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「何だこれは……」

 グレーシャースライムを倒したあと、ビッグフットジャパンの上層階に張り付いたアトモスフィアスライムを倒しに来ると、六本木六丁目の交差点で大乱闘が起きていた。
 上を見ると、アトモスフィアスライムが上層からビルを喰っているように見える。

 俺の後ろには、佐野さん、由美、葛谷、小春ちゃんに加え、元々のMPK集団から離反し、こちら側に付いた人たちが大勢いる。それが小春ちゃん目当てだとしても今は心強い。

「さっきのファイアボールは、掲示板で見たとおりだ! |滋岳《しげおか》、|弓削《ゆげ》、|三善《みよし》、|芦屋《あしや》、|賀茂《かも》、の五名を取っ捕まえてMPKを止めるぞっ!!」

(……あまり反応が無いな)

「これからアトモスフィアスライムを倒しに行くよ~! ついでに悪いやつ五人も捕まえるよ~!!」

 小春ちゃんが|檄《げき》を飛ばすと、新しく仲間になった奴らは、地面を踏み鳴らし、声を上げた。
 そして乱闘している交差点に入ると、さらに味方の人数が増えていく。

「|影山《かげやま》裕太くん」
「はい?」

 聞き覚えのある声に振り向くと、俺たちにマンションを貸してくれた、日下部さん夫妻が立っており、その近くにお孫さんらしき人物が護衛をしていた。

「ワシらもプロトタイプARCに変える事が出来たし、手伝いに来たんじゃよ」
「そ、そうなんですか……」
「まあ、山手線の連中がやってる事も分からんでもないが、そのせいで核施設から放射能が漏れたら元も子もないじゃろ?」
「と言う事は……」

 交差点で乱闘している連中をよく見ると、豊洲で埋葬を手伝ってくれた人の顔がちらほらと確認できた。
 そして日下部さんが言うには、湾岸エリアの住人が、かなりの人数ここへ来ているのだそうだ。

 そしてだんだんと喧騒が収まり、乱闘は日下部さん率いる、湾岸エリアの住人の勝利となった。

「裕太くん、夏哉くんの姿が見えぬようじゃが?」
「ああ、あいつは別で動いてるんですよ」
「………・・そうか。それなら、彼に会ったらこれを渡してくれないかね? 君たちのリーダーじゃろ?」
「ええ、そうですけど。これは?」
「早急に伝えたい事があってな。ワシが早に会えば、直接口頭で伝えるが、この事は他言無用じゃ」

 そう言って渡されたのは、マッチ箱大のホログラム投影機だった。
 これはおそらく、夏哉しか見れないようになっている。
 日下部さんのお茶目なウインクを見ても、それは明らかだ。

「掲示板を見るでござる!!」

 葛谷の声で、俺たちは視覚操作をする。
 するとそこには、〝【原発】MPKは中止【危険】〟というスレッドがあった。

 それは夏哉の名前で建てたスレッドだったので、ARCのフレンド情報と見比べると、同じ名前の別人ではなく、俺の親友の夏哉だとわかった。

 そして、そのスレッドは、今回のMPKに参加した人たち全てに向けてのメッセージがあり、このままだと核融合炉が爆発するかもしれないので、止めて欲しいという訴えが書き込まれていた。

 ビルを挟んで反対側である、けやき坂通りの方が赤く光った。

「あっちだ!!」

 そう言って、俺はビルの下にある駐車場を駆け抜けた。

「止まれ」

 駐車場の柱から男が姿を現し、そう言いながらファイアボールを放った。
 俺はすかさずソイルウィールで防御した。
 チラリと振り返ると。後ろから来ているメンツに被害は無さそうだ。

「てめぇ、何もんだっ!」
「|賀茂《かも》|保幸《やすゆき》と申す。故あって、此度の動乱を収めに参った」

 その男は三十代くらいに見え、神社の神主のような|狩衣《かりぎぬ》姿で、まるで映画で見た陰陽師のような姿だった。

「掲示板で飛び交う噂に騙されるでない」
「何の話だ」
「このビルに原子炉は無い。あるのは発電用の核融合炉だ」
「……だから何だってんだ? あんたが加茂って名乗るなら、今回のMPKを主導した一味なんだろ? 適当言って、俺らを煙に巻こうとか、甘すぎるんじゃねぇか?」
「……愚かな」

 加茂の身体から黒い煙が立ちのぼると、俺の全身から力が抜け、同時にめまいがした。
(何かの魔法なのか?)
 後ろを見ると、全員がよろけ、顔が青くなり、座り込んでいる者までいる始末だった。

「烏合の衆よ、これ以上の邪魔立てはさせぬ。暫しおとなしくしてもらおう」

 その言葉を最後に、俺の意識は暗転した。

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