1 ただいま双子の赤ちゃんドラゴンと落下中です
ビュオオオオッ
周りの音が一切聞こえない、全てを切り裂くような強い風の中、何かを必死に守るように抱えた、ひとりの女の子が…
「うにゅうううっ」
お耳が痛いぃぃっ
ビュオオオオッ
耳元で風がビュンビュン鳴いてるよぉ。
それとも、ビュンビュン通り過ぎていってるよ~!が正解?どっち?
バサバサバサバサバサッ
スカートどころか、袖から襟まで強い風に煽られて、バサバサとすごい音を立ててはためき、膨らんでいる。今にも破けてしまいそうだ。だが、女の子は決して、大切に抱えたものを離しはしない。
「いちゃちゃっ」
どっちにしても、風のせいで髪の毛が~っ!
さっきからピシピシバシバシ、お顔に当たるの~!
当たってるの~!
とっても痛いの~!
ピシッ!あっまた!
いたいよ~ぅ しくしく…
でも、両手が使えない女の子は、耳を塞ぐことも、髪の毛を押さえることも、今は出来ない。
「ふにゅうう~」
それにしても、なんでこんなことにっ…ぐすっ。
ビュオービュオーッと、風は容赦なく下から上へと吹き抜け、周りはどこまでもどこまでも広がる冷たいほど澄んだ青い空。女の子を助けてくれる者はいない。だが、必死に涙をこらえる。
「ああ~」
絵の具の空色より青い空~。
吸い込まれそう~。
空は青いな大きいな~♪
っと、ちがうちがう!
う~風が強くて、首も振れない~!
現状を誤魔化したくても、忘れたくても、逃げられない温もりが、その小さい両手の中に…
「んんん~っ」
でもね、いきなりこれはひどいよね?
ごめんなさい。きれいな女神様…。
いくら「の~んびり」な性格のわたしでも、さすがにこれは怒ってもいいんじゃないかな?
いいよね~?
とか、のんきに考えていれば
「はぁ~ぁ
つい、ひとりごとだって出ちゃうよね~?
「······んん?」
あ、あれ?なぁに?今の声、だれの?まさか
「あーあー。
……頭のてっぺんからつま先まで、一気にぞわーっとイヤな感じが走った。
やっぱり、この小っちゃな子の声は、わたし?しかもなんだか
「
これはもしかして「赤ちゃんことば」ですか?
今度はつーうっと、冷たい汗が背中を伝う…
今の自分が、自分の認識と全く違っていることに気づいた女の子は、動転しながらも必死に記憶を呼び起こそうとする。だが…
おかしいよ!だってだって、わたしは八歳に…あれ?十歳?にはなってたはず?
あれ?なんでかな思い出せない?
どうしてだろう…落ち着いたら思い出すかな?
なんだが気持ち悪いよ…おばあちゃん
思い出そうとすればするほど思い出すことが出来ないことにますます戸惑い、気持ちが悪くなる女の子…
はっ!ちがうちがう!ブンブンと首を…またもや振れなかった。か、風が強すぎるよぉ!
と、とにかく、今は自分を見てみなきゃ!
え~と、え~っと、
ともすれば、何もかも放り出して逃げたくなる気持ちを必死に抑え、自分を奮い起こし、前を向こうとする女の子は
「んんんー!よいちょお!」
がんばって首を動かして、自分の体を見ようとするけど、なかなか動かせない。
「
いたたたたたたた 首いたいよぉ!負けるもんかぁ!
「ふぎゅぅうう」
み、見えたぁ!
「や、
な、なんということでしょう…
頭の中で有名なリフォーム番組の音楽が流れます。チャララ~♪
目の前にはバッサバッサめくれるスカート。
そこから見える小さなあんよ。
そして、少しぽっこりなお腹のところで、大事に〘この子達〙を抱える両手は、完ぺきにぷくぷくした小さな子のお手々…
「
と、叫んだ声は間違いなく、小さな女の子の声。
「えぇぇぇぇぇぇ~!?」
わたしは、かんぺきに、本物の幼女になっていた!
なんでよぅ!
そして今、わたしは、雲よりも高い高いところから、小さなピンクと水色の双子のドラゴンの赤ちゃん(こんな状況なのにすぴすぴ可愛くお昼寝中!すごい!)を、お腹のところで抱きかかえ、地面に向かってすごい速さで落下中です。
誰か教えて下さい。
「
ビュゥオ~~
「ひぎゃー~ あぁぁっ」
おなかが~ひゅんってなるぅぅぅ
雲一つない青空の中、女の子改め、幼女の声が響き渡った
☆。.:*・゜☆。.:*・゜
初めまして。のどかと申します。
初めて書かせてもらってます。
まったくのど素人です。ありきたりな話かもしれませんが、少しでも楽しんで貰えたらいいなと思います。基本、ほのぼのです。人間少なめ、妖精さんあり、ドラゴンさんあり、もふもふさんあり、他種族バンザーイで行きたいと思います。
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