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21 その頃のもふもふたちは…

その(サーヤにロックオンされる)少し前、その(狙われた)もふもふと妖精さんたちは…
キキっ『主様、主様』
チチっ『ほんとに愛し子さまくるの?』
森の主様を質問攻めにしていた。

『あぁ。神様のお言葉通りならもうすぐ来るはずだ』

優しい笑顔で子供たちの質問に答えるのはこの森の主だ。サーヤにはしっかり大きな白いわんちゃんもふもふ認定されていると知るのは、このもう少しあと。

森の主は先日、夢の中で神より神託を受けていた。今日、愛し子がこの世界に来るから迎え入れてほしいこと。お伴の者もつけているからそちらも受け入れて欲しいということ。詳しい話はまたするが、よろしく頼むということ。驚きはしたが、これは大変喜ばしいこと。だから、こうして皆で出迎えようと集まっていた。

きゃん『お父さん、お出迎え、森の入口じゃなくていいの~?』
嬉しそうにしっぽをぶんぶん振っているのは、森の主をそっくりそのまま小さくしたようなかわいい子。森の主の一人息子だ。
『ああ。ここでいいそうだ』
息子には真っ先に話した。
神は愛し子様はまだ幼い子だとおっしゃっていた。ならば、同じ子ども同士仲良くなれるのではないかと思ったからだ。案の定、息子は大喜び。さっそくいつも仲良くしている森の子どもたちに伝え、いまやみんなで今か今かと待ち構えている。

きゃんっ『どうやってここに来るのかな~?』
チチ『何かに乗ってくるのかな?』
キキ『愛し子様、どんな方かな?』
『やさしいかな?かわいいかな?』
『つよいかな?かわいいかな?』
『いいこかな?かわいいかな?』
子供たちは愛し子がどんな子なのか、想像してわいわい話し出した。

『ははは。みんな可愛いは大事なんだな?』
必ず可愛いが付く子どもたちの会話に森の主様は笑って加わる。

『そりゃそうだよ!』
『いとしごさまだもん!』
『きっとかわいいよ!』
きゃんっ『だからね、みんなで可愛がってあげるんだ~』
キキっ『可愛がってくれる方かもよ?』
チチっ『じゃあ、両方になればいいよ!』
『そっかぁ!』
『それいい!』
『りょうほう!』
きゃんっ『それで、みんなで守ってあげればいいんだね~』
キキチチっ『『うん!』』
『『『さんせい!』』』
みんないい子たちだ。すでに愛し子は自分たちにとって大事な存在だと気づいている。

『ははは。頼もしいな。でも、もし可愛くなくて、意地悪で乱暴者だったらどうするんだ?』
そんな子供たちに森の主はわざと意地悪な質問をしてみると

きゃんっ『そしたら、いいところを探して上げればいいんだよ~』
チチっ『悪いことしたらめっ!してあげる!』
キキっ『色々教えてあげる!』
『『『ね~♪』』』
子供たちからは何とも頼もしい答えが返ってきた。

『そうかそうか。お前たちはいい子だな』
嬉しい答えに森の主は笑顔で褒める。

きゅう~ん『えへへ~』
キキチチっ『『本当?』』
『『『いいこ~?』』』
子供たちは少し照れくさそうに喜んでいる。

『本当だとも。可愛くていい子たちだ。きっとお前たちがいい子だから安心して神様も愛し子様をここへ導いてくださったのだろう』
森の主は心からそう思い、子供たちに伝える。

きゅうん『そっか~』
キキっ『じゃあ、もっといい子になるね!』
チチっ『愛し子様安心してもらわなきゃ!』
『わたしたちも』
『いいこに』
『なる~!』
子供たちはまた嬉しい言葉を返してくれる。

『そうだな。大丈夫。お前たちなら安心だ』

きゅう~ん『えへへ~』
チチ『楽しみだね~』
キキ『早く来ないかな?』
『『『こないかな~?』』』
森の主と子供たちが愛し子を心待ちにして話していると、何かが来る気配を感じた。

『ん?来たか』
森の主が空を見上げる。

きゃう『え~?』
キキ『そっち?』
チチ『なんで?』
『『『おそら~?』』』
空を見上げる森の主を不思議そうに見る子どもたち。

主が目を細め、空を更に見つめると、キラリと光が…
『あれだな』

子供たちだけではなく、全てのものが空を見上げている。目がいいものはそろそろ見えているようだ…

『あっ』
『ほんとだ!』
『風の防御膜が見えてきたわ!』
『誰かいるね』
『あっ』
『小さい子がいる!』
『あれが愛し子さまかな?』
『すごいちっちゃいドラゴンも!』
『ドラゴン二匹いるよ!』
『伴の者というのがきっとあの妖精達だな』
『それにしても、あの妖精たち大丈夫か?』
『ああ、だいぶ疲れているようだが…』
『愛し子様のお顔も見えてきたな』
『おお!あれが』
『わぁー!』
『ちっちゃい!』
『可愛い!』
皆、だんだんと見えてきた愛し子達に大興奮。だがしかし、だんだん近づいてくると見えてくるのが…

『けど…』
『うん…』
きゃん『お顔、壁にはりついてるね~』
『うん』
キキ『おめ目、キラキラしてるね』
『う、うん』
チチ『お口の周りも、キラキラしてるね』
『う、うん…』
きゃん『ねぇ~お父さん』

『……なんだ?』

きゅう~『愛し子様って人だよね~?』
だんだんと不安になる子どもたち。と、大人たち…

『あ、ああ』
と、森の主…その後に多分とつけたいのをなんとか我慢

きゅう~ん『なんでかなぁ?しっぽが見えるんだけど~?』
キキ『うん。ぼくも見える』
チチ『ぼくも。ぶんぶん振ってるよね?』

大人たちも
『あっお伴の妖精が壁から引き離した』
『抱っこ?』
『いや、海老反りになってないか?』
目の前で起こることに釘付け…

キキ『妖精さん二人ともため息ついてるね…』
チチ『ちっちゃいドラゴンさんたち首振ってるね…』

『………』

『『『………』』』
見てはいけないものを見てしまったような気がする森の住人たち…
その結果、森の主が言った言葉は…

『皆、それに子どもたちよ、目を閉じてお迎えしよう…』

『『『はい…』』』
『『『うん…』』』
『『『わかった~』』』
みんな思った。見なかったことにしようと…

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