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 そんな短絡思考で、うちの家族を拘束したのか。
 父さんの顔を見ると、首を横に振る。
 一応ビッグフットジャパンのエンジニアなので、何か知っているかと思ったけど、そうでは無さそうだ。
 母さんと小春は、聞くまでもない。

「父さんはビッグフットジャパンのエンジニアだけどさ、昨日の夕方ようやく到着したんだぞ? 裕太が言ってるファイアスライムの件は、昨日の朝の話。おかしくね?」
「だから俺はそこまで疑ってないんだって」
「おいおいリーダー、そりゃないぜ」

 佐野が裕太に食ってかかる。
 それを聞き流しながら、裕太はさらに説明を続けた。

「そのMPKのせいで、タロットキャロットのメンツ、半数が死亡した」

 知らんがな。
 ぶっちゃけ、そんな感想しか出てこない。

 ただ、現時点での疑いを晴らす方法が無い。
 裕太はそこまででは無いけど、その他は完全に俺たちを疑っている。

「俺たちはこれから、祖父の家に行くところだったんだ」
「お前ら、他にMPKする場所を探してんじゃねえか?」

 佐野は聞く耳を持っていないようだ。

「裕太先輩、あの黒服が探しに来たでござる」

 色々とやり取りをしていると、無理矢理感強めの〝ござる〟が聞こえてきた。
 ただ、その一言は、タロットキャロットのメンツが一斉に警戒を始めるに足る言葉だった。

 黒服。おそらく、ブラックフットだろう。

「ロウソクを消せ! それと|葛谷《くずはら》は引き続き警戒に当たってくれ」

 裕太の声で、タロットキャロットは臨戦態勢となった。

「おいおい、こいつらが呼び寄せたんじゃねぇの?」

 しかし、佐野は、どうしても俺たち家族をスパイにしたいようだ。

 まあ、俺たちはビッグフットジャパンから脱走してきたんだ。
 ブラックフットが、わざわざ捜索しているのには驚いたが、これはうちの家族が呼び寄せたと言っても過言では無い。

 すると、入口付近から、ガラスが派手に割れる音が聞こえてきた。

「クソがっ!!」

 ガラスが割れた付近を、誰かがファイアボールで攻撃をすると、一斉に外からの銃撃が始まった。

 俺と父さんは結束バンドを引き千切り、小春と母さんをその場に伏せさせた。

 その頃にはすでに銃撃と魔法が飛び交い、タロットキャロットに多大な死傷者が出ていた。

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

「執行役員、ビンゴです」
「執行役員はやめてくれって」
「ああ、すみません|南風原《はいばら》さん」

 気に入らないなぁ。
 いや、目の前にいるブラックフットの事じゃない。
 鈴木家の事が気に入らないんだ。

「所定の位置に付いたら攻撃開始だ。俺の合図を待て」
「了解しました!」

 プロトタイプARCを改造してた父親はしょうがない。
 あいつはビッグフットジャパンのエンジニアだし、脱走なんてお手の物だろう。

 だが、あの長男は何だ? マジでムカつくんだけど。
 こっちが丁寧に話してるのに、まったく口をきかないって何様なんだ。

【焦らないで下さい】

 クソッ。プロトタイプARCまで俺を馬鹿にしやがって。

【馬鹿にしてませんよ? 本当に心配しているんです】
「そりゃ、俺が適合者だからだろ?」

 音声入力でしっかり言わないと、こいつ人工知能のくせにいちいちうるさいんだよ。
 まったく以て不愉快だ。親父は相変わらず、俺の事を残りカス呼ばわりするし。

「おい、俺のレベルは今いくつだ」
【四十七です】

 ずいぶんとレベルアップしたものだ。
 これまでずいぶん殺しまくったしな……。

 しかし、それでもビッグフットが極秘裏に開発していた|強制複合現実化《FMR》は、夢のような技術だ。
 現実でレベルアップして、身体能力が常人をはるかに上回る事が出来るし、この銃も|強制複合現実化《FMR》で強化されるからな。

 早い段階でプロトタイプARCの試作品が手に入り、うちの姉さん押し退けて実験に参加した甲斐があるってものだ。
 もしこれが一年早く出回っていたら、オリンピックやプロスポーツの世界はひっくり返っていただろうな。

「だけど……」

 何なんだこのモンスターが出てくる世界は。
 聞いてねぇっての。
 ああ、ムカつく。
 まあでも、魔法が使えるようになったからプラマイゼロか。

『恭一、進行状況はどう?』
『……うん。ちゃんとやってるよ』

 姉さんが本部からの無線で急かしてくる。

『んじゃ始めるぞ。一発撃ち込め!』

 無線を通じて合図を出すと、中央図書館の入口へ銃弾が飛び、ガラス扉が派手な音を立てて砕け散った。

 まずは入り口の破壊。
 だいたいこれで素人はビビる。
 お? ファイアボールで反撃。
 いや、ロウソクが消えたって事は、逃げるつもりか。
 けっ、逃がさねぇよ。

『ロウソクが消えた喫茶店を狙え! 皆殺しにしろ!!』

 まあ、鈴木家が死んでも問題は無い。
 流れ弾に当たる方が悪いんだ。

 魔法で反撃? 笑わせるな。|強制複合現実化《FMR》された銃弾には、魔法なんて威力も速度も遠く及ばない。

『南風原さん、敵が沈黙しました』

 あれから三十分ほど経過し、ようやく制圧できた。
 しかし、これだけドンパチやっても警察が来ない。

 まあ、警視庁は大きな穴が開いて異世界転移してるみたいだし、他にある警察署もそうなんだろう。
 はっ、プラマイゼロだけど、これはこれでいいかもな。

『よし、遺体の確認と、生存者の確保に行くぞ』
『了解しました』

 俺はブラックフットを引き連れ、中央図書館へ向かった。

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