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風魔法の使い手

 俺達は腹がすいてきたので、適当に木の実でも取って食欲を満たす事にした。周りの木々にはおいしそうな実がたくさん実っている。

「サラはあっちの方の木の実頼むよ、俺はこっちで探すから。20分ぐらいしたらまたここで落ち合おう」
「うん、わかった」

 俺達は二手に分かれて木の実を探す事になった。サラは時間が経つのも忘れるぐらい木の実採集に夢中になっていた。約束の時間から10分ぐらい経った時、サラの前に2人組のガラの悪い男達が現れた。

「ねーちゃん、金目のものは全部おいてきな!命だけは助けてやるぜ」
「嫌だね、やれるもんならやってみな」
「死んでから後悔するんじゃねぇぞ!!」

 男達は剣を振り上げた。

「ガトリングシャワー!」

 サラは相手が死なない程度に威力を調整して水魔法を使った。

「ぎゃあー」

 男共は倒れた。

「あっけないわね、もう盗賊なんてやめなよ」

 サラが油断して気を緩めた時、後ろでもう一人の盗賊の仲間の男が剣を振りかざした。

「スピライアー!」

 突然サラの後ろで剣を振りかざしていた男が吹っ飛んだ。声のした方を見上げるとそこには空を飛ぶ男の姿があった。ゆっくりとサラのもとへ降りてきた。

「危ない所だったね、かわいいお嬢さん。ケガはない?」

 空飛ぶ男はさわやかな笑顔で語りかけてきた。

「大丈夫だよ、ありがと」
「君、名前はなんていうんだい?」
「サラだよ、あなたは?」
「俺はスクル!風魔法が使えるんだ」
「それで空を飛べたり、さっきみたいな技ができたのね」
「おーい、サラー」

 俺は大きな声でサラを呼びながら、駆け寄った。

「時間になってもなかなか来ないから心配したんだぞ」
「ごめんごめん」
「それじゃあ、俺はもう行くね!またね、サラ」

 スクルはそう言うと、空を飛んで去って行った。

「すごい!空を飛んでる…何者なんだい今の人は?」

 俺はサラに問いかけた。

「私を助けてくれた人で名前はスクル。風魔法が使えるんだって」
「なるほど。ところでこの倒れてる3人は何?」
「私とスクルがやっつけた盗賊よ」

 俺達は採集した木の実を食べ、先へ進んだ。以外と近くに大きな町があった。こんな近くに町がある事を知っていれば、木の実を苦労して集めなくても良かったねなどと話しながら、町に入った。町の名はヘブリストン。多くの店舗が立ち並んでいるがその中でも俺達の目をひいたのは魔道具屋だ。さっそく中に入ってみた。

「色んな商品があるね。あっ、これかなり便利そうじゃない?」

 魔法がかけられた布でできた商品で、これを体に触れさせて誰かの顔を思い浮かべながら頭の中で話すと、その人に頭の中で話した内容が伝わるという優れものだ。この商品を持っている者同士であれば会話する事もできるというわけである。ちなみにこの魔道具の名前は「イコレア」というらしい。

「これかなり使えるな!よし、2枚買おう!」
 
 2枚購入して、店を出た。ちょっと日用品が不足していたので、雑貨店に入った。商品を見ているといかにも水商売風の女が近づいてきた。そして、アロルの横に並んで立った。すると、勝手に俺の手が動き、あろうことかその女性の尻を触ってしまった。

「キャアー、痴漢!」

 女はかんだかい声で叫んだ。

「違うんだ、手が勝手に動いてしまって…」

 俺は必死に弁解しようとした。横で一部始終を見ていたサラは今までみせた事がないほどの怒りを醸し出している。

「アロルのバカ!最低!信じらんない!」

 サラはビンタをしてきた。もろにくらってしまい、「バチッ」といい音がした。
 そして、サラは走り去って行ってしまった。
 サラは町のはずれまで走ってきて、ボーっと流れる川を眺めていた。しばらくすると、この町に来る前に倒した男達3人とさきほどアロルに痴漢された女性がやってきた。

「ねえちゃん、さっきはよくもやってくれたな。たっぷり借りは返させてもらうぜ」
「またやられにきたの?こりない人達ね」

 サラは呆れた顔で言った。

「こんどやられるのはねえちゃんだぜ」
「あっそ、じゃあいくわよ!ガトリング…」

 サラが水魔法を使おうとした瞬間、体が動かなくなった。

「何これ、どういう事?」
「私の魔法にかかった気分はどうかしら?お嬢さん」

 アロルに痴漢された女性が言った。

「もしかして貴方…体を操る事ができるの?」
「そうよ、なんでも思いのまま」
「それじゃあ、さっきのアロルの痴漢も貴方の仕業?」
「そういう事よ、なんにも悪くない彼氏を貴方はひっぱたいちゃったってわけ」

 サラは先ほど購入した魔道具を使って、アロルとテレパシーで話す事にした。

「アロルさっきはごめん。私がバカだった、アロルがそんな事するわけないのに」
「いいんだよ、それより今どこにいるんだ?」
「町のはずれの川の近くにいるんだけど…大変な事になってるの。さっきやっつけた盗賊とアロルに痴漢された女が襲ってきて、体の自由を奪われて動けないんだよ」
「わかった、今すぐ行く」

 アロルとの交信を切った。

「たっぷりかわいがってやるからな、ねえちゃん。おりゃ」

 サラは盗賊のビンタをくらった。

「けけけ、次は俺だ。おらっ」

 サラは腹を殴られた。

「俺は女をいたぶる趣味はねぇからよ、一発できめさせてもらうぜ」

 盗賊は剣を振りかぶった。振り下ろそうとした瞬間!

「スピライアー!」

 グルグルと渦巻く風の攻撃をくらい盗賊は倒れた。

「君はよく危ない目にあうね」
「スクル!来てくれたんだ!ありがとう」
「君が無事でなによりだ。さてと残りのゴミを始末するか」
「クズが!死ねー」

 盗賊はそう言うと剣を振り回した。スクルは空を飛んで攻撃を逃れた。

「スピライアー!」

 風魔法で2人の盗賊をまとめて始末した。

「さて、あとは君一人だがどうする?」

 サラの体を操ってる女にスクルが問いかけた。

「動きを止められるのは一人だけだから2人いると困っちゃうな。私達の負けだね、降参だ」

 そしてやっとアロルが到着した。

「はぁ…はぁ…サラ大丈夫か!?」

 俺は息をきらしながら聞いた。

「うん、またスクルに助けてもらっちゃった」
「ねぇちょっといい、君達って付き合ってるの?」

 スクルは不安な表情を見せながら尋ねた。

「え?ぜ、ぜんぜんそんな関係じゃないわよ!た、ただの幼馴染よ」

 サラが焦りながら答えた。

「なんだ、だったら俺と付き合わないか?サラ!君みたいなかわいい女性と出会ったのは初めてだ。一目ぼれってやつかなぁ」
「うーん…考えとく」
「わかった。今度会う時は返事聞かせてねー!それじゃ」

 スクルは飛び去って行った。

「付き合ってあげればいいじゃん、サラ」
「ううん、やめとく。ちょっと気になってる人いるし」
「そ、そうなんだ…」

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