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「かしこまりました。メニューはこちらです。セットメニューがお得になっております」
 示されたのは、カウンターに貼ってある紙。ハンバーガー、チーズバーガー、フィッシュバーガー……など色々あるようだ。そしてそこに飲み物とサラダなどがつけられると書いてある。
 本当はじっくり見たかったのだけど、どうもそういうわけにはいかない雰囲気。なにしろここはスピード重視の店のようだから。
 グレイスはとりあえず無難なものにしておこうと、「では、このチーズのものを」と指差した。
「かしこまりました! サイドメニューはサラダとポテト、どちらにいたしますか?」
 ポテト……茹でたじゃがいもだろうか。
 グレイスはそう予想して、「では、そのポテトを」と答える。そのあともうひとつ、「お飲み物は」という質問が来たので「アイスティーで」と言っておく。それでやっと注文が済んだ。
 慣れない財布を取り出し、慎重に硬貨を数えて、求められただけの金額を出す。お店の女性はそれを受け取って数えて、間違いはなかったようで「ではそちらでお待ちください」と別のカウンターを指差してくれた。
 良かった、上手くいったようだ。グレイスはほっとしてそちらへ向かい、やがて出来上がったハンバーガーのセットとやらを受け取った。
 テーブルへ運んで、椅子につく。これも当たり前だが屋敷や普段行く店とは比べ物にならないほど簡素だった。木がむき出しで、お尻がちょっと痛い。今はドレスやワンピースに仕込んでいるパニエなどもないことも手伝って。でもこれも楽しいもの。非日常なのだから。
 よって気にしないことにして、目の前の食べ物を改めて見た。
 作り立てのハンバーガーはまだ湯気をあげていた。肉とチーズの良い香りが食欲をそそる。
 添えられていたのはじゃがいもだったけれど、茹でたものではなく、細く切って揚げてあるもののようだ。紙の包みに入っていたそれは初めて見るもので、グレイスはしげしげと見てしまった。
 アイスティーはまぁ、屋敷のものとほぼ変わらない。グラスに入ってストローがさしてある。
 さて、いただきましょう。

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