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5.タマ先生の考え事と、変な丸い絵

『タマ先生、あのね…』

『ねえポチ。こんな事はあまり言いたくないのだけれど』

 僕がタマ先生にお話しようとしたら、タマ先生が途中で話して来て、

『私、疲れているのかしら。今聖也が『飛んじゃえ』をしたとき、聖也の手が光ったような気がするのだけれど』

『わっ! 先生も! 僕も光って見えました!!』

 僕だけじゃなかったよ。先生も聖也のお手々が光る所を見たって。今度は僕の勘違いじゃなかったんだ。
 
 それでね、僕が瞳お姉さんは、本物の魔法使いなんだねって言ったら、タマ先生違うって言いました。魔法使いは、絵本の中にだけいるんだって。
 え~、でもさっきの瞳お姉さんの『飛んでけ~』魔法でしょう? 聖也、ぶつけた所痛くなくなったもん。すぐに治せるなんて、やっぱり魔法だよ。

 でもタマ先生は違うのよとか、そうだけどそうじゃないとか。色々1匹でブツブツ、何か言ってました。本当は聖也の事もお話したかったのに。やっぱりちょっと考えさせてって。タマ先生はおやつを前に黙っちゃいました。
 聖也のあのお手々の光り。アレだってきっと聖也の魔法の力だよね。聖也は僕の弟で、まだまだ小さいから、絵本みたいな魔法はできないかもしれないけど。きっと大きくなったら、絵本みたいに凄い魔法が使えるようになるはずだよ。

 良いなぁ。僕も魔法やってみたいなぁ。どうしたら魔法が使えるようになるのかな? 練習? お勉強? 誰かタマ先生みたいに魔法を教えてくれる先生が居るのかな? もし先生がいるなら僕、聖也と一緒に魔法のお勉強がしたいです。それで一緒に絵本みたいに、何処かに冒険に行くの。

 その日のおやつは、タマ先生はずっと黙ったまんま。その後のお勉強もなしで、遊んでても何かずっと考えてたタマ先生は。夕方になってフラフラ帰って行きました。あんなに何を考えてたのかな? 

『あの光り、何だったのかしら。始めて見たわ。もしかしたらあの人(猫)が何か知っているかも。ちょっと調べて見ましょう。変な物じゃなければ良いのだけれど』

 それから少しの間、遊びに来てくれなかったタマ先生。2週間してやっと遊びに来てくれました。もう、僕遊びたかったし、お勉強したくてうずうず。聖也もタマ先生に久しぶりに会えて、とってもニコニコです。お気に入りの僕そっくりのワンちゃんのぬいぐるみと一緒に、タマ先生をギュッて抱きしめて、なかなかタマ先生を放しませんでした。あんまりギュッてし過ぎて、1回タマ先生、おえってなっちゃったんだ。

「ああ、ほら。そんなにギュッてしたら、にゃんにゃん苦しいって。聖也のこと嫌いになっちゃうかもしれないぞ」

「せいくん、きらい?」

「ああ」

「たいへん! にゃんにゃん、ごめんしゃい」

 聖也がタマ先生にごめんなさいしました。

『良いのよ。分かってくれれば。それで今日は何をしましょうか』

 お昼ご飯の後に来た先生。今日は夜のご飯を食べてから帰るって。だから遊びもお勉強もいっぱいできます。聖也がベランダのお砂場に、道具を持って行ったから、先に遊ぶ事にしました。

「きょは、おだんごしゃん!」

 砂に少しだけお水を垂らして、砂で大きなお団子を作る聖也。僕も一緒に砂をこねこね。その後は砂を集めて。僕がお団子作ると、小さな山みたいになっちゃうけど、それに聖也が棒を刺してくれて、本物のお団子みたいにしてくれました。僕達の周りには聖也が作った、色々な大きさのお団子が。

「できあがり!! ぽち、にゃんにゃん、どじょ」

『いただきます!!』

『美味しそうね』

 僕とタマ先生は、お団子を食べるマネ。それで食べるマネしてて気が付いたんだけど。いつもみたいに聖也のお顔は泥だらけに。僕の足も泥だらけ。タマ先生は泥には触らなかったから汚れてないけど。
 
 僕はキョロキョロ周りを見ました。あっ! そこにタオルを発見! お部屋の中、ちょっと遠くだけどタオルを見つけました。あのタオルで聖也のお顔拭いてあげて、僕の足も拭こう。でもどうやってあそこまで取りに行こうかな? このままお部屋に入ったら、お部屋の中が泥だらけになっちゃうよ。

『私だったら華麗に飛んですぐに取ってきてあげられるけど、でも私も外を歩いて来て汚れているから無理だし。あなた転がるの上手でしょう? あそこまで転がって取りに行ったらどうかしら?』

『うん、僕、転がるの上手!! 待ってて聖也、僕今取って来るからね!』

 僕はでんぐり返ししながら、部屋の中に入って行きました。

「ポチ、だめ! にぃにプンプンよ!」

 聖也が僕のこと呼んだけど、僕は転がってもうお部屋の半分まで来てて。大丈夫。汚してないよ。もうすぐタオルの所だから待ってて。
 そのまま転がって行く僕。それで足を床に付けないで、タオルの所まで到着。成功です。僕はうつ伏せにペタッて体を付けて、タオルを咥えました。タオルを咥えたまま、また転がって聖也とタマ先生の所まで行けたら完璧です。

 僕はまたでんぐり返ししようと思って、体を丸くしました。その時。

『きゃっ、一体何?』

 タマ先生の声が聞こえたような。僕後ろを見てたから、すぐにタマ先生の方を見られなくて。ん? 僕は自分の下を見ました。僕の体の下、いつの間にか、ちょっと大きくて、丸いくて。その丸の中に四角とか三角とか丸とか、色々な模様が描いてある絵が描いてありました。こんな絵、聖也描いたっけ? ん?

 そんな事考えてたら、いきなりその丸い絵が光り始めたんだ。何で光ってるの? 絵って光るっけ? 何これ? 
僕はタマ先生に聞こうと思って、転がる前にタマ先生の方を見ようとしました。でも。

「にぃにぃ!! ポチッ!!」

『何なのよ、コレ!!』

 聖也の大きな叫び声が聞こえて、それと同じくらいに、タマ先生の大きな叫び声も聞こえたんだ。足が汚れてたけど、急いで僕は立ち上がって、聖也とタマ先生を見ました。

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