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35 すてきなおばあちゃん

神様の願いと、みんなの思いがひとつになった後…

〖ふふっ それからね~〗

あれ?神様、急に軽…けほっ。明るくなった?

〖君たちの言う残念女神の言葉なんだけどね… 〗くすくす

『『す、すみませんでしたっ!』』ばっ
自分たちの失言に慌てるフゥとクゥ。
すぐさま頭を下げて謝る!
神様にバレてたらそれは慌てる…

〖あ~いいのいいの。大丈夫だよ。実際少々残念だし〗ふふっ

『『え?』』
認めちゃった?

〖でもね?あれ実はけっこう本気なんだ 〗
主神様は先程までの暗い雰囲気を払い、できるだけ明るく、でも真剣に話し出す。

『『へ?』』
思わぬ言葉に間抜けな声を上げると

『フゥ、クゥ、二人とも、言葉を選べ…』
さすがに森の主様が注意する

『『あっすみません!!』』
またまた勢いよく頭を下げるフゥとクゥ。

〖 いいよ~初めに堅苦しいのは嫌いって言ったでしょ?普通にして〗くすくす
その位リラックスして聞いてくれた方がありがたいしね。

『『ありがとうございます』
気にしてない様子の主神様にフゥとクゥはひと安心…

〖それでね~?えーと、お家の庭でお花育てて、家庭菜園で野菜を育てて美味しい料理を作ってっていうのは、サーヤとおばあちゃんが実際にやっていたことなんだよ〗
神様が説明をはじめる。

『『え?』』
実際にやってた?きょとんとするフゥとクゥ。

〖そう。母親にされてた虐待が酷くてね。暴力だけでなく食事もほとんど与えられてなかったんだ。それで発達に障害が出てね。酷く痩せて病弱な子だったんだ。おしゃべりに関してもね…〗
悔しいことにね…

『そんな…』
『なんてこと』
クゥとフゥが思わず呟いてしまうが、神様は続ける

〖それでね、おばあちゃんが考えて、一緒に楽しく体力も付けれるように庭に植物を植えて、土に触れて、綺麗な花を見て、更に自分たちで作ったもので美味しいものを作って、健康だけじゃなくて喜びや達成感というかな?とにかく色んなものを与えてくれてたんだ。愛情たっぷりにね〗
愛し子にとっておばあちゃんの存在はどれだけ光を与えてくれたか…

『そうだったんですね』
『それでは、もしかして他のことも?』
フゥとクゥの顔も少し柔らかくなってきた。

〖そう。遊びもね?指先や頭を使うものだったり、体を使って遊んだり。
遊び道具もね、おばあちゃんが遊びながら学べるように色々手作りしてくれてたんだ。時には一緒に手作りしたり、大掛かりなものは近所の人に手伝ってもらったりしながらね。すごい人だよね〗にっこり
神様に笑顔が見えたことで皆も少し気が楽に

『そうだったのですね』
『とっても優しいおばあちゃんだったんですね』
フゥとクゥの顔にも笑顔が少しずつ戻ってきた

〖そうだね。それから、お風呂に温泉というのは暖かいお湯につかってリラックスしたり、体を温めて血の巡りを良くしたり、体を洗って清潔にすることで病気になりにくい健康な体を作るためでもあったんだ。ここにも思い当たるものあるでしょ? 〗
主神様は森の主に視線を合わせながら聞く

『健康な体を作る湯?もしや、癒しの泉のことですか?あれは水が温かい』
森の主様が森にある特別な泉を思い出すと

〖そう。それだよ。地中から湧き出したものは特に体にいいものが多くてね。それを温泉っていうんだ。おばあちゃんが時々連れて行ってくれてたみたいだね。これも向こうの世界では娯楽施設になってたりしたんだよ〗
にこにこしながら神様が言う。だが、

『そうですか。分かりました』
『しかし、私たちにはその知識や技術がありません』
フゥとクゥが残念そうに返す。すると森の主様も

『その通りです。仮に知識があったとて、ここにいるのは妖精と獣ばかり。大掛かりな施設や道具はつくれません』
残念だが、ここにいるもので出来ることは限られてしまう

〖大丈夫。その辺も考えてるよ。近々この地にドワーフやエルフや獣人とか、色々来ると思う。迎えてやってくれるかな?ちゃんと信頼出来る者を厳選するから安心してね?あっ。間違いが起こらないようにこの辺りの結界と隠匿を強めておくよ。悪意のあるものは余程のことがない限り入ることも見つけることも出来ないよ〗

主神様はちゃんと考えてくれていて、みんなを安心させてくれた。

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