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83 楽しくはまかせて

アルコン様が少し震える声で、おばあちゃんの手記を読み終えた。

聞き終えた面々は皆、無言だった。
涙を堪える者、声を殺して涙を流す者。
スイやモモ、ハクたち、ちびっこ同盟たちも途中で逃げ出したくなるのを頑張って我慢して聞いていた。聞き終わった今は声を出して泣かないようにみんな口に手を当てて我慢していた。
それでもまだ手記の冒頭のみ。すでにこの状態のちびっこたちにこれより先の部分を伝えることは、今は出来なかった。

そんな中、ギン様が重たい口を開く。
『ジーニ様、手記だけでもサーヤにされていた事がどれだけ残酷でおぞましい事だったかが伝わります。祖母殿のサーヤに対する思いと決意、愛情も同様に。だが、一緒にあるというその証拠、我らにも見せなかったということはさぞかし酷い物なのでしょう?』

〖ええ。写真という、人物や物をそのまま紙に映し出す異世界の技術なの。とてもじゃないけど、見せられないわ〗
魔神ジーニ様は封筒の中を魔法で先に確認したが、少し見ただけでもとてもじゃないが直視出来ないものだと分かった。出来ることなら今すぐ塵ひとつ残さず燃やしてしまいたいほどに…
こんな写真とてもだけど子供たちには見せられないわ…

『そうですか。ならばジーニ様、あなた様の手で封印を施した上でそちらのバッグに入れておくべきだと思います。時が来るまで万が一でもサーヤに見られぬように。マジックバッグが二つということは主神様もそうお考えなのでしょう?そして』

『初めからそうしなかったのは、その手記を読ませることで、我らの決意を新たにさせる為、もしくは試す為、か…』
ギン様の言葉を、アルコン様が後を引き受けた。

〖そうだと思うわ。写真を見せるか見せないかに関しては私に判断を任せたみたいだけどね〗
まったく…信頼してくれてのことだとは思うけどね。と、ぼやくジーニ様。

パンっ!

〖え?〗
パンっと音がして、皆がそちらを見てみると、

パンパンっ!

〖ちょ、ちょっと、フゥ?クゥ?〗

フゥとクゥが自分たちのほっぺたをパンっと叩いて、拳でごしごし涙を拭っていた。そして、ジーニ様の目をまっすぐ見て

『ジーニ様、私たちは何があってもサーヤを守ります。そばにいます!』
『私も絶対にサーヤのそばにいます。それに明るく、楽しく、健康に!ですね』
フゥとクゥが涙をこらえて、つとめて明るく宣言する。すると

ぴゅきゅ『『うん!サーヤといっしょいるの!』』
『ぼくだって~。楽しくはまかせて~』
『『そうだよ』』
『『『だいじょうぶ~』』』
ちびっこたちも、涙をぐいっと拭いて元気に宣言。でも、声は涙を我慢して少し震えている。

はちの女王様たちや、クモの親子たちも強く頷いている 。

『もちろん我らもだ』
『ええ。サーヤにはいつでも笑ってもらわないと』
アルコン様とギン様も真っ直ぐジーニ様の目を見る。

〖ありがとう。頼もしい仲間たちがいて心強いわ。私たちもできる限りの事をする。改めてよろしくお願いするわ〗
神の名にかけて、サーヤは今度こそ守るわ。

『さあ、サーヤに渡していいものを選びましょう!』
ギン様が明るく言う。
『そうだな』
〖そうね。そうしましょう〗

『『はい!』』
ぴゅきゅ『『うん!』』
『やろう~』
『『うん!』』
『『『まかせて!』』』

みんな決意を新たに、笑顔で動き出した。

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