29 愛し子とは?
そんなこんなでやっとご飯です。
あっ、一応、顔と手はもう一度洗い直しましたよ。特にお顔はヲトメにあってはならぬ状態でしたので…
ごっはん♪ごっはん♪
まずは何がいいかな♪
切り株テーブルの上には、不思議素材がよりどりみどり♪
キキッ『これ飲んでみて~』
「あい。あいがちょ」
例えば、お猿さんが勧めてくれたこの形はひょうたんなんだけど色違いがいっぱいの木の実。
チチっ『こうするんだよ~』ぺきっ
「あいがちょう~」
リスさんがヘタのところをペキっと折って渡してくれると中身はなんとジュースでした。
くぴくぴ
キチッ『『おいしいでしょ~?』』
「あい!おいちい!」
キチッ『『良かった~』』
しかも赤の味はいちごジュース。他の色のも試してみると、オレンジっぽいのがまんまオレンジジュース。
緑っぽいのがリンゴジュースでした。なんで…色かな?美味しかったけど。
このひょうたんジュースは
キキっ『森の中でたくさん採れるよ』
チチっ『遊んで喉が渇いた時とか便利なんだよ』
「しょっか~」
て、お猿さんとリスさんが教えてくれました。
とりあえず、このままでは水分だけでお腹ちゃぷちゃぷ満杯になっちゃうから固形物そろそろ行きたいです。
それじゃあ、とクゥとフゥが取ってくれたのが、
『サーヤ、これ面白いんだぞ』
『今割ってあげるわね』しゅぱっ
見た目ヤシの実。だけど、フゥが風魔法でしゅぱっと割って、中身を出してくれたら、なんと中身はふわふわのパンでした!木の実やフルーツしかないと思ってたのに主食がありました。嬉しいびっくりです!味は耳のないふわふわの食パンみたいでした。そのままでもほんのり甘くて、おいしいです。
「あいがちょう!」にこっ
『『どういたしまして』』にこにこ
そうなると、あそこに真っ赤なぴかぴかのリンゴのようなものがあるけど、あれはリンゴなのかな?割ったら別の…?
『あれがきになるの?』
『とってきてあげる~』
『はい。どうぞ~』
「あいがちょう~」
妖精さんたちが三人で抱えて持って来てくれました。食べ方も教えてくれます。
『おようふくで』
『こしこしして』
『たべるといいよ~』
「あい」こしこし
シャクッ!シャクシャク シャクシャク
「おいちい~♪」
『『『やった~♪』』』
結果リンゴでした。果汁がジュワッ!香りもふわっ。甘酸っぱくて美味しかったです。ご馳走様でした。
それにしてもわけわかりません。
この世界は何でしょう?ありとあらゆるものが実から取れるのでしょうか…
元日本人としては是非ともお米は見つけたいとこだけど、まさかお米も木の実から出てきたりとか?更に調理済みとか?うーん。
でもあの女神様、素材はいいのに料理が発展しないとか言ってたよね?確かに実から完成したものが出てきたらそりゃ料理なんてしないよね~どうしろって言う訳?まあ、考えるのはもっと後でいいよね。
『美味しいか?』
わんちゃん、いつも音もなく現れますね?
「あい。おいちい でしゅ」にこにこ
不思議素材とっても美味しいです。
『それは良かった』
わんちゃん、安心したみたいでホッとしてます。人間を相手にご飯出すのは初めてだからって。そりゃそうだよね。
『あわわ。そうだった。サーヤ、わんちゃんじゃないのよ!』
『犬じゃないんだ、狼さんだ!』
「ふおお!おおかみしゃん!」
すご~い♪
『それにただの狼さんじゃなくてね』
フゥとクゥがなんかワタワタしてます。どうしたのかな?
『サーヤ、この方はフェンリル様と言って、特別な狼の頂点、ええと、狼さんの王様だ!』
「ふあ?おおかみしゃんにょ、おおしゃま!」
すごいすごい!つまり
「もふもふにょ、おおしゃま!」キラキラ
すごいすごい~!!もふもふもふもふ!
『い、いや、そんな大したものでは』
ひくっ
サーヤのあまりの食いつきっぷりとキラキラっぷりに思わず後ずさる森の主様。
『すみません、主様、説明が遅れてしまって』
『申し訳ありません』
フゥとクゥが謝ってます。あれ?わたしも謝った方がいいかな?
「ごめしゃい?」
よく分からないけど、悪いことしたら謝らないとだめだよね。
『いや。構わぬよ。今まで通りで大丈夫だ』
「ほんちょ?」
『ああ。本当だとも』にっこり
じゃあ~
「ぬしちゃまで、だいじぶ?」
『ああ。大丈夫だよ』
「わかっちゃ!あいがちょ!」
と、言うことがありまして
「ぬしちゃま、しちゅもん いいでしゅか?」
まくまく食べながら聞いたら、フゥにメッてされました。
『ああ。我に答えられることなら』くすくす
「かみしゃま、さーにゃのこと、なにか いってまちたか?」
笑われちゃいました。ちゃんとゴックンしてから気になってたことを聞いてみます。
『いや。先程話した通りのことしか…詳しいことは後でと仰られていたが、いつどのようにかもわからぬ』
ぬしちゃまもちょっと困ってるみたいです。
「そうでしゅか。しょれじゃ、“ いちょしご ”っちぇ、
愛し子と言われても、何がなんやらです。
『いいや。愛し子とは文字通り、世界から愛され慈しまれるもの。そこにいるだけで周りを癒し、優しい気持ちにしてくれる。だから、特別に何かをする必要は無いはずだ』
あれぇ?そうなの?
「でみょ、めがみしゃまが…」
色々言ってたよぉ?
『女神様が何かするようにと?詳しくお聞きしても?』
ぬしちゃまがちょっと驚いてます。
「あい。
『なあに?』
『どうした?』
わたしは女神様と会った時のことを主様にも説明したいこと、それならわたしが話すより、さっきみたいにフゥに話してもらった方がいいんじゃないかと言ってみた。わたしが言うと絶対時間かかっちゃう。
『あ~』
『そうね~』
二人とも大丈夫?なんか疲れたお顔…むりなら…
『あっ違う違う』
『確かに話すなら私からの方がいいと思うわ。必要ならサーヤに訂正してもらって』
『ただね~』
『な~』
ただ?なにかな?
二人が森の主様にいいます。
『主様、私からお話していいですか?出来れば皆さんにも聞いてもらいたいのですが…』
『恐らく、聞いたあとかなりお疲れになるかと…』
と、申し訳なさそうにしている。
あ~そうかぁ。そうだよね~?
二人も体験してるもんね~
『構わぬ。話してくれ。皆にも聞いてもらおう。皆、集まってくれ』
ぬしちゃまが一言声を掛けると、なんだなんだとみんなやって来ました。興味津々な感じです。
『では、話させてもらいますが、皆さん楽な格好で聞いてくださいね』
うん。それ大事だね…
がんばって!フゥ。
がんばって!ぬしちゃまたち!
フゥが話し始めると、初めのうちはキラキラしてたみんなの目が、話が進む内にだんだん…
なんか、前に同じようなの見たなぁ⋯
やがてフゥが話終わると…
『………』
『『『………』』』
みんな、しーん、と言うより、ぐったり?
『やっぱりこうなるわよね』
『そうだなぁ』
「あい。
みんなくったり動かないねぇ。
わかるよ~
どうもすみません…