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コンビニおもてなし出張所 その3

 先日、ガタコンベの商店街組合に広告を出してすぐにフィオーリがやってきてくれました。
 フィオーリは本当によく仕事をしてくれていて助かっているのですが、それ以降はまったく応募がないんですよね。
 今後も支店か販売所を展開していく予定にしていますので、もう少し応募があってほしいところなのですが……
 我がコンビニおもてなしで、こういうときに強いのがスアの転移ドアの存在なんですよね。
 とりあえずどこに勤務してもらってもご自宅に最寄りのコンビニおもてなしまで一瞬で移動出来ますので、居住地を問わず募集することが出来るわけです。
 そこで今回は、2号店のあるブラコンベ、4号店のあるララコンベ、5号店のあるナカンコンベでも求人募集をしてみることにしました。
 都市の人口から言えばナカンコンベが一番有望そうに見えるのですが、このナカンコンベは商業都市といいますか多数の商会が本支店を構えている関係で商店街組合に寄せられる求人募集の数が半端じゃないそうなんですよね。
 5号店を開店する際に求人をかけさせてもらったことがあったんですけど、結局数人しか斡旋してもらえませんでしたからね。

 と、言うわけで僕は各都市の商店街組合に求人募集を提出しておきました。
 応募があるといいのですが……

 しかしあれですね……
 僕が元いた世界でコンビニおもてなしを経営していた際には、赤字がひどかったもんですから、いかにして支出を抑えるかってことしか考える余地がなくて、最後の方は24時間営業を諦めて朝6時から深夜0時まで僕が1人で勤務してましたからね……右も左もわからない異世界で、よくぞここまで盛り返すことが出来たもんだ、と、僕はしみじみと思い返していました。

◇◇

 テトテ集落に新設しましたコンビニおもてなしテトテ集落出張所ですが、店員として働いてもらうミミィさんに本店で研修を受けてもらうことにしました。
 今日がその初日なのですが、
「店長さん、それにみんなよろしくたのむな」
 ミミィさんは張り切った表情でテトテ集落からの転移ドアをくぐってこられました。
「こちらこそ、よろしくお願いしますね」
「よろしくお願いいたしますわ」
 僕と副店長の魔王ビナスさんが笑顔でミミィさんをお出迎えいたしました。

 今回の研修は、魔王ビナスさんに担当してもらいます。
 魔王ビナスさんは、副店長になってからまだ新人研修をしたことがありませんからね。
 ミミィさんの新人研修と同時に、魔王ビナスさんの新人研修の研修もやってもらおうというわけです。
 僕も一緒についていますから、すぐにあれこれ指導出来ますし、そうやって一緒にやっていけばいいかな、と思っていたのですが……

「いいですか? このレジはですね……」
 ミミィさんにあれこれ指導していく魔王ビナスさんなのですが、その手際・指導方法は完璧でした。
 横で接客をしながら様子を見ている僕の出る幕がまったくありません。

 あとで聞いたのですが……
 魔王ビナスさんは、以前本店で新人研修を担当していたブリリアンが新人を研修するのを見ていたので、その研修方法をばっちり覚えていたんだそうです。
 どうりで、完璧なわけです、はい。

 そんなわけで、僕はミミィさんの新人研修を魔王ビナスさんにお任せして、本店の営業に専念させていただいた次第です。

 ちなみに、魔王ビナスさんの指導を受けているミミィさんも非常に優秀なんですよね。
 最初の頃はやや戸惑った感じだったものの、
「うん、OK。わかってきたよ」
 そうご自分でも言われていたように徐々に作業にもなれていかれまして、2日もすると接客作業を一通り問題なくこなせるようになっていました。
 お金の計算・売り上げの集計作業などはスア製の魔法レジが自動で行ってくれますし、これで問題なくコンビニおもてなしテトテ集落出張所を経営することが出来るでしょう。
 
 そんなわけで、明日からコンビニおもてなしテトテ集落出張所の営業を開始することにいたしました。

 本店の営業が終了し、掃除や後片付けが終了すると同時に新人研修も終了です。
 この後、いつもはミミィが一人でテトテ集落へお帰りになるのですが、今日は僕とスアも一緒に移動していきました。
 転移ドアをくぐると、
「ミミィちゃんお疲れさま。あらあら、今日は店長様と奥様もご一緒なのですめぇ」
 ドアの前でリンボアさんが笑顔で出迎えてくれました。

