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コンビニおもてなし、秋の新商品 その1

 コンビニおもてなしで、各部門を正式に部門分けしてそれぞれのリーダーを決めました。

 そのおかげもあってでしょうか、最近のみんなは今まで以上に張り切って仕事に励んでくれています。
 オザリーナ温泉郷にありますこのコンビニおもてなし6号店のように
「ひゃあ!? いつもより張り切って転んでしまいましたぁ!?」
「ひゃあ!? 鋼鉄製の吊りバンドで固定していたスカートが、下着ごとぉ!?」
 ……といった具合で、張り切らなくていいお馴染みの光景までパワーアップした感じでございまして……とにもかくにも、みんな頑張ってくれているわけです、はい。

 僕が店長を務めています、ガタコンベのコンビニおもてなし本店もそれは例外ではありません。

 特に、ヤルメキススイーツ部門の新人として加わったアルカちゃんの張り切り具合が最近半端ではありません。

 スイーツ部門に所属しているアルカちゃんなのですが、彼女のお父さんが僕の世界で言うところの中華料理に近い料理を作っておられたらしく、そのお手伝いをしていたアルカちゃんもそういった料理を得意にしているもんですから、空いた時間に僕が中華料理をあれこれ教えてあげているんですよね。

 今日も、シューマイを一緒に作成しているところです。

 ヤルメキス達と一緒に揚げ団子や杏仁豆腐などを作っているだけありまして、シューマイの作成作業も難なくこなしていったアルカちゃんです。
「うん、いい感じに出来上がってるね」
 蒸し器の中にシューマイを並べているアルカちゃん。
 そのシューマイの具合を確認していた僕は笑顔でアルカちゃんにそう言いました。
 すると、アルカちゃんはぱぁっと表情を明るくしまして、
「パパ上様感謝感激アル。アルカ、リョータ様の嫁としてもっともっと頑張るアル!」
 そう言いながら、蒸し器を移動させていました。

 なんかもう、僕のことを「パパ上様」、自分のことを「リョータ様の嫁」と呼称するのが当たり前になっているアルカちゃんですけど、それがコンビニおもてなし本店の中でも普通に受け止められ始めている今日この頃です。
 まぁ、リョータ自身も『アルカちゃん大好きです』と、公言してますしね。
 そんな2人を、僕達家族だけでなく、コンビニおもてなしのみんなも暖かく見守ってくれている次第です、はい。

 そんなアルカちゃんが作成したシューマイを、早速厨房にいたみんなで試食してみました。
 試食者は、僕・ヤルメキス・ケロリンの3人です。
「じゃあ頂くね」
「頂きますでごじゃりまする」
「いただきますねぇ」
 僕達3人はシューマイを口に運んでいきました。
 
 その様子を、アルカちゃんは生唾を飲み込みながら見つめています。

 シューマイを口に入れて、噛みしめていきます。
 すると、いい感じで肉汁がしみ出してきて口の中に広がっていきました。
 くどすぎず、いい感じです。お肉の味も申し分ありません。
「うん、これならお店に出せるね」
「わ、わ、わ、私もそう思うでごじゃりまする」
「わ、わ、わ、私もですわぁ」
 僕の言葉に、ヤルメキスとケロリンも何度も頷いています。
 2人はそのまま土下座しかねない勢いだったのですが、手に食べ物を持っているためか、寸前で思いとどまった次第です、はい。

 そんな僕達の言葉を聞いたアルカちゃんは、

「あ、あ、あ、ありがとうアル、皆様」
 そう言いながら、その場で深々と土下座していきました。

 ……そうなんですよねぇ……ヤルメキスと一緒に作業をしている人達って、なぜか土下座が基本になっていくんですよね、不思議と……

 とにもかくにも、このシューマイも合格点だったわけですので、早速お店のホットデリカコーナーで試験販売してみることにしました。
 そうですね、4個1パックってとこでしょうか……

 こんな感じで、アルカちゃんが作成している中華料理を主にホットデリカコーナーで展開しているのですが、これがなかなか好評なんですよね。
 販売している数が少ないからというのもありますけれども、お店に陳列すると30分もたたないうちにいつも売り切れているもんですから、これは数が少ないのが理由だけじゃないと思うんです。

◇◇

 アルカちゃんのおかげもありまして、いわゆるレジ横も元気になっているコンビニおもてなしです。

 そんな中、
「そろそろあれも準備しようかな……」
 僕はそんな事を考えていました。

 今年の夏はかなり暑かったです。
 あの訳のわからない魔獣の影響もあったとはいえ、そいつを退治した後も結構暑い日が続いていましたからね。
 そのおかげで、コンビニおもてなしでもスアビールやアイスといった商品が飛ぶように売れまくった次第です。
 そんな暑さもいつの間にか消え去りまして、朝夕肌寒さすら感じる時があったりします。

 そう……季節は秋に移行しつつあるわけです。

 そして……コンビニで秋と言えば……そうです、中華まんの季節です。

 秋冬のコンビニのレジ横の定番商品と言えば、中華まんとおでんと相場が決まっていますからね。
 まずはその中華まんの準備をはじめようと思ったわけです、はい。

 厨房で僕は思案を巡らせていました。

 定番の肉まんは当然作成します。
 タテガミライオンやデラマウントボアといった弁当で人気のお肉を使った肉まんを作成して、これをメイン商品にするのはほぼ決めています。

 あと、ティーケー海岸から定期的に仕入れています魚介類の中に、最近妙に数が多くなっている品物がありますので、これを活用してみようと思います。

 その食材っていうのがですね、僕の世界のエビによく似たクエビって魚介類なんです。

 成長しても親指程度にしかならないこのクエビなんですけど、その身はプリプリしていてなかなか美味しいんです。
 これを使ってエビチリ弁当でも、と思っているのですが、そのエビチリを流用しましてエビチリまんも作成してみようかな、と思ったわけです、はい。

 このクエビなのですが、まだ試験入荷している状況なのですが、アルリズドグ商会のアルリズドグさんから
「店長さんよぉ、助けると思ってこいつを多めに買い取ってくれねぇか?」
 って言われているんですよね。

 と、いいますのも、このクエビって小さいんです。成長しても親指くらいにしかなりません。
 しかも、その殻がまるで鉄か?ってくらい固いもんですから、
『加工がめんどくさいくせに、食べるところがそんなにない。しかもそこまで苦労して食べるほど抜群に美味しいわけではない』
 との理由で、調理人の方々から敬遠されているそうなんですよ。
 当然、取引量も多くはないのですが……そんなクエビがここ最近異常な豊漁らしく、アルリズドグさんも頭を抱えているそうなんですよ。

 まぁ、このコンビニおもてなしでは、パラナミオの龍の鱗をルアが加工して作成してくれた特性の包丁を使用していますからね、鉄なみの硬さの鱗なんて苦にならないわけです、はい。

 パラナミオも、
「私の鱗がパパのお役にたててすっごくうれしいです!」
 そう言って喜んでいます。

 エビランを使い切ってしまっていただけに、このクエビがその代役になってくれればな、と思いながら僕は試作作成作業に取りかかっていきました。

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