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59 しばしのお別れ

〖驚いたわね〗
〖ほんとに…まさかこんなことがあるなんて〗

サーヤたちがプレゼントしてくれた花冠を見ながら涙ぐむ神様二人。

〖これでもしかしたらシアは…〗
〖ああ。目を覚ますかもしれない〗
〖良かった…〗
〖早くその花を届けないと〗
〖ああ。そうだね。でも…〗
〖そうね。ちゃんとあいさつしないと。あと伝えることは伝えないとね〗
〖ああ。そうするよ 〗

伝えなきゃいけないことはまだ残っている。お別れはその後…


〖サーヤおいで〗
「あい」
とてとてやって来たサーヤを抱っこする

〖サーヤにはこれからもっともっと仲間が増えるからね。みんな仲良くしてあげてね〗
「あい!」
きっとサーヤなら大丈夫だよ

〖でも、あんまりお転婆はしないでね。みんなが心配しちゃうから〗
「あい~」
さっきのお説教を思い出したみたいだね。「あい」だけで表現するとは器用だね。

〖ふふっ それからね、サーヤの能力のことなんだけど〗
「ふぇ?」
喜んでくれるかな?

〖まだ説明してなかったでしょ?サーヤだけの特別な魔法だよ〗
「ふぉ?」
ふふ。百面相だね

〖おそらく、サーヤの役に立つ能力だよ。そうだね~例えば、サーヤの食べたいご飯は何?〗
「たべちゃいもにょ?」
〖そうだよ。何食べたい?〗
ふふ。なんでそんなこと聞くの?って顔だね

「んちょ、おこめ!ちろいごはんちょ、おみちょちるたべちゃい!にほんじんにょ、ちゃまちい!」
お米、白いご飯とお味噌汁?日本人の魂?おばあちゃんの受け売りかな?

〖そう。そしたら、お米の育て方を頭の中で探してみて 〗
さあ、驚くかな?

「にゅ?しゃがしゅ?…ふぉぉぉぉ!?」
みるみる可愛いおめ目があいてくるね
〖どうだった? 〗くすくす
どうやら成功したかな?

「そだちぇかちゃかりゃ、たべかちゃまで、ぶぁあーっでちぇきちゃ!」

〖良かった。できたみたいだね。それが能力のひとつ【異世界辞書】だよ。サーヤが思った食材なら、育て方から、調理方法まで出てくるよ〗
ぶぁあーって腕を大きく広げてるところを見ると沢山でてきたみたいだね

「ふぉぉぉぉ!しゅごー」
サーヤのおめ目がまん丸だね。

〖それでおばあちゃんと作ってたお庭と、お料理作れるね?他にも遊んでたものとかも作れるよ〗
みるみるサーヤの顔が輝いていく。ふふ。そんなに目をきらきらさせて。それだけでも嬉しいよ。

「ふぁあああっ あいがちょう!!…ありぇ?」

〖くすくす。 どうした?〗
ふふ。全部表情に出て可愛いな。

「たにぇは?たにぇ、にゃいちょちゅくれにゃいよ?」
ふふ。気づいたね。大丈夫だよ

〖ふふっ 辞書の中に【美味しい食べ物の種】ってページ思い浮かべてみて?〗
サーヤなら出来るよ。

「にゅぅ~?」
唇がタコになっているね。

「あっ!あっちゃ!おこめもありゅ!」

〖うんうん。じゃあ手のひらにその種が出てくるように念じてみて?〗
さあ、ちゃんと出来るかな?がんばって。

「ふぇ?たにぇ、でりょ~…」
ちっちゃい魔女みたいだね。
「あっ!でちゃ!」
小さい手の平に一粒の種もみがあった。

〖おぉ!成功だね。これはもうひとつの能力【種子生成】だよ〗
ふふ。成功してよかったね。

「ふぇ~ しゅご~!!」
ふう~ぅ
「でみょ、ちょっちょ、ちゅかれちゃ?」
うん。やっぱり少し疲れちゃったか。初めてだしね。

〖そうだね。まだ上手く魔力が使えないからね。だからね、必ずこの能力使う時は誰かに相談して、誰かと一緒にやるんだよ。決して勝手にやったり一人でやっちゃダメだ。あと、まずは魔神ちゃんに魔法を習ってからね。約束できるかい?〗
サーヤの可愛いお鼻をちょんっと突いてみると
「あい!やくちょく!」
元気な返事だね。約束は守ってね?

〖いい子だ。種のことだけじゃない。何かやりたいことがあったら必ず誰かに相談してね〗
みんな心配しちゃうからね。もちろんぼくもだよ。
「あい!ぜっちゃい!!」
うん。信じてるからね

〖いい子だ!〗
サーヤの頭を撫でると
「えへへへへ♪」
頭なでなで嬉しいな。と思っているのが伝わってくる。サーヤは撫でられるの好きだよね。

〖それじゃあ、名残惜しいけど、そろそろ行かないとね。シアにも花冠渡さないと。みんなの言うことよく聞いて、元気ないい子でいてね〗
残念だけど行かないとね

「あい…」うりゅう~

〖また会いに来るからね〗
必ず戻ってくるから、泣かないで

「あい…」
ギューッとサーヤが抱きついてくれる。

〖大好きだよ〗
いつも見守ってるからね。

「あい。さーにゃみょ、だいすち」ぎゅう
〖ありがとう〗
泣きそうなほど、嬉しいよ。

〖それじゃあ、みんな。サーヤのこと、よろしく頼むよ〗
サーヤの新しい家族の顔を見渡す。

〖任せなさい〗
サーヤを魔神ちゃんに渡す。本当は連れていきたいくらいだけど、今はみんなに任せるしかない。

『我ら森の一同、全力でお守りします』
ギンが力強く約束してくれる。頼もしいね。よろしく頼むよ。

『『はい』』
ぴゅきゅ『『だいじょうぶ』』
『まもるよ~』
キッキキッ『『がんばる』』
『『『まかせて~』』』
フゥとクゥ、ちびっ子同盟も健在だ!

〖ありがとう〗
私の思いを知ってか、みんなが約束してくれる。やはり、フゥとクゥを選んだことに間違いなかった。ちびっこ同盟もいつもサーヤと一緒にいてくれるだろう。
〖ん?ちびっ子同盟?何か忘れてるような…?〗
なんだっけ?
〖何よ?早く思い出しなさい〗
魔神ちゃん、冷たい…待ってよ今思い出してるから。

みんなが主神を見つめていると
〖ん~?あっ!そうだ!サーヤと本契約しなくても、サーヤが名前をつけるだけでも、繋がりができて強くなるよ!って言いたかったんだ!〗
やっと思い出した~

「ふえ?」
『『『『え?』』』』

〖あ~スッキリした!〗
これで伝えることは全部かな!

〖このバカ……〗
最後に爆弾を…魔神は歯ぎしりしながら眉間を揉んでいる

〖じゃあ!またね!!〗
必ず戻ってくるからね!

スーッと光と共にイル様が消えると

「ほあ?」
『『『『え~!!!』』』』
サーヤたちの絶叫が響く…

そして主神が最後に爆弾を投下して帰ったあと、サーヤの前に名付けを待つ行列が出来たことは言うまでもない。

「ふぎゃぁぁぁー !」
「いりゅしゃまの、おばか~!!」

〖え~?ごめーん〗

『『『『はぁ~ぁ』』』』
〖主神、次きた時、覚えてなさい〗

あ~あ…

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