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俺の愛のカタチ

 俺の名前はメロリオ、25才の男だ。仕事はしておらず、親に養ってもらっている。いい年して無職なんて恥ずかしいと思う事もあるが、基本的には気にしていない。親が死んだら働けばいいのだ。親が生きているうちは子供を養うのは当然の事だ。親が勝手に俺を産んだわけだからちゃんと責任を取ってもらわないと困る。
 仕事もせずに何をしているかというと、それは勿論恋愛だ!恋の駆け引きほど面白いものはない。いつでも誰かに恋をしている。
 特別勉強ができるわけでもないし、魔法が得意というわけでもない。運動もできる方ではないが、恋愛だけには真剣に取り組んでいる。しかし、悲しい事にその愛が成就した事は今まで一度もないのだが…まぁいつか俺の魅力を分かってくれる女性が現れるさ!
 今日は前から好きだった女の子に思い切って告白しようと思っている。今度こそは報われるだろうか?俺は女の子が働いてるカフェに行った。
 花束を差し出し、勇気を振り絞って俺は告白した。

「前からずっとあなたの事が好きでした。俺と付き合って下さい!」
「すいません。無理です」

 嘘だろーーー!!またフラれちまったーーー!!

「なんで俺じゃあダメなんですか?」
「だってあなた働いてないじゃない。何か能力があるわけでもないし…」

 たったそれだけの理由で俺はフラれてしまったのか…

「俺はこんなに君を愛しているのに…」
「私はあなたの事そんなに好きじゃないのよ」

 そんなはっきりと言わなくてもいいじゃないか…

「わかったよ…」

 俺はうつむきながら店を出た。
 なんで俺の魅力が伝わらないんだ!こんないい男は他にいないぞ!俺をふった事を絶対後悔させてやるからな!
 俺は悔しさと悲しみから涙がでてきた。もう何度も経験しているが、やはりフラれるというのは嫌なものだ。自分の存在を全て否定されたような気分になる。
 はぁ…これからどうすればいいんだ…もう死んじゃおうかな…
 俺が絶望しながら歩いていると、目の前をとんでもない美女が通り過ぎた。
 むっひょー!ものすごい美人発見!どうしよう、声をかけてみようかな?でもなんて言おう?いや、はやまるな…チャンスはいくらでもある。まずは後をつけてみよう!
 俺は美女の尾行を開始した。
 けっこう歩くな…いったいどこまで行くんだろう…
 尾行を開始して20分が過ぎた頃。美女が家の中に入っていった。
 ここに住んでいるのか…よし、家はわかった。次の展開をどうするか…
 俺はしばらく本気で考えた。なかなかいい案が浮かばなかったのでありきたりな方法で接触を試みる事にした。
 水をコップにいれて、美女が出て来るのを待った。
 30分程待った頃。来た!作戦開始だ!
 美女とすれ違いざまにわざと転んで、コップに入った水を派手に美女にぶちまけた。

「わっ、ごめんなさい!大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫です」
「お金はちゃんと払いますので、勘弁して下さい」
「別に気にしなくていいですよ」
「それでは俺の気がすまないのです」 

 俺はまるで金持ちであるかのように見せるために、必要以上の大金をバッグから出し、美女に渡そうとした。

「こんなに頂けません」
「もらって下さい。金ならいくらでもありますから」
「そうですか…では頂きます」

 美女は金を受け取ってくれた。
 よし!作戦成功だ!とりあえず俺が金持ちであるという印象を植え付ける事ができた!これでこの美女は俺の事が気になり始めたはずだ!

「俺はメロリオといいます。今日はホントに迷惑かけてすみませんでした」
「私はエラリスです。気にしないで下さい。それでは失礼します」

 エラリスかー…素敵な名前だなぁ…年はいくつなんだろう?パッと見た感じでは俺とそんなに違わないように見えたけど…まぁ年なんていくつでもいいや。仕事は何をしてるんだろう?美容師とかが似合いそう。好きな男性のタイプはどうなんだろう?俺大丈夫かなぁ…
 この日は一日中エラリスの事を考えて過ごした。エラリスとあんな事やこんな事をする姿をイメージしながら。うへ、うへへへへ…
 エラリスも同じ気持ちだといいなぁ…
 何日か過ぎ、俺は再びエラリスと出会うためにエラリスの家の近くで待機した。
 来た!よし、行くぞ!

「あれ?エラリスさんじゃないですか?奇遇ですね。」
「メロリオさんじゃないですか。お久しぶりですね」
「先日はすみませんでした」
「いえいえ、いいんですよ」
「それにしてもこんな所で偶然出会うなんて、なんだか運命感じちゃいますね。俺達付き合っちゃいましょうか?」

 今回は自然な感じで告白できた。何日も寝ずに考えたセリフだ。今度こそはうまくいくはず!

「それは無理ですが、なんだか不思議な縁を感じますわ」

 くそったれーーー!!!またフラれたーーー!!なぜだ!?なぜなんだーーー!!!

