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 第1話  【村の井戸に住むもの 其の1】

 せかへい 外伝13


 著者:pirafu doria
 作画:pirafu doria


 第1話
 【村の井戸に住むもの 其の1】




 サージュ村にある井戸。今は丘の上にある井戸が使われているが、その前は村の中心にある井戸が使われていた。



 しかし、ある時からその井戸は使われなくなった。



 それは単純で水が出なくなったというものである。しかし、水が出なくなった理由がわからない。



 今まで水が出なくなるということはなかったし、そのようになる状況でもなかった。
 雨も定期的に降っていたし、何か変化があったわけではない。それなのに水が出なくなったのだ。



 ……いや、何もおかしなことがなかったわけではない。そういえば、一つだけ不思議なことがあった。



 それは井戸の中から不思議な声が聞こえて来るというもの。



 その声は「…………黒…………黒」と井戸のそこから聞こえてくるという。一時期はそれで怪談話が作られるレベルである。



 その声を聞いたというものは、村人の中に結構いる。



 それは空気の音じゃないかという結果になったが、その正体はわからないままだ。



 謎の事件となった。



 ある時、一人の村人が井戸の底を調査すると言って、下に降りたことがある。



 その村人が底にたどり着くと、水は無くなっていた。
 濡れた地面と暗い空間。



 しかし、その村人は何もに見られている気配を感じたと言った。だが、辺りを見渡してもそこには誰もいなかった。



 今では村の井戸は移動されて、別のところにある井戸が使われている。今まで使われていた井戸は残っているが、使われていない。



 形としては残っており、井戸の穴も空いた状態である。しかし、うっかり誰かが落ちたりすることがないように、井戸には蓋をしており、危険なので近づかないように柵も作ってある。



 今でもこの井戸を復旧できないかと、村長や村の住民は様々な手段で井戸の復旧を行なったがどれもうまくいかなかった。



 まるでこの井戸が呪われているかのように、この井戸を使わせないと何かの力が働いているように、この井戸は人を拒んだ。



 しばらく時間が経ち、いつしかこの井戸はただの村の置物のようになった。復旧の方法がないか、それを考えているため残して入るが今のところは誰も使うことはない。



 だが、不思議な井戸だ。何かが潜んでいるように気配を感じる。そしてその先はどこかにつながっているように不思議な風が吹き出している。



 この井戸には何か、変わった力があるのかもしれない。またはこの井戸には不思議な力を持った何者かが住み着いているのかもしれない。



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