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 外出。買い物。
 その夜、グレイスは頭の中にそればかり描いてしまっていた。
 いや、昼にフレンと話したようなほのぼのした内容ではない。もう少し良くない……フレンに言わせれば『お転婆』なことである。
 クローゼットの中にこっそりしまってあるもののことを思い出す。しばらく使っていなかったけれど、サイズなどに問題はないだろう。つまり、準備としてはそう多くは要らないはず。
 そろそろおやすみなさいませとされて、ベッドに入っても色々考えてしまって。しばらくは考え事をしていたけれど、そのうちいてもたってもいられなくなって、がばっと起き上がった。さっき考えていたクローゼットを開ける。
 クローゼットの奥の奥。すぐに出せない場所に入れたうえに、厳重に箱に入れて保管してあるもの。久しぶりに取り出すことになった。
 箱ごと取り出して、ソファへ持っていって、そこで蓋を開けた。
 中に入っていたのはベージュのシャツと焦げ茶の上着。そして黒のズボン。それと、大きめのキャスケット。こんな場所にはまったくそぐわない服たち。
 これは、グレイスの秘密の服。そう、『お転婆』をするときの装備品なのだ。
 中身を確かめる。最後に着たのはもう数ヵ月前だったけれど、そこから体型はあまり変わっていないので大丈夫そうだ。元々、少し大きめの作りなのだし。
 久しぶりにこれを使うことを考えて、グレイスはどきどきしてきた。
 こんなこと、良くないことだ。そんなことわかりきっている。
 けれど、使いたくなってしまった。ここのところ、息が詰まることばかりであったから。
 来週は外出許可が出ていて、フレンとお出掛けができる。それも楽しみだったけれど、待ちきれなくなってしまったのだ。
 中身を元通り箱に戻して、クローゼットの元の場所に入れて、グレイスは改めてベッドに潜り込んだ。
 『それ』をいつにしようかと考える。ひとの目につかない日や時間がいいに決まっている。
 そう、父が外出中とか……仕事が忙しくてこもっているとか……。
 プラスして、フレンにも用事がある日でなければいけない。頭の中に自分の予定を思い描いて、今度フレンの用事もこっそり情報取得しなければ、と思う。
 グレイスはなんだかわくわくしてきてしまった。良くないことを企んでいるというのに。元々、自分には合っていなかったのだ、と思う。どうにもならないことをうじうじ思い悩んでしまうなんて。
 だから、これはグレイスが自分らしく羽を伸ばせるためのこと。
 計画を立てているだけで、ちょっとの罪悪感はあれど、久しぶりに胸躍るようなことだった。

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