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やってやるぜ、大武闘大会! その4

 闘技会場では、これから大武闘大会の予選が始まります。
 初日の今日は団体戦が行われます。

 闘技会場が4つに仕切られていまして、同時に4試合行われるようですね。

「ドドナ! 領主様のお子様の警護をほっぽりだして何してやがんだ!」
「もご!? もごごもごももも!?」
「わからん! とにかくまず口の中を空にしろ!」
 ん?
 なんか屋台の向こうの方から大きな声が聞こえてきた気がしたのですけど……何かあったのかな?
 そんな事を思いながら、その声の方へ視線を向けかけた僕なのですが……その視線が会場の一角に釘付けになってしまいました。

 その会場には、見覚えのある方々の姿がありました。
 そうです、魔王ビナスさんの内縁の旦那さんことウインダさんと、その内縁の奥さんであるミラッパさんとロミネスカスさんの3人です。

 でも、僕がびっくりしたのにはもう一つ理由がありました。

 ウインダさん達と対峙している3人のウチの1人に見覚えがあったのです。
 えぇ……間違いありません。
 その3人の真ん中に立っているのって……あの勇者マックスさんに間違いありません。
 で、その横には自分の体の倍以上ある巨大な剣を構えている男性と、白いドレスを来た女性が控えておられます。
 このお2人に見覚えはありませんが……おそらくは勇者マックスさんに従っていたという従者の方々なのでしょう。
 この世界では伝説的な英雄のマックスさんが参加しているなんて、びっくりです。
 マックスさんは偽名を使っていましたので、その正体に気付いている人はいないようですね。

 魔王ビナスさんの話だと、勇者ウインダさんは「戦いたい相手がいる」みたいな事を言われてこの大会に参加されたとお聞きしてましたけど……その相手って、まさかこのマックスさんだったんじゃ……
 2人とも勇者ですからね、組み合わせを魔法で細工することぐらいお茶の子さいさいでしょうし。

 僕がそんな事を考えている中、予選第一組がスタートしました。

◇◇

 予選は5分で行われます。
 互いの陣地に旗がありまして、時間内にその旗を奪うか、
 相手を全員戦闘不能に追い込む・ギブアップさせる・場外へ押し出す
 それらを成し遂げ、最終的に敵3人全員を失格させたチームの勝利になります。
 時間内に上記の内容が達成されなかった場合、脱落者が少ない方の勝利。
 脱落者が同数の場合は、終了時点で相手陣営により攻め込んでいたチームの勝利。
 
 で、各チーム持ち点が10点ありまして、

 勝てば減点なし
 負けるとマイナス2点

 減点方式で予選が続けられまして、持ち点がゼロになったら失格です。
 最終的に、決勝トーナメントに参加出来る16チームになるまで予選が続けられます。

 1勝するだけでも結構な賞金がもらえますので、目指せ1勝!なチームも数多く参加しているもんですから、予選参加チームは500近くいるそうです。

 で、その予選第一組ですが……他の3箇所の皆さんには申し訳ないのですが……会場の注目は予想通り勇者ウインダチーム対勇者マックスチームの一戦のみに注がれていました。

 何しろ試合開始と同時に、白いドレス姿の女性がサラマンダーを召喚したもんですから会場中が湧き上がりました。この世界には竜が少ないですからね、しかもそれを召喚出来る人となるとさらに珍しいですからね。
 小型のサラマンダーでしたので会場内に収まっていたのですが、このサラマンダーを巧みに操りながら攻め込んでいった白いドレスの女性なのですが……それをミラッパさんが
「大車輪ミラッパパ~ンチ!」
 一発で場外に吹っ飛ばしてしまったんです。
 開始早々のその攻防だけで、会場中が異常な熱気に包まれていました。
 
「タンク! ぼーっとするな!攻め込むぞ!」
「そ、そんなことを言われてもだね、リッテリア」
 その横の会場で戦っているかなり太めな騎士さんと、凜々しい姿の女騎士さんがそんな声を掛け合いながら攻め込んでいるんですけど、そっちには誰も注目していません。

