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ララコンベどったんばったん その1

 ティーケー海岸でのお祭は盛況のうちに幕を閉じました。

 最終日には、コンビニおもてなしの社員と関係者のみなさんの慰労を兼ねて、みんなでティーケー海岸に出向いた僕達なのですが、スアが海の中に設置してくれた簡易小屋で海を思う存分満喫した次第です。
 何しろ窓から飛び込みが楽しめる上に、その窓がこれでもかってくらいのオーシャンビューなわけです。
 日が暮れて、浜辺で後夜祭が始まった後も、その光景をここから満喫させてもらった次第です。
 翌日の仕事のこともありますので、全員と言うわけには行きませんでしたけど、希望者はみんなここに宿泊したんですよね。
 波の音を聞きながらのんびり眠りにつける……ホント、最高なシチュエーションでした。

 リンさんのお母さんのランさんが、
「店長さんには、ほんとに何から何まで御世話になってしまって」
 そう言って頭を下げてこられました。
「いえいえ、これからリンさんに御世話になるんですし、こちらこそこれからよろしくお願いいたします」 そんな会話を交わした次第です。
 
 その後、ペリクドさん・ルア・イエロ・セーテン・グリアーナ達が酒盛りを始めたため、僕もそこに連れ込まれました。
 いつの間にかスアも僕の隣にちょこんと座っていたのですが、お酒はあまり飲みたくなかったらしく魔法で気配を消していました。
 飲み会にはその後、シャルンエッセンス・シルメールといった各支店の店長も加わってきたのですが、4号店店長のクローコさんだけは
「リゾラバはまだ終わってないし!」
 と叫びながら、後夜祭が行われている海岸に向かって泳いでいった次第です。
 結果は……まぁ、聞かないであげてください。

◇◇

 翌朝から、コンビニおもてなしは通常営業に戻りました。
 
 各支店は、いつも通りの営業を開始しています。
 もちろん本店も通常営業です。

 ティーケー海岸のアルリズドグさんからは
「いやぁ、祭りを盛り上げてくれてありがとな」
 と、大いに感謝の言葉を述べられた後、
「でさ、例のコンビニおもてなしの出店の方も考えてくれよな」
 と、申し添えられた次第です。

 ティーケー海岸にはおもてなし商会ティーケー海岸支店がありまして、ファラさんがここの責任者をしてくれていた際には弁当販売などを行っていたのですが、ファラさんがナカンコンベに出来たおもてなし商会ナカンコンベ支店に異動したのに伴い、ファラさんの遠縁にあたるファニーさんが責任者を務め始めたのに伴いまして、ファニーさんが業務になれるまでは商会以外の業務、お弁当販売などですね、それらを一旦中止にしているのですが……ファニーさんがですね、いつまで経ってもGOサインを出してくれないんですよね。
「いやぁ……なかなか慣れなくて……どうもすいません」
 僕が話を振ると、いつもそう言いながら視線を反らすファニーさん……以前からちょっとめんどくさがりといいますか、やる気がない感じな方ですので、おそらくその流れなんだろうなぁ……とは思っているのですが、やる気がないのに無理矢理お願いするのもあれですし、それにアルリズドグ商会から魚介類を仕入れる仕事に関してはファラさん並みにきっちりこなしてくれていますので、それ以上言うのもあれかな、と思っている次第なんですよね……なんとも悩ましいといいますか……

 そんなわけで、ブリリアンとメイデンの店舗検討部門の2人に、ティーケー海岸の調査を優先して始めてもらった次第です。
 この結果次第で今後の対応を検討しようと思っています。

◇◇

 そんな中、ララコンベでちょっと困った事態が起きているようです。
 ティーケー海岸でのリゾラバに失敗して……あ、言っちゃった……と、とにかく、やや落ち込み気味な4号店店長のクローコさんによりますと、
「なんかね、温泉の量が急に減った? みたいな」
 そんな話を温泉宿の皆さんが商店街組合の皆さんとしていたんだとか。
 
 このララコンベの温泉はしっかり事前調査を行っていまして、その結果十分な湯量が見込めていたはずですから急にそんなことは起きないはずなんですけどね……

「不思議な事があるもんだなぁ」
「みたいな……」
 4号店で、クローコさんとそんな会話を交わしていた僕なのですが、
「ごめんください~」
 そんな店内に1人の女性が入ってきました。
「はい、いらっしゃいませぇ」
 クローコさんが早速接客に向かったところ、その女性は
「あ、いえいえ、私、お客といいますか、こちらのコンビニおもてなしの責任者の方とお話をさせていただきたくてお邪魔させていただいたのです~」
 ニコニコ笑いながらそう言われました。

 その女性。
 身長はクローコさんと同じくらいで、かなりの童顔です。
 黒縁の眼鏡をかけているせいで、ちょっとガリ勉少女な雰囲気が無きにしもあらずですね。

「クローコが、この4号店の店長、みたいな?」
「あぁ、あなた様がこのお店の店長さんですか~」
 そう言うと、その女性はクローコさんに名刺を差し出しました。

『オザクザク商会 営業担当 オザリーナ』
 
 その名刺にはそう書かれていました。
「そのオザリーナちゃんが、何のご用心、みたいな?」
「はい、単刀直入に申しあげます~。こちらのコンビニおもてなしさんをですね~、移転していただきたいのです~」
「「は?」」
 オザリーナの言葉に、僕とクローコさんは同時にびっくりした声をあげました。

 で

 話の内容が内容ですので、奥の応接室でお話を伺うことにしたのですが……
「実はですね~、今、このララコンベでお店をなさっている皆様全員に声をかけさせていただいてですね~、我がオザクザク商会が建設を進めています新しい温泉都市への移転交渉をさせていただいているのです~」
「温泉都市ですか?」
「はい~、そうなんです~。このララコンベから少し離れた場所でですね~、我がオザクザク商会が新しい源泉を発見したのです~。そこで~、そこに温泉都市を建設しようとしているのですよ~」
「はぁ、それはいいのですけど……だからといってこのララコンベのお店に移転を働きかけるなんて」
「あぁ~、絶対に移転ってわけではないのですよ~、支店でもいいですし~、とにかく新しく出来る温泉都市に~、なんらかの形でお店を出店していただきたいわけです~。そして、ゆくゆくは~、こちらのララコンベさんと友好都市協定を結ばせていただいて~、お互いが相乗効果で発展していけたらな~、と思っている次第なのですよ~」
 オザリーナは終始ニコニコ微笑み続けながらそう言いました。

 そうですね……
 確かに、近くに温泉都市が出来たとして、オザリーナの言葉通り友好的な関係を築こうとしてくれるのでしたら、それはララコンベとしても願ってもないことだとは思います。

「このお話は、商店街組合にはされたのですか?」
「はい~、しばらく検討の時間をくださいとのことでした~。なんだか他のことでお忙しそうな感じでしたので~」
 あぁ……他のことで忙しそうというのは、さっきクローコさんが言っていた温泉の湯量が減ったことでしょうね。

「商店街組合が態度を明確にされていないのでしたら、コンビニおもてなしとしても今の段階ではなんともお返事しにくいですね……とりあえず、ララコンベ商店街組合さんが態度を明確にされてからお返事させてもらってもいいですか?」
「はい~、もちろんです~。今日は~、あくまでもご挨拶に伺った次第ですので~」
 そう言うと、オザリーナは何度も頭を下げてから4号店を後にしていきました。

 ふ~む……
 なんかいろいろ気になる話ですね……

 僕は、とりあえず商店街組合の状況を確認するために、商店街組合の建物に向かって歩いていきました。

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