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「グレイス、すまなかった」
 時々、お見舞いに来てくれてはいたが、帰る前にダージルはもう一度挨拶に来てくれた。本当なら自分がお見送りをしなければいけない立場なのに、わざわざ来ていただいてしまって。
 おまけにあの出来事がきっかけだったのだ。グレイスが罪悪感を覚えないわけがない。
「いえ、私こそ本当に失礼を……」
 俯いて言うしかない。
 実際、失礼すぎたと思う。婚約者に対する態度としてダージルの行動はおかしなものではなかったのだから。単に覚悟と認識が足りなかった自分のせい。グレイスはそう思い知ったのだ。
「いいや。まだ治らないのだろう、また今度にしよう。養生しておくれ」
 こちらも「今度」ということにしてくれて、グレイスはやはり申し訳ないながらほっとしてしまった。それで、屋敷にはグレイスと使用人たちだけが残ることになった。
 勿論、その一人としてフレンも、だ。

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