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コンビニおもてなし出張所 その2

 お店が休みの今日です。
 今日は、ティーケー海岸出店の担当交代の日になります。
 今回は2号店から本店への引き継ぎになります。
 お祭の期間中に5号店から本店へ移動した僕はまったく意図していなかったのですがティーケー海岸出店の最初の週と最後の週を担当することになってしまいました。
 ただ、今回の出店はテトテ集落の調査を終えて一段落しているブリリアンとメイデンに主に担当してもらうことにしました。
 ブリリアン達にも、海での出店を満喫してもらって夜はのんびりしてもらえたらな、と思ったからなんですよね。
 日中は、スアが子供達を引き連れてお手伝いに行く予定にしております。
 早速パラナミオ達も
「今回も目一杯頑張ります!」
 と、言って力こぶを作っているパラナミオを筆頭にみんな気合い満々の様子です。

 ブリリアンとメイデンが約束の時間通りに本店裏にあります巨木の家を訪ねてきました。
「じゃあ、行こうか」
 2人に加えて、スアを筆頭にした我が家の子供達全員を連れてティーケー海岸へ……と、なりかけたのですが、
「パパ、僕は家に残ります」
 と、リョータが言いました。
 いえね、これは結構予期していました。
 と、いいますのも……アルカちゃんがヤルメキススイーツのお手伝いを本店で行っていますので、出店にいかないことになっていたんです。
 僕やヤルメキスは
「せっかくなんだからこの1週間は向こうに行っていいんだよ」
 そう言ったのですが
「少しでも早く皆様のお役に立ちたいアル」
 アルカちゃんはそう言って譲らなかったんです。
 今日も、ヤルメキスとケロリンが新しいスイーツの研究をしているため、アルカちゃんも残るといっていましたので、アルカちゃんとすっかり仲良しになっているリョータもおそらくは……と、予期していた次第です。
 とりあえず今秋末には僕もティーケー海岸に向かう予定にしていますので、その際に一緒につれて行ってあげようと思っています。

 ティーケー海岸での引き継ぎは滞りなく終わりました。
 この1週間出店を担当していたチュパチャップによりますと、
「今回もとっても賑わいました」
 とのことです、はい。
 最後の週にはあれこれイベントもあるそうでして、この祭り一番の盛り上がりになるそうです。
「ブリリアン、人手がいりそうだったら遠慮なく言ってね。すぐ手配するから」
「わかりました、その際にはよろしくお願いいたします」
 僕の言葉に、ブリリアンはそう言ったのですが、そこにメイデンが割り込んできまして
「何をおっしゃるのですか! この私が馬車馬のように働きますので、そのような心配はご無用ですわ!」
 真剣な表情でそう言いました。
 ブリリアンは、そんなメイデンを心なしか頬を赤らめながら見つめています。
 うん……なんかもう、この2人の間には割り込めないと言いますか……ははは。

 そう言えば、引き継ぎを終えた後でアルリズドグさんとも少し話をしたのですが、
「そう言えば、面白い料理を出す屋台が増えたんだ……確か、イダカヤ……の屋台とか言ったかな? そこのニクジュガウロンとか言う食べ物がすごく美味かったんだ」
 そんな話題が出た次第です。
 ……はて、イダカヤ? ニクジュガウロン? ……まさか、居酒屋と肉じゃがうどんの言い間違いだったりしないよね? なんて思った次第なんですけど……時間があったら一度様子を見に行ってみようかな、と思った次第です。

◇◇

 出店の手続きを終えた僕は、スアの転移ドアをくぐって本店に戻りました。
 そして別の転移ドアの一つを開けていきます。
 その先がテトテ集落につながっています。
 そのドアをくぐると、
「あぁ、店長さん、ご苦労様ですめぇ」
 ちょうどドアの近くにいたリンボアさんが笑顔で出迎えてくれました。
 よく見ると、そのすぐ横には豹人の冒険者ミミィもいました。
「店長さん、お久しぶり」
 ミミィは、そう言うとニカっと笑いました。

 僕は、早速2人にコンビニおもてなし出張所の件を切り出しました。
 2人とも、調査に来たブリリアンからこの話を聞いていたらしく、
「長のネンドロさんにもお話をしてみましためぇ、出張所でもいいので是非お願いしたいとのことでしためぇ」
 と、すでに長のネンドロさんからの了承も取り付けてくれていた次第です。

