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63章 地雷処理の仕事

「アカネさんには超高額のオファーが、たくさんきています。1兆ゴールド以上の仕事もありますよ」

 アカネに超高額のオファーを出せるなら、住民生活の改善に取り組めばいいのに。1パーセントを住民に分けるだけで、貧困から解放される人は多いのではなかろうか。

 仕事をすると、1パーセントの付与金を取られる。1兆ゴールドだと、100億円を寄付することになる。わずか1パーセントのはずなのに、非常に重く感じられた。

 1兆ゴールドをもらえる仕事は、まともなものではないはず。アカネは覚悟を決めて、質問することにした。

「1兆ゴールドの仕事はどのようなことをするんですか?」

「地雷に埋まっている地雷を撤去する仕事ですね。過去に500人ほど挑戦したのですが、あっという間に亡くなってしまいました。死亡以外で取り除かれた地雷は10個にとどまります」

 一般人の取り除けた地雷は、一人換算で0.02個。ほとんどの人間が地雷を除去できないまま、あの世送りになってしまった。

 地雷除去の話を聞くと、裏世界の探索がまともに思えてきた。「セカンドライフの街」には、想像を絶する仕事がたくさんあるようだ。

「地雷の残数は5000000個ほど残っています。1日で10000個を取り除けば、500日くらいで終わります」

 地雷探知機を使用して、1日に10000個も取り除けるとは思えない。マツリの計算は、根本から崩壊している。

「できることなら、今日中にいっていただきたいです。住民の生活がかかっています」

 1兆ゴールドをもらえるなら、地雷除去をやってもいいかな。アカネは仕事を引き受けることにした。

「わかりました。地雷除去の仕事をやらせていただきます」

「アカネさん、お願いします」 

 仕事に向かおうかなと思っていると、マツリから声をかけられる。

「フタゴトウの仕事もありますよ」

「フタゴトウ?」

「フタゴトウの生態を脅かす魔物がいます。それを退治するのが仕事です。こちらの報酬は3兆ゴールドです」

 魔物を倒すだけで3兆ゴールドは高すぎる。アカネは裏があるのかなと思った。

「フタゴトウは特殊な事情があるんですか?」

「フタゴトウは空気のない街です。通常の生物は立ち入ることはできません」

 空気のないところにおける仕事なのか。アカネだけの特権事項といえる。

「フタゴトウの生物が悪さをしているようです。退治しようとすると、空気のないところに逃げ込んでしまうので、手に負えないといっていました」

 逃げている人を絶対につかまえることのできない、鬼ごっこみたいなものか。住民の力がどんなに優れていても、どうすることもできない。

「フタゴトウの生物の攻撃力は、裏世界の30倍くらいの強さです。アカネさん以外は、一秒であの世行きです」

 裏世界の人間はあまりに弱かったので、マツリの話は参考にならなかった。

「他の仕事もありますけど、地雷処理を先にお願いします」

「わかりました」

 当分は家に帰ることができないのか。アカネは悪いように考えてしまったことで、仕事に対するモチベーションは大きく下がることとなった。

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