第5話 【雪山の温泉 其の5】
せかへい 外伝21
著者:pirafu doria
作画:pirafu doria
第5話
【雪山の温泉 其の5】
エスとルンバは雪の壁を作る。エスはかなり平べったいが、ルンバは厚い壁だ。
しかし、ルンバは壁が厚いが高さが低い。
「このくらいか?」
エスが近くで雪の玉を大量に作っているカナーに聞いた。
カナーは二人が作った雪の壁を見ると、
「うん、そんなもんでいいでしょ。サンキュ!」
と適当に返事をした。
雪玉をある程度作り終えると、二人を呼んで並べた。
そして腰に手を置くと胸を張る。
「これから雪合戦を行う!!」
と自慢げに宣言した。
ルールは簡単、相手に多く雪玉を当てたほうが勝ち。二人の作った壁が陣地で、その間にある線を越えてはいけない。
「じゃあ〜、まずルンバ!! 私と勝負よ!!」
カナーはそう言って、ルンバと一対一の雪合戦を行うことにした。
二人はお互いの陣地に行く。そしてエスが試合開始の合図をした。
「スタート!!」
始まったと同時にカナーが連続で雪玉を投げる。しかし、ルンバの作った壁は頑丈だ。ルンバは壁に隠れている限り雪玉に当たることはない。
だが、しかし、隠れているだけでは攻撃ができない。
「ほらほら! いつまで隠れてるの!!」
カナーは雪玉を投げまくる。しかし、この勢いで投げ続ければ、いつかは弾切れする。
ルンバはそれを狙っているのだ。
そしてついにその時が来た。カナーの攻撃が止まったのだ。
「よし、今だ!!」
ルンバは今がチャンスと顔を出す。しかし、
「ばふ!!」
ルンバの顔に雪玉が直撃した。
カナーの陣地にはまだ雪玉が残っている。カナーはわざと雪玉が切れたと思わせて、ルンバに顔を出させたのだ。
「かかったね!!」
カナーはルンバに逃げる隙も与えず、雪玉を当て続ける。
ルンバは慎重な少年だ。何事も慎重に行う。しかし、雪合戦なんてしばらくやっていなかったことで、ルンバはそこに注意を払うのを忘れてしまっていた。
「あんたに隙をあげると、私の動きを読んでくるからね。絶対に反撃はさせない」
カナーの猛攻でルンバは雪まみれになってしまった。全身雪だらけでびしょびしょになったルンバは、降参を宣言した。
「降参〜!!」
「やった!!」
カナーはジャンプして喜ぶ。かなり嬉しかったようだ。
ルンバを最初の相手に選んだのも、ルンバに動きを読まれないための作戦。全ては計画のうちだったということだ。
「さてと、じゃあ次は……」
カナーはそう言うと次の標的の方を見る。
エスは全力疾走で逃げた。