裂する音が連続で響いた。
 ここは真空状態に近くなったのかもしれない。
 このままでは減圧症の前に、空気を吸えずに死んでしまう。

 だが、俺は何とか意識を繋ぎ止め、風の魔法を意識する。

「ごほっ!」

 すると、周囲から一気に空気が流れ込み、俺は吐き出した空気を目いっぱい吸い込んだ。
 ふらついて倒れそうになるのを我慢し、再度集中をする。

 大気を回転させ、炎を混ぜ込み、巨大な火柱をつくる。
 空気を送り込み、炎の温度を上げていくと、白く明るく変化していく。
 高温になった竜巻は、その摩擦でスパークを発しながら、アトモスフィアスライムを焼く。

【雷電魔法を確認しました】

 そして、マーガレットも意識を失いかけたのか、離れた場所でふらついていた。

「君が鈴木夏哉くんかね?」

 今の真空状態で何のダメージも受けず、飄々とした表情で、深紫の装束を着た男がこちらへ近づいてきた。
 それを見たマーガレットは、全身を|強制複合現実化《FMR》し、殴りかかっていた。

「まだ子供だから分からないだろうが、この施設は危険なのだ。破壊しなければならない」

 俺が魔法に集中をして話せないと分かると、深紫の男はマーガレットの攻撃をいなしながら話しかけてくる。

 だが、俺はそれを無視して集中をする。

 しかし、雷電魔法か。
 空気の渦に摩擦を意識すると、雷のスパークが大きくなっていく。
 すでに白装束たちは魔法攻撃を止めており、深紫の男の声だけが聞こえる。

 高温になった上昇気流で、月にかかる雲が消える。
 一方、俺が居る地上では、空気が収束し、全てのものを舞い上げようとする。

「ちょっ!? 夏哉くん!!」
「おいっ、鈴木夏哉!! 即刻その術式をやめよ!!」


(へその下が熱い)

 そう感じつつ、俺は気持を強めた。

 イメージは落雷。
 ただし、普通の雷では無い。
 スーパーボルトと呼ばれる、核爆発に匹敵する雷だ。

 そのばく大なエネルギーは、大気中の窒素を破壊して炭素へ変化させ、反粒子を生み出す。

 腹の中でとぐろを巻く何かを意識すると、俺の前に青い光を放つ球体が現われ、次の瞬間巨大な雷となり、上空のアトモスフィアスライムに直撃した。

 辺りが紫電で青く染まると、轟音と共に濃いオゾン臭が漂ってきた。

「マジか――――効いてないのかよ」

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