第9話 魔王と勇者見習い(19)
一樹は自身へと萎縮し、怯えたじろぎ後退を始めながら説明をする魔王さまの言葉を聞く耳持たずの様子……。
いや、状態で。麗しい魔王さまへと迫りくるのだ。
彼女を己の手に掛けようと試みながらだよ。
それでも魔王さまは、自身の頭を振り、涙しながら。
「しらぬ、しらぬ、本当に知らないの、わらわ。勇者が探している少女のことなど知らないし。この城には、勇者が探しているような少女などいない……」と説明。
……だけではなくて?
「本当にいないと言ったら。いないの~。勇者が探している少女など~。本当に、本当だから~。わらわを信じてお願いだから勇者~。それと~。わらわに酷い事をしないで~。お願いだから~」
魔王さまは、絶叫を交えた声色で、一樹へと嘆願──。許し、命乞いをするのだよ。
そう、魔王さま自身にはもう、先程までの威厳と魔王らしい凛とした様子は、このようにない状態ないのだ。
だっていくら己の魔力を最大値まであげて、勇者見習いの一樹に反抗を試みて、全く敵わぬと悟ったので。もう普通の女性へと戻り、女を武器……。
そう、彼女は涙を流し震え怯えながら、一樹へと命乞いを続けるのだが。
それでも? 探し者が見当たらない一樹は修羅……。
そう、修羅の如く、恐ろしい形相で、自身の魔力を最大値まであげ放出──。
魔王さまへと威圧をかけながら迫りくる。
……だけではない。
「魔王、俺に言わぬのならば、こうしてやる……」と。
一樹は魔王さまに言葉を吐くと──。自身の利き腕の掌に魔力を展開──。
すると一樹の利き腕の掌が青く『ボゥ』と輝き始める。
そう、まるで、鬼火でも湧かすかのようにね。
その様子を見て魔王さまは、顔色を変え──。「ヒッ!」と言葉。驚嘆を吐く。