32 知らなかった真実
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主神様の話は驚くべき言葉から始まった。
〖サーヤが本来生まれるはずのこの世界から何故、異世界に行くことになってしまったか。それはある神に拐われたからなんだ〗
『な、神に!?』
『いったいどういう…』
思わず立ち上がりかけたフゥとクゥの二人を森の主様が諌める。
『二人とも気持ちはわかるが落ち着くのだ。今は話を聞こう』
『『あ』』
『はい』
『すみませんでした』
二人は主様の言葉に少し冷静さを取り戻し、姿勢を戻した。
〖いいよ。気にしないで。驚くのは当たり前だ。正確には神だったと言うべきだね。ヤツは神界を追放されているから。今、ヤツは⋯下手に名前を出して、ヤツに何か感じ取られてもいけないのでね、ヤツと呼ばせてもらうよ〗
『はい』
『分かりました』
〖ヤツはね、平和な世界に飽きて、いつしかイタズラをするようになったのさ。最初はまあ、可愛げのあるものだったんだ。だけど徐々に物足りなくなったヤツはタチの悪いことに我々神に気づかれず世界に混乱を招くことに悦びを見出すようになったんだ。心当たり、あるだろう?〗
神様が問いかけると、フゥとクゥがひとつの可能性にたどり着いた。
『あっもしかして』
『異世界からの…』
サーヤに話した迷惑な転移者の話…
〖そう転移者だ。異世界のね、地球っていう星の特に日本という黒髪、黒目の人種が多くいる国でね、ライトノベルっていう物語がはやってるんだ。異世界人はラノベとか呼んでるんだけど、異世界に行って勇者になって世界を救うみたいなね。ヤツは好んでその世界から異世界人を召喚してたんだ。そして楽しんでたのさ〗
心底忌いまし気に主神様が話す。
『楽しむ?』
森の主様が訝しむ
〖そう。考えてみてくれ。自分は選ばれし勇者で悪を倒し英雄になるんだ!と意気込んで来たとしよう。だが実際はどうだい?この世界は平和で、倒すべき魔王など存在しない〗
主神様の言葉を皆が考える。すると…
ぐるる『なんと悪趣味な…』
まずは森の主様が気づき、
『あっ』
『そうか…』
遅れてフゥとクゥも気づく
〖そう。彼らは言う『自分は弱いお前たちの代わりに魔王を倒してやるんだ!だから自分は何をしたって許されるんだ!』と…。だが、周りはそんな戯言信じない。なぜだとイラつき暴れれば暴れるほど孤立する。騙されたと気づいた時には周りは敵だらけ、元の世界には戻れない。家族にも友人にも一生会えない。それに気がついた時、君たちならどうする?〗
主神様は再び私たちに問う
『そんな…もし自分の身に降り掛かったら?』
『もし、そんなことになれば絶望するしかない…』
フゥとクゥの顔色が一気に悪くなる。
〖そう、そして大抵そうなってしまった場合 〗
神様が促すその先の答えは
ぐるる…『自ら命を絶つ…ですか』
森の主様が唸りながら答える。
〖その通り。そしてもうひとつ…もし、力を持つものが 自暴自棄になって暴れる。そうするとどうなるか?〗
神様の言葉の意味に気づいたフゥとクゥ。その顔は真っ青だ
『このままでは自分たちが危なくなる…』
『そうなる前に自分たちの手で…』
転移者達を、討つ…
〖そう……今、君たちが思った通りだよ 〗
神様が悲しげに頷く。
『なんということだ…』
森の主様も知らなかった事実に言葉を失う
『そんな…面白おかしく伝えられた話にそんな残酷な真実が…』
『おれたちを含め大抵の者は転移者にいいイメージを持っていない。真実を聞いた今は違うけど、このまま知らなければ、また…』
フゥとクゥ達だけではない。話を聞いている者、皆その可能性に気づき
〖そう。同じことが繰り返される。ヤツはそれも含めて楽しんでいたんだ〗
主神様はその可能性を肯定する。
皆がその言葉に愕然とした…だが、続く言葉に更に言葉を失うことになる。