 ミミィに聞いたのですが……
 いつもお店が閉店してしばらくするとミミィが帰ってくるもんですから、その時間になるとリンボアさんはドアの前で待っていてくれるんだそうです。

 なんといいますか、まるでホントの親娘のようですね。

「今日はどうだっためぇ?」
「あぁ、バッチリだったよ。明日からお店を始めることになったんだ」
「まぁ、そうめぇ? ホントに頑張っためぇね」
 僕は、楽しげに話をしているミミィとリンボアさんを笑顔で見つめていました。

 2人のお話の邪魔をしないように、僕はスアと一緒に荷物の搬入をはじめました。
 搬入といいましても、僕が腰につけている魔法袋に入れて持ってきた荷物を並べるだけです。
 しかも、主力商品である弁当やパン・サンドイッチ・ヤルメキススイーツなどは明日の朝から配達が始まりますので、僕が持ってきた品者を全部陳列しても全売り場の5分の1にも達していませんでした。
 そんな僕の横で、スアは魔法レジの最終チェックをしていました。
 お金を扱いますからね、新しい魔法レジを導入する際にはいつもこうやってスアに最終チェックをしてもらっているんです
「……ん、問題ない、よ」
 一通り魔法レジの動作を確認していたスアは、僕に向かって右手の親指をグッとたてながら笑顔を向けてくれました。
 僕は、そんなスアに
「いつもありがとうスア」
 そう言うと、笑顔で親指を立て返していきました。

 その後、リンボアさんとミミィと一緒にしばらく雑談を交わした僕とスア……と、いっても、スアが僕の横に立っていただけなんですけどね、
「じゃあ、明日からよろしくお願いしますね」
 2人にそう声をかけてからテトテ集落を後にしました。
 そんな僕達に、
「こちらこそ、よろしくお願いしますめぇ」
 と、リンボアさん。
「はい、頑張りますよ!」
 と、ミミィ。
 2人はそう言いながら僕達を見送ってくれました。

◇◇

 翌朝。
「今日からテトテ集落にも荷物を運ぶのねぇ?」
「うん、そうなんだ。悪いけどよろしく頼むね、ヴィヴィランテス」
「はいはい、わかったわよ。相変わらずハニワ馬扱いが荒いんだから」
 いつものように、荷物の運搬のためにスアの使い魔の森からやってきたヴィヴィランテスは、ため息をつきながらも、荷物を全部背に乗せて転移ドアを手慣れた様子でくぐっていきました。

 その後の僕は、新しく店員に加わったフィオーリを加えたコンビニおもてなし本店メンバーで開店準備を始めました。

 程なくすると、僕が事前に準備しておいた朝食を食べ終えたスアと子供達が僕の元に駆け寄ってきました。
 みんなこれからティーケー海岸出店に向かうんですよね。
「パパ、今日も頑張ってきます!」
「アルトも頑張りますわ」
「ムツキもにゃしぃ」
 3人は笑顔で僕に抱きついて挨拶をしてくれました。

 ちなみに今日もリョータはアルカちゃんと一緒に本店です。
 最近は、ヤルメキス達がスイーツを作成する手伝いまでしてくれているんですけど。
「りょ、りょ、りょ、リョータくんはなかなか筋がいいでごじゃりまする」
 ヤルメキスがそう言っていた次第です。
 それを聞いたリョータは、すごく嬉しそうに笑顔を浮かべていました。
「大好きなアルカちゃんや、ヤルメキスお姉ちゃん、ケロリンお姉ちゃんのお手伝いが出来て嬉しいです」
「だ、だ、だ、大好きな!? アルか!?」
 リョータの言葉を聞いたアルカちゃんは、あっという間に真っ赤になっていました。

 その後、ティーケー海岸出店に向かって行くスア達を見送った僕は、本店の開店準備に戻っていきました。

 ティーケー海岸の出店が終わったら、ブリリアン達と新しいコンビニおもてなしの出店計画に関する相談もしていかないといけません。
 とはいえ、まずは今日の営業をがんばっていかないといけませんね。

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