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ドローイング・ウィザードに抜擢された

この世界に転生したときのことを思い出してみると不思議だと思うことがたくさんあると思うんだよね。
なんというかさー、俺はこの世界では本当の意味での孤児じゃ無いし、俺の本当の両親だってこの世界のどこかにいる。

それに俺には姉貴もいたはずだよ。なのにさあ、なぜか懐かしく感じるんだ。
なぜなのか考えた時に気づいたことがあった。
それは、みんな自分の意思で生きてなかったことだ。
まあさ、それが当然なんだよ。

普通に生きていたら当たり前のように生活できるはずのものが突然なくなることもあるし、急に現れていつの間にか消えるものなんだ。

そういう人生の中で必死になって生きることで自分が自分になるのがドローイング・ウィザード冥利ってもんだ。
俺たちは人様の世界線がもっとも輝くようにデザインしアドバイスする仕事だ。
俺の親父には『俺みたいなお節介を焼いてるやつはなあ、自分の子供が生まれたときにゃ親よりも幸せにしちゃいけないって決めてんだい』なんて言ってたが俺みたいなガキはそんな難しいことはわからないけどよ。俺はあいつらを絶対に助けてやりたかっただけだ。たとえそのために俺自身の命が無くなってしまおうともな。
だからあいつらには俺の命を持って償うことにしたぜ。もちろんただ死ぬんじゃねえぞ。必ず生き延びろ。これは絶対だ。俺は約束した。俺が死んだ後も、図工王国にドローイング・ウィザードとして残ると。それならいつかお前らを助けることが出来るだろうと思ってた。
だけどよ……こんなことになるとは思ってなかった。こんなはずじゃなかった。こんなことをさせたかったわけじゃなかったんだ! ああ神様……もしも俺がまだいるなら聞いてください。どうかあいつらのこれからの人生にも幸あれ。
もし俺の最後の願いを聞けるというならばどうか、あの二人の幸せな人生を……願わくば…… いや……やっぱりいいです……。あの二人が不幸になるようなことがあるんならきっと俺は……また現れちまいますから……だからお願いしますよ?
「頼む……」

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