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コンビニおもてなしの各部門リーダー その1

 王都から戻ってきた辺境駐屯地の隊長ゴルアの話によりますと
「ポルテントチーネは余罪は多いものの、今まで何度も逮捕されておりますので裏付け捜査はほぼ済んでおります。そのため判決は結構早くに出るのではないかと思われます」
 とのことだった。
 ちなみに、その際には僕も証人として招致される予定なんだとか。
「他の被害者の多くは事情聴取で済むようなのですが、店長殿は被害に遭われた回数がずば抜けて多いものですから、衛兵局からもぜひにとの通達が……」
 そう言いながら、ゴルアは僕に書状を手渡しました。
 その書状は、ゴルアが言ったとおり王都の衛兵局からの物でして、近日中に開催される予定のポルテントチーネの裁判の際に証人として出廷してほしいと記されていました。
 出廷に際しての報酬のことや旅費のことなどが事細かに書かれているところなどは僕の世界のお役所とよく似た感じだなぁ、なんてことを考えながらその書状を読み進めていた僕ですが、
「……そうだね、なるべく前向きに考えておくから、詳しい日付が決まったらまた教えてくれるかい?」
 ゴルアにそう伝えました。
 それを受けたゴルアは
「おぉ、お受けくださいますか! ありがとうございます」
 安堵した様子でそう言いました。

 ゴルアも、この辺境駐屯地で隊長を務めてはいるものの王都の衛兵局の組織の中では相当下っ端の役人になるらしいし、上役から『絶対に承諾してもらってこいよ』とか言われて来てたんだろうな、この様子だと。

 メルアと共に馬に乗って帰って行くゴルアを見送りながら、僕はそんなことを考えていた次第です。

◇◇

 とりあえず、ポルテントチーネの案件に関しては改めて連絡が来るまで待つことにして、僕はコンビニおもてなしの業務へと戻っていきました。

 今の僕のコンビニおもてなしでの立ち位置はと言いますと、コンビニおもてなし本店の店長にして、コンビニおもてなしグループの会長といった感じでしょうか。
 今まではどこか漠然とした感じでしたけど、コンビニおもてなしも6号店がオープンしたことですし、一度枠組みを見直した方がいいのかもしれませんね。

 その日の夜、僕は組織図を作ってみました。

 まぁ、組織図といいましても、僕が会長的な立場にいて、その下にコンビニおもてなし・定期魔道船・おもてなし商会といった事業組織を横に並べているだけなんですけどね。
 実際、組織は結構大きくなってはいるものの従業員の数はそんなに多くないコンビニおもてなしですので、あまり大げさな組織にすることもないかな、と思ったりしている次第です。
 
 一応、組織全体をコンビニおもてなしグループとして、僕がその会長ということに。

 コンビニおもてなし部門は、店舗検討部門を担当しているブリリアンを総合リーダーにして、
 本店は僕
 2号店はシルメール
 3号店はエレ
 4号店はクローコさん
 5号店はシャルンエッセンス
 6号店はチュパチャップ
 テトテ集落の出張所はミミィ
 このメンバーが各本支店出張所の店長および責任者を務めます。
 ……そういえば、神界出張所の方は人が見つかったんでしょうかね……マルンからいまだに何の連絡も来ないのですが……

 テトテ集落・ティーケー海岸・ナカンコンベの3箇所にあるおもてなし商会部門は、これはもうナカンコンベ店のファラさんしかいません。

 定期魔道船部門は……ここは、バイトのテレコと勇者ライアナしかいないため僕が会長・本店店長と兼任します。

 薬品部門は当然スアがリーダーです。おもてなし薬局はこの部門に含むことにしています。

 ブラコンベのエンテン亭とナカンコンベの食堂ピアーグの2店がありますおもてなし食堂部門は、テンテンコウ♂にリーダーを務めてもらいます。
 この部門には、オザリーナ温泉宿の厨房の手伝いを行っています猿人のグー子も入ります。

 ヤルメキススイーツ部門は当然ヤルメキス。

 クキミ化粧品部門はクローコの妹のマクローコ。

 ガタコンベとブラコンベの2店舗展開しているおもてなし酒場は、先日から正式雇用させてもらったルアの妹のネプラナをリーダーにすることにします。

「……しかしなんか……こうして一覧表にしてみるとすごいことになってたんだな、いつの間にか……」
 書き上げた組織図を眺めながら僕は思わず感嘆の声をあげていました。

 このコンビニおもてなし本店の建物と一緒にこの世界に飛ばされてきてから今まで、一生懸命に頑張ってきた成果と言えるわけですけど……なんか、少し嬉しくもあります。

 元の世界では、本店しか残っていなかったコンビニおもてなしが、まさか異世界でこんなに大きく展開出来るなんて……
 なんて感慨に浸っていますけれども、このコンビニおもてなしを起業した爺ちゃんの時はまだまだこんなもんじゃなかったんですよね。
 何しろ、駅前のコンビニの上部に国際ホテルを誘致したり、一流料理店のシェフを専属で雇ったりとまぁ、金にあかしてすごい展開をしていた次第ですから……もっともその時もう少し堅実な経営をしてくれていれば、向こうの世界でのこのコンビニおもてなしも、もう少し違った展開を出来ていたような気がしてしょうが無いんですけど、こればっかりは後の祭りといいますか……

 とにかく、僕はそういった過去の出来事を踏まえつつ、一歩一歩地道かつ堅実に進んで行こうと思っている次第です、はい。
 
◇◇

 翌日の閉店後。
 店長・責任者会議が、オザリーナ温泉郷にありますコンビニおもてなし6号店2会の大広間を使用して行われました。
 この店長・責任者会議は週に一度、週初めに開催しています。
 以前は本店の奥にあります応接室で開催していたのですが、このコンビニおもてなしグループが大きくなり参加者が増えたもんですから本店の応接室では入りきらなくなってしまったんですよね。
 そのため、今は十分な広さがあります5号店の会議室か、ここ6号店の大広間で開催している次第です。

 ここ6号店で開催するのははじめてなのですが、集まった店長達は窓の外に広がっているオザリーナ温泉郷の様子を興味深そうに眺めていた次第です。

 そんな一同を前にして、僕は早速今日の会議を開催いたしました。

 まず最初に定期報告といたしまして、参加者のみんなから各店の状況報告を行ってもらいます。
 まぁ、ここでは特に問題事項の報告はなく、どの店も順調な様子です。

 次に、僕が今回発生しました定期魔道船襲撃事件に関する報告をしていきました。

 これに関しましても、魔導船や乗客・荷物に被害がなかったことと主犯のポルテントチーネとその部下が捕まっていたため、特に質疑などは出なかった次第です。

 最後に、僕から各組織のリーダー任命に関しての提案をさせてもらいました。
 昨日作成した一覧表を壁にはり、その内容を説明していきます。
 リーダー予定者には、全員この場に集合してもらっています。
 この会議に始めて参加したヤルメキスやミミィ、マクローコやネプラナ達が目に見えて緊張していますね。

「……と、まぁ、こんな感じで考えているんだけど、みんなどうかな?」
 僕がそうみんなに声をかけると、
「「「異議なし」」」
 との声が一斉にあがりました。

 その声に、僕も安堵しきりだった次第です。

 ちなみに、今日はこの後、新たにリーダーに任命させてもらったみんなと一緒に簡単な宴会を予定している次第です。
 ひょっとしたら、みんなそっちが楽しみで、早く承認してくれたのかも……なんてことをちょっと思ってしまった僕だったりします。

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