56 サーヤのかわいい姿を
〖くすくす。あ~なんだかいいところ全部、魔神ちゃんに持ってかれちゃった感じだね~〗
まったくもう、男前なんだから~
〖何よ主神、あなたまだいたの〗フンっ
〖 え~そりゃないよ魔神ちゃん!!〗
もう、つれないんだから。まだ追い出さないでよ?
つんつん。
ん?服を引っ張られた気がして下を見ると、サーヤが涙を浮かべて見上げていた。
「いりゅしゃま、もういっちゃう?」
かわいい大きな目にどんどん涙が溜まってくる。
〖そうだね、もう少ししたら行くようだね〗
泣かないで。ぼくだって本当はもっと一緒にいたいんだよ。
しゃがんでサーヤの視線に目を合わせ、かわいい顔には似合わない涙をそっと拭ってあげる
「
ん?シア?
〖うん。シアもいるよ。今はちょっと休んでるから、しばらくしたら彼女もサーヤに会いに来るよ〗
今はまだ来られないけど、必ずなんとかするからね。
サーヤは何やら考えてから
「
と、お願いしてきた。首を傾げてうるうるお目目。こんな攻撃受けて断れるわけが無い。いや、断れば悲劇が待っているね。だって、背後に忍び寄る魔神ちゃんの影が…ゆら~り
〖分かったよ。サーヤ。あと少しね〗
サーヤの頭を撫でながら言うと、サーヤの顔が分かりやすくパーッと明るくなった。
「あい!
にぱーっと笑顔になったかと思ったら
「ふぅ~、くぅ~みんにゃ~」
と言って走っていってしまった。早く戻ってきてね。
〖主神。シアは大丈夫なの?〗
サーヤが行ってしまうと、魔神ちゃんがみんなに聞こえないように話しかけてきた。
〖ああ。急ぐためにちょっと力を使ってしまったからね。ヤツが迫ってるのに気づいた時には肝を冷やしたけど、何とか間に合ったから直接何かはされてないはずだよ 〗
サーヤを送り出したあと、戻ったぼくに何があったか報告するなり倒れ眠りについてしまったシア…
〖そう。ならいいんだけど〗
〖しばらく休ませるよ〗
〖そうしてあげて〗
魔神ちゃんもシアを心配して元気がない。何とか元気になってもらいたいな。
〖そうだ!君がさっき作った映像魔法!あれを天界に転送することは出来ないかい!?〗
〖え?〗
〖ほら、そうすれば我々が見逃したサーヤの姿を見れるし、シアも見れるじゃないか!〗
シアが起きて、映像を見たら絶対に喜ぶはず。いや、もし声も聞かせられるなら眠っているシアのそばで上映会を開けば目覚めてくれるかもしれない。
〖そうね。そうすると映像を誰でも撮れて、保存できて、映し出すものなんかもいるわね〗
魔神ちゃんもその気になって来たみたいだね。
〖そしたら魔道具にしてしまった方がいいのかな?〗
〖それ!いいわね!そうすると、魔道具を作れる者が必要になるわね…天界とこちらと両方に必要よね。そうなると鍛治神、いえ、工芸神かしら?それと私が協力すればいいかしら〗
あれこれ考えて、協力してくれそうな者を思い浮かべる。
〖美術的にもこだわった方がいいかな?〗
〖そうね。天界には工芸神がいるから大丈夫よね。問題はこちらね。まずはこちらとあちら、伝い手となる者が必要かしらね?工房なんかも必要ならドワーフかエルフは早急に必要ね…〗
〖そうだね…〗
〖主神!帰ったら早急に手配なさい!分かったわね!〗ぎゅうう~がくがくがく
〖わ、分かったから落ち着いて~ くっくるちい〗
興奮した魔神は主神の首を締め上げていた。
〖あ、あら。おほほほほほ〗ぱっ
〖も~、ひどいよぉ魔神ちゃん。けほけほ〗
まったく、加減ってものを覚えてくれないかな?でも、少し元気になったみたいだね。
〖ケホッ まあ、でも真剣な話、サーヤの食事とかも、いつまでも木の実や果物ってわけにはいかないからね。料理人や、畑とか作れる者もできるだけ早くしないとね〗
サーヤには今度こそ健やかに育ってもらわないと。そのためには食事の問題は早急に何とかしないとね。
〖ええ。頼んだわよ、主神〗バシッ
魔神ちゃんに背中をバシッと叩かれた。
〖分かってるよ〗
うん。気合いも注入されたし、今度こそサーヤを幸せにするために、みんなが幸せになるために、出来ることは何でもしないとね。