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 ただ、こういうことなのだ。主にダージルとロンが話をし、グレイスとマリーが控えめに参加することになる。
 グレイスはそれに少々の息苦しさを感じてしまう。ダージルが相手なのだから当たり前とはいえ、楽しいかと言われたら、そんなことはまったくなかったのだ。
 おしゃべりで奔放なのが本質なのだから、自由におしゃべりができるのならばそちらのほうが楽しいに決まっている。
 そう、例えばフレンと話をするときのような。なにもはばかることなく話せたら。
 思って、途中でグレイスは部屋のはしをちらっと見てしまった。
 フレンはそこに控えてくれている。なにか用があればすぐ対応できるように。
 グレイスが視線をやったことで視線が合う。それを見てフレンはどう思ったのか、笑みを浮かべた。グレイスが『なにか用事で呼びたい』と思ったのではないと気付いてくれたのだろう。
 そしてもっと言うならば、この状況に多少なり不安を覚えているから。フレンのほうを見てしまったのだと。それもわかってしまわれたはずだ。
 だから安堵させるように笑みを浮かべてくれた。
 グレイスは単純にも、それにほっとしてしまう。
 大丈夫、やるべきことをやれるわ。
 思って、フレンに微笑を返しておいて、数秒だけ向けていた視線を部屋の中心に戻した。
 そこではこの小旅行でなにをするかという話題になっている。
 くつろぐのが目的なので、ゆったりと時間を過ごすつもりであったが、森の中の散策や、湖の周りの散歩、天気が良ければボートに乗ったりもできる。できることなどいくつもあった。
 どの日にこれをしよう、などの楽しい計画。
 グレイスもそれに混ざり、控えめではあったものの、提案や同意をして、お茶の時間はゆったりと過ぎていった。

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