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出店の期間のあれやこれや

 週末をもちまして、コンビニおもてなしティーケー海岸出店の担当をクローコさんが店長を務めていますコンビニおもてなし4号店チームにバトンタッチしました。
「いや~! 青い空! 白い雲! そしてナイスバディなクローコちゃん! これでお客さんが殺到しなかったら嘘だし!」
 クローコさんは気合い満々な様子でそう言いながら、いつもの舌出し横ピースをしていました。
 コンビニおもてなしカラーのビキニを着込んでもいます。
 ちなみに、4号店はクマンコさんが常勤しまして、その子供達がお手伝いにやってくれることになっているそうです。子だくさんのクマンコさんですからね、非常に心強い助っ人です、はい。
 とりあえず僕は簡単な引き継ぎをクローコさんと行ってから転移ドアでガタコンベにある巨木の家へと戻っていきました。

 ちなみにですが、この1週間の間にいくつかの出来事がありました。
 
 まず、アルリズドグ商会のアルリズドグさんから相談されたのですが
「なぁ、タクラ店長……あのカキゴオリキってやつか? あの機械を売ってもらうわけにはいかねぇかな?」
 とのことでした。
 なんでも、リョータとアルトがやっていたかき氷を見て、アルリズドグさんが会長を務めている商店街組合に加盟している商店の皆さんが
「アルリズドグさん、あの機械なんとか手にはいらないかな?」
「ウチの店でもあのカキゴオリっての、やりたいんだけど……」
 と、いった相談をアルリズドグさんに持ちかけまくっているそうなんです。
 ただ、この機械は全部で10台しかありません。
 コンビニおもてなしとしましては、夏のたびにこれを使ってかき氷を販売したいと思っていますので、この機械をそのままお売りするのはちょっとためらわれました。それに、かき氷機を希望なさっているのは10では足りない数のお店の方々ですしね……
 そんなわけで、僕はかき氷機をルア工房に持ち込みまして、
「ルア、この機械を増産出来ないかな?」
 と、相談してみ……ようとして……思わず目が点になりました。

 なんとですね……ルア工房の奥に、このかき氷機そっくりな機械が鎮座しているんです。
 しかもですね、その近くに魔石冷凍庫が置かれていまして、職人さん達が時折その中から氷を取り出して自分でかき氷を作っては、シロップをかけて食べているではありませんか。
 ルアによりますと
「あのすっごい暑かった時期にさ、ウチの職人達もコンビニおもてなしさんのかき氷にはまっちまってさ。仕事中に何度も抜けて買いにいきやがるもんだから一台作って置いてるんだ。ごめんな、勝手に真似しちゃって」
 と、まぁ、そんな事を言いながら僕に向かって頭を下げまして……
 確かにかき氷機は仕組みは簡単だとは思いますけど、それをちょっと見ただけで作れてしまうなんて、さすがはルアです、はい。

 で、まぁ、ルアがかき氷機を作れることがわかりましたので、僕は事情を説明して機械の増産をお願いしました。
 ルアも
「あぁ、そういうことなら任せてくれ!……で、さぁ……ついでにひとつお願いがあるんだ?」
「なんだい、お願いって?」
「いや、ほら……コンビニおもてなしさんのかき氷で使ってた白いシロップ? あれをさ、販売してくれないかなと思ってさ」
「白い?……あぁ、練乳か!」
「そうそう、あの白くて甘いやつ? あれがさ、ビニーも大好きでさぁ、なんとか頼むよ」
「うん、そういうことならまかせてよ」
 そんなわけで、かき氷機の販売にあわせて、ルアご希望の練乳も含めたかき氷用のシロップも販売することにしました。
 イルチーゴなんかはテトテ集落で大規模栽培が始まっていましてそれをコンビニおもてなしで販売していますので、コンビニおもてなしがある地域では一般的な果物になっていますけど、他の地域では入手するのが困難な果物ですからね。
 そんな果物を使ったシロップは、ティーケー海岸では再現が難しいと思ったわけです。

 ついでに、家庭用の小型化したかき氷機も作成してもらうことにしまして、一般向けの販売も行う計画を立てました。
 準備が出来たら、業務用のかき氷機はアルリズドグさんに直接販売し、家庭用の小型のかき氷機とシロップはとりあえず出店で販売してみることにしようと思っています。
 ルアの準備に2日ほどかかるとのことでしたので、それに合わせてシロップの販売も出来るように準備を整えておこうと思っています。

◇◇

 かき氷と同じくらい人気商品となっていたアイスクリームなのですが、これを作成してくれていたヤルメキスとケロリンが、新しい味のアイスクリームを開発してくれました。
 
 イルチーゴ味
 レーモン味
 パラナミオソーダ味
 
 以上の3種類です。
「と、と、と、とりあえずこの3種類がうまい具合に味が調ったでごじゃりまする」
 ヤルメキスがそう言いながら僕に試食を差し出してくれたのですが……
「……うん、どれも美味しいね。これならすぐに販売出来るよ!」
 僕がそう言うとヤルメキスは嬉しそうに笑いながら
「あ、あ、あ、ありがとうごじゃりまする、本当にありがとうごじゃりまする」
 と、土下座し始めました……だ、だからヤルメキス、こういう時は土下座はしなくていいから……
 僕が慌てながらヤルメキスを抱き起こしていると、
「あ、あ、あ、あのぉ、店長さん、こんなのも作ってみたんですけどぉ……」
 ケロリンがそう言いながら試食の乗った皿を差し出してきました。
 そこには、大福が1つのっかっています。
 で、それを手にしてみると……とても冷たいです。
 それを口に入れますと、中にバニラアイスが入っています。
 バニラアイスを大福の皮で包んであるわけですね……って、これ……僕が元いた世界でいうところの雪見だい●くにそっくりです、はい。
 ……ケロリンは、自分の創意工夫でこれにたどりついたのか……
 僕はそのことに少し感動を覚えていました。
「うん、これもいけるよ! 新しい味のアイスと一緒に販売しよう!」
 僕が笑顔でそう言うとケロリンは嬉しそうに笑いながら
「あ、あ、あ、ありがとうございますぅ、本当にありがとうございますぅ」
 と、土下座し始めました……だ、だからケロリンも、こういう時は土下座はしなくていいから……

 とまぁ、そんなわけで、氷菓関連で新商品がいくつか出来上がった次第です、はい。

◇◇

 次に、辺境駐屯地のゴルアが僕を訪ねて来たんだけど、
「何でもですね……あのポルテントチーネが王都の牢獄を脱獄したとかで全国土指名手配が回ってきているのですが、何か噂をお聞きになられたりしていませんか?」
 と、まぁ、乾いた笑いしか出てこないようなことを言われたわけです、はい。
 さしあたって、コンビニおもてなしの各店に連絡網を回して見たんだけど、どの支店にもそれっぽい噂は入っていませんでした。
 とりあえずゴルアからあずかった指名手配書をコピーしてコンビニおもてなし各店舗と、各都市の商店街組合などに配布しておきました。
 あのポルテントチーネのことですから、何かを買い占めたりして悪事を働いている気がしないでもないんですけど……とにもかくにも、一刻も早く再逮捕されることを願うばかりです、はい。

◇◇

 そんなこんながありまして、今日から僕はコンビニおもてなし5号店で通常業務に戻っているのですが、ガタコンベの商店街組合のアレアから回覧板を受け取っています。
 そこには

『ブラコンベ辺境都市連合 夏の夏祭りの開催について』

 と書かれていました。
 その中には、今回はガタコンベが主催と書かれています。
 春の花祭りがついこの間終わったような気がしていたのですが、もうそんな時期なんだなぁ、と、僕はその回覧板を見つめながら思っていました。
 さしあたって、今回の出店でやっているかき氷の実演販売なんかをやると評判になるだろうな、と思いつつ、またパラナミオ達にも手伝ってもらおうと思っている僕でした。

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