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お師匠さんに認められた

「いいですか真也君。必ずここに戻ってきてください。私と、そしてあなたの友達のために」
その瞬間病室の中に光が生まれる。彼の手に握られたそのカードを中心に生まれる眩いばかりの光は二人の視界を奪った。真也は何が何だか分からなかったがその温かい気持ちに思わず涙していた。しかしそれと同時に意識を失ったのだった。彼が次に目が覚めると見覚えのある真っ白な天井が見えてきた。その事実に気付いた彼は驚きながらもゆっくりと体を起こそうとするがその途端鋭い痛みが腹部を襲い顔をしかめた。そして彼の耳に声が届く。聞き慣れたようなそうでもないような、少し高めの少年の声だった。
「あぁーっ!! 真也さんやっと起きられましたか!!」
その声に真也が反応するとそこには頭に白いリボンをつけた女の子がいた。真也がぼんやりとその少女を見ながら「美咲……さん」と言うと。
「真也さん! まだ動かないでくださいまし! 真也さんの体は大変なことになっているんですよ!? お兄様が大慌てで医者を呼びに行って、今は検査中ですわ」
そう言うと彼女は慌てて真也を再びベッドに寝かせた。そして安心したように息をつく。真也はそれを聞き申し訳ないなと思いつつも先ほどまでのことを振り返っていた。
(そっか、俺また死にかけたのか……)
(今回はかなり危なかったですね。もうすぐお目覚めになるだろうとのことでしたが。間に合って良かったです)
突然真横から聞こえる女性らしき声で真也は驚いた。
彼は声が聞こえた方向を向いたつもりだったのだがその先に見えたものは真也の横腹でその様子から自分がどうやら半身を横にして座っている状態らしいことが察せられた。そのことを確認しながら視線を上げるとそこには見覚えのある人物が立っていた。
「ソフィア……さん?」
彼女の名前を呼んでみると彼女はその美しいかんばせに笑顔を浮かべて「はい」と一言だけ返事をした。
(この方が……?)
(はい、僕のお師匠様なんだ)
それを聞くと同時に彼女はこちらに向かって歩き始め、そして真也の枕元に立った。
「真也君。君は私の自慢の弟子ですよ。私の最後の教えをここまで守ってくれるとは思いませんでした。
本当によく頑張りましたね」
その言葉を聞いた真也は目尻に水を感じたが。ぐっと堪える。泣くわけにはいかないと彼は思ったからだ。
その様子を見ながら彼女も思うところがあったのか真也が口を開くよりも前に言葉を発した。
「君は今の状況が分かっていますね? あの世界での君の体験について、君自身のことを含めて話しなさい」
彼女に言われた通りに彼はあの不思議な空間での出来事を話した。女からもらったカードによって自分がこの世界に戻ってきた事、そして自分の体に異常があったことを。彼は話すたびに体の奥がずきりと痛む感覚があったが。全て話し終えるまで我慢し続けた。
それを一通り聞くとソフィアは真也の顔を見ながら真剣な表情で問うた。
「では君が感じていた苦痛の正体についてはわかりますね?」
彼は黙り込んだ。それは、彼にとって一番聞かれたくなかったことだからだ。彼は俯きつつ小さく、しかし確かに首を振ると言った。
「分からない……。僕はあの時ただ……」
その言葉を聞くと彼はため息混じりに真也へ語りかける。それは呆れというよりは諭すようなものだったが。その顔を見た真也の肩がびくりと震えた。
彼は今まで一度も聞いたことのない声色で喋った。
「君が今までずっと目を逸してきたことを、私が話さなくてはならないとは……まあこれも因果応報という事ですが。

 
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