「ブリリアンから聞いたんだけど、ミミィは今、リンボアさんと一緒に暮らしているんだって?」
「えぇ、おもてなし商会の仕事をお手伝いさせてもらってる間に色々よくしていただいたもんですから、そのお礼をこめてといいますか……」
 ミミィは、そういうと少し照れくさそうに頭をかきました。
 そんなミミィの横に、リンボアさんが笑顔で寄り添われました。
「なんかねぇ、ミミィちゃんってばすごく良い子でねぇ……もう、このまま娘になってほしいくらいめぇ」
 リンボアさんは笑顔でそう言われました。

「では、ここにコンビニおもてなし出張所を設置させてもらって、その上でその営業をお2人にお任せしてもよろしいですか?」
 僕の言葉に、リンボアさんとミミィは
「ミミィちゃん、いいめぇ?」
「えぇ、全然大丈夫ですよ」
 2人でそんな言葉を交わした後、僕に向かって大きく頷いてくれました。

 そんなわけで、早速おもてなし出張所の建設を開始させてもらうことにいたしました。
 出張所ですのでそんなに大規模な物にしません。
 おもてなし商会のスペースとして使用させてもらっている、リンボアさんの家に併設されている倉庫の角地に、僕の世界で言うところの駅の売店みたいなコーナーを作る予定にしています。

 僕の連絡を受けたルアが、ヤルメキスの旦那さんのパラランサくんと一緒に転移ドアをくぐってやってきました。
 そのお弟子さん達がその後に続いて資材や道具をどんどん運び込んできます。
 角の壁の一部を一度撤去して、そこに出張所のスペースを設置していくのですが、ルアとパラランサくんはすごい勢いで作業を進めています。
 お弟子さん達もそれなりに手は早いのですが、ルアとパラランサくんがすごすぎて……なんかもう、比べるのが申し訳ないほどだった次第です。

 そんなわけで、作業はわずか2時間ほどで完了してしまいました。
 僕的にはすごいと思っていたのですが、
「思ったよりちょっと手こずったね」
「そうですね師匠」
 ルアとパラランサくんは、お互いに渋い顔でそんな話をしていたんですよね……

 その後、ルアは、
「リンボアさん、自宅で気になるところがあったらついでに直してあげますよ。サービスですから遠慮無く言ってくださいな」
 笑顔でそう言いました。
 最初は
「そ、そんな申し訳ないめぇ」
 と恐縮しきりだったリンボアさんだったのですが、ルアに押し切られる形で台所の水回りや、お風呂を修理してもらっていました。
 特にお風呂に関しては、
「ミミィちゃんに、綺麗なお風呂に入ってほしいめぇ」
 とのことだったんですよね。

 そんなわけで、おもてなし商会の一角にコンビニおもてなしテトテ集落出張所が無事完成いたしました。
 早速僕は、リンボアさんとミミィさんに簡単な接客の注意点と魔法レジの使い方、商品の発注の仕方などを説明していきました。

 ここには今後、各支店に商品を配送してくれているハニワ馬のヴィヴィランテスにお願いして、定期的に毎朝商品を届けてもらう予定にしています。

「……と、いうわけで、ここに品物が届きますから……」
 僕が説明をしていると……気のせいか出張所の方から声が聞こえてきたような……
 そちらへ視線を向けると……そこにはテトテ集落のお年寄りの皆さんが殺到なさっていたのです。
 皆さんは、僕と目が合うと
「て、店長さん、ひとつ大事なことを確認しておきたいのじゃが……」
「はい、なんですか?」
「ここにコンビニおもてなし出張所が出来てしもうたら……もう、おもてなし1号にのってご家族みんなで遊びに来てはもらえんのかの?」
 1人の方がそう言われると、皆さん一斉に寂しそうな表情を浮かべられました。
 そんな皆さんを見回した僕は、
「いえいえ、それは別枠としてこさせていただきますので、これからもよろしくお願いいたします」
 そう言いました。
 すると、僕の言葉を聞いた皆さんは、
「うおおおおお! さすが店長さんじゃあああああ」
「これでまたパラナミオちゃんに会えるううううう」
「リョータくんも可愛いのよねぇ」
「アルトちゃんが天使なんじゃあ」
「ムツキちゃんも天使じゃあ」
 口々に歓声をあげられました。
 そんな皆さんを、僕は笑顔で見つめていました。

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