 で、結局マックスさんチームとウインダさんチームの戦いは、その後ウインダさんチームの魔法使いロミネスカスさんがマックスさんに場外に吹き飛ばされて2対に2になったのですが、中央ラインを境にすさまじい攻防が繰り広げられた結果、試合終了直前に疲労困憊状態だったミラッパさん捨て身の
「ミラッパ体当たりー!」
 が繰り出されました。
 まぁ、当然これ、かわされたのですが……そのままミラッパさんはマックスさんチーム陣営の奥深くまで転がっていきまして……そのまま旗をもぎ取ってしまったんです。

 そんなわけで、大逆転でウインダさんチームが勝利しまして、会場内は大歓声に包まれていきました。

 後で魔王ビナスさんに聞いたのですが……勇者ウインダさんは、勇者マックスさんの従者の一人が持っておられたでっかい剣がほしかったんだそうです。
 あれ、結構な宝剣だそうでして、宝剣マニアのウインダさんに言わせますと、
「一生に一度、お目にかかれたら奇跡と言えるほどの宝剣」
 なんだそうです。
 
 で

 ウインダさんとマックスさんは、
 ウインダさんが勝てばその宝剣を
 マックスさんが勝てばウインダさん秘蔵の宝剣を10本
 それぞれ賭けていたそうなんです。

 で、目的を果たしたウインダさんチームはこの一戦で棄権。
 マックスさんチームも、従者さんが剣を無くしたことで戦意喪失したたためここで棄権と相成った次第です。 

 ちなみに、その隣で頑張っておられた太めの騎士さんのチームは残念ながら負けてしまったようですね。
 女騎士さんが何かやらかしてしまったらしく、太めの騎士さんの前で土下座を繰り返しています。
 ……そっちの試合を気にしていたのって、会場広しといえども多分僕だけでしょうけどね……

◇◇

 僕は、予選の間、お弁当を売りに会場内を歩き回っていきました。
 このバトコンベではタテガミライオンが珍しいらしく、タテガミライオンの肉の弁当は飛ぶように売れていきます。

 その間に、イエロチームも予選を着々とこなしています。
 戦い方としましては、まずイエロとグリアーナが剣で敵陣に攻め込んでいきまして、隙を見つけてセーテンがスピードをいかして旗をゲットしてしまう、と、いった具合です。
 グリアーナが場外に吹き飛ばされてしまうケースが何度かあったものの、セーテンが着実に旗をゲットしていって、結局イエロチームは予選を無失点で切り抜けました。

 参加チームの中には、ビキニ・アーマーの女の子のチームや、女子プロレスっぽいコスチューム姿の人達のチームなんかもありましたけど、それらのチームも予選を通過していたようですね。

 ただ女子プロレスっぽいコスチューム姿のチームは2チーム出場していたのですが、
 魔法使いっぽいコスチューム姿の小柄な女の子が
「マジカルククレアナホームラーン!」
 とか言いながら魔法使いの杖みたいな武器で相手をぶんなぐろうとして、誤って味方の小柄な女の子を吹き飛ばしまくっていたんですよね……えぇ、そっちのチームは早々に持ち点無くなって失格になってましたけど。

◇◇

 予選の最終組が終了したところで会場は昼食休憩になりました。
「イエロ、セーテン、グリアーナ予選突破おめでとう!」
 屋台の場所へと戻って来た3人を僕は拍手で出迎えました。
 すると、周囲の観客の皆さんからも拍手喝采が沸き起こっていきました。

「よう、黄色い鬼の姉ちゃんすごかったな!」
「猿の姉さんもいかしてたね」
「緑の鬼の姉さんは……もうちょいガンバレ」

 そんな歓声を受けながら、イエロは右腕をあげてそれに応えていました。

 イエロ達は、屋台の後ろでみんなと一緒にお昼を食べることにしています。
 で、みんながご飯を食べている間、僕は屋台の応対をしていました。
 お昼休憩中ですから、屋台にはたくさんのお客さんがやってきています。
 中には、予選敗退した方々の顔も見えました。

「タンク……この失態を私はどうやって償えば……」
「だから、気にしなくていいですよ、リッテリア」

 あの太めの騎士さんと凜々しい女騎士さんも弁当を買いに来てくださったんですけど……どうやらこの方々のチームは予選敗退してしまったようですね。

 ちなみに、スア製の薬が良く効くと評判になっていまして、試合で怪我をしたって人達が薬を求めてかなりの数お見えになっています。

 そんな感じで、コンビニおもてなしの屋台はお昼休みの間も大盛況でした。

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