「ははは、冗談ですよ。良かったらどこかでお食事でもどうですか?」

 まだまだ諦めんぞーーー!!!

「ちょっと私、用事がありますので遠慮します。ではまた」

 これで引き下がると思うなよーーー!!!いつかまたチャレンジしてやるからな!!
 俺はどうすればエラリスと付き合えるかを必死で考えた。来る日も来る日も考え続けた。かつてこれぼど熱心に何かに取り組んだ事があっただろうか?いや、ない。
 俺は本屋へ行き、恋愛のマニュアル本を片っ端から買い、読みまくった。何かいいアイデアはないか?何か一つぐらいあるだろう。しかし、これだ!と思えるものは一つもなかった。俺は仕方なくプレゼントで気持ちを引き寄せる作戦を実行する事にした。問題は何をあげるかだ。
 指輪なんてどうだろうか?でも指のサイズがわからないか。ブランドもののバッグなんていいんじゃないか?あっ、そんな高いもの買う金なかった…そうだ!犬をあげよう!この前近所のおばちゃんが生まれたばかりの子犬を引き取ってくれないか相談に来てたな。その犬をプレゼントしよう!
 俺はすぐに犬を引き取りに行った。もらってくれて助かるとおばちゃんに感謝された。子犬はとてもかわいらしく、早くも俺になついてきた。手放すのは心苦しいが、これも愛のためだ。俺は心を鬼にして、犬を連れてエラリスの自宅近くで待機した。
 10分ぐらい待つとエラリスが出て来た。

「おや?エラリスさんじゃないですか?」
「あら、メロリオさん。犬の散歩ですか?」
「はい、かわいいでしょ?この犬」
「とってもかわいいわ」

 エラリスは犬の頭をナデナデした。
 よし!やっぱりエラリスは犬好きのようだ。なんとなくそんな気がしたぜ!

「あの、もし良かったらこの犬もらってくれませんか?実は世話をするのが面倒になってきてしまって…」
「私、犬は好きなんですが、飼うのはちょっと…」
「そうですよね!ちょっと言ってみただけです」
「ところでメロリオさんって仕事は何をされてるんですか?」

 うっ…一番マズイ質問だ…どうする?嘘をつくか?いや、もし後でバレたら怖いし…俺は正々堂々自分の魅力で勝負する男だ!正直に言おう!

「今は無職です」
「え?無職?」

 エラリスの顔があからさまに変化した。完全に嫌悪の表情だ。やっぱり嘘つくべきだったかな?

「それでは私は失礼します」

 エラリスは俺に背を向けて歩きだした。

「あの、エラリスさん」

 エラリスはクルっと振り返って言った。

「あの…もう話しかけないでくれますか?」

 え?そんな…さっきまであんなに楽しく話していたのに…もうこれで終わりなのか?
 俺は下を向きながら歩き始めた。
 どうすればいいんだ?もう終わりなんて嫌だ!まだ何か手があるはずだ!考えろ!考えるんだ、俺!
 そうだ!ロテスとかいう探偵がどんな仕事でも引き受けてくれるという話を前に聞いた事がある。その人に相談してみよう!
 俺は急いでロテス探偵事務所を訪れた。

「どのような依頼でいらっしゃったんですか?」
「実は好きな子がいまして…どうしてもその人を振り向かせたいんです!魔法でどうにかなりませんか?」
「それはちょっと無理ですなぁ。自分の管轄外です」
「そうですか…」

 俺は諦めて事務所を出た。
 くそっ!何もできないくせに事務所なんて開くんじゃねーよ!バカヤロー!
 はぁ…これからどうしよう…
 俺はトボトボと歩き、家に帰り、自分の部屋に入った。
 その瞬間、俺は驚愕した。
 なんと、俺の部屋にエラリスがいるのだ!

「ど、どうしたの?エラリスさん」
「私、ロテスが魔法で作りだした幻影なんです。触れる事はできませんが、話す事だったらできますよ!」
「スゴイじゃないか!まさかこんな事ができるなんて!」
「1日1000ヘラスで幻影をお見せしますが、どうですか?」

 いい話じゃん!その話乗ろうじゃないか!だが、待てよ…なんか虚しくないか?こんな幻影で心の隙間を満たすなんて…確かに話せるのは嬉しいが、そんな事で満足していいのか?俺が好きなのはエラリス本人だ!幻影などではない!エラリス本人と話したいのであって、幻影と話などしても仕方ない!
 どれだけ時間がかかっても俺は本物のエラリスに認めてもらいたい。たぶん無職という事が原因で嫌われてしまったんだから何か仕事をしてればいいんだろ?明日から仕事探そう。

「せっかくだけど遠慮するよ。俺はいつか本物のエラリスをこの部屋に招待するから」
「そうですか。では失礼します」

 エラリスの幻影はフッと消えた。
 よーーーし、やるぞーーー!!!

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