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「やめ……」
 それでもなんとか言ったのだが。今度はシャツのあわせに手がかけられた。
 まさか。グレイスの心臓がひゅっと冷えたと同時。
 今度はボタンが飛ぶどころではない。ビリィッと布が勢いよく避ける音が耳を刺した。
 グレイスは呆然とするしかなかった。もう、ショックやら嫌悪感やらを通り越してしまって、頭が思考を拒んでいるようだったのだ。
「こりゃいい」
 グレイスの胸元を開き、繊細なレースに飾られた下着を晒しておいて、男はぺろりとくちびるを舐める。舌なめずり、という様子がぴったりだった。
 グレイスはそれを見ても、もうなにも頭に浮かばなかった。ただ、舐め回すような視線に晒されているしかない。
「おい、お前ばっか楽しもうとすんなよ」
「そうだそうだ」
 うしろからも声が聞こえてきて、じりじりとほかの男たちも迫ってくる。
 もうわかっていた。この男たちは、なにかいやらしいことをするつもりなのだ。
 それがなんなのか、グレイスに具体的にはわかっていなかったのだが、なにか、とても良くないことで、傷つけられるようなことなのはわかる。
 ヒッ、と息が詰まった。恐ろしさという感情が戻ってきて、グレイスの体を凍り付かせた。

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