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第10話 わらわは♂これで魔王をやめました(20)

 それも? ウフと、女神の微笑みを、と、言うか?


 魔王ルシファーさまは、女神ではなく現魔王さまなのだから【魔王の笑み】を浮かべ、微笑しながら柔らかい声音で呟く。

「えぇ、えええ~。本当にいいの~? ルシファーさん~? 爺さんが勝手に決めたことだよ。君の気持ちも考えずに……。それでもいいの? ルシファーさんは?」と。


 一応は本人、魔王ルシファーさまから、一樹自身の嫁になることに対して異存はないと呟く。魔王ルシファーさまなのだが。それでも一樹は? ルシファーさま自身が、己の嫁になることに対して、実は抵抗……不快感を募らせているのではないかと問いかけてみたのだが。魔王ルシファーさまの様子を凝視すればわかる通りで、彼女は相変わらず気にもとめてもいない様子……。



 こんな漆黒の闇に包まれ、ジメジメとじた辛気臭い城内でも御日様──。日輪のようにニコニコ微笑んでいる状態だから。

「(俺には姉さんがもう既にいるから、どうしよう?)」

 と、言った状態に一樹は陥っている始末、だけでない。

 一樹はこちらの世界……。



 そう、彼が産まれ育った世界は、こちらの中世的な世界ではなく。近代的な世界の日本で産まれ育った彼だから。一夫多妻制──。ハーレムと呼ばれる夫婦の関係が良くわからないのだ。

 だって今の令和の日本は、第二次世界大戦前の妾(めかけ)を囲うと言うことが禁止になっている一夫一妻だから。魔王ルシファーさまを一樹が嫁にすれば、重婚罪に触れ、犯罪行為となるから。日本で住み暮らしている一樹は、安易に返事をする訳にはいかない。

 だから一樹は、「(困った! 困った!)」と、思うだけではない。

「(本当に困ってしまって~。ワンワンな状態だな~。俺は~)」と。

 愚痴を漏らしたくなる衝動に駆られる。

 でも、このまま? この件を安易に終わらす訳にはいかないから。

 一樹は一応自分には、心に決めた女性(ひと)がいる。

 と、言うよりも?

 自分にはもう既に妻がいる。

 それも? 魔王ルシファーさまの姉である朱華嬢だと言うことを彼女にちゃんと説明しようと心に決め──。

 魔王ルシファーさまへと。

「あの~? ルシファーさん?」と。

 恐る恐る一樹は、話しかけるのだった。


 ◇◇◇◇